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「愛乃千歳、セイカ様、朋? ホントに?」
名詞と感嘆詞だけのタイトル。週末の昨晩に作られたものが、今週の一位となっていました。
私の名前が付いたスレッドは多数ありましたが、このスレッドは他とはまるで違う角度の話題が中心でした。
「朋が吹部辞めたのって、まさか、これが原因なの?」
「さすがに、それは無いでしょ。無敵艦隊に飽きたんじゃないのかな」
「今頃飽きるなら、もうずっと前に辞めてるでしょ」
「セイカ様も一緒とか、ヤバすぎない?」
「いやいや、まだ確定してないでしょ。セイカ様と愛乃って奴が一緒にステージに立った。現状それだけだよ。てゆーか、あのボーカルのレベルじゃ、三津谷さんの相手は無理。レベル低すぎ」
「あれでレベル低いとか、さすがは世界の吹部様です」
「吹部部員確定(笑)」
焦点は「三津谷 朋(みつや とも)」という生徒でした。
この名前、私はどこかで聞いた事があるように思えます。いつ、どこだったのか? 只、どうしようもなく、憤った場所で聞いた気がするのです。
鼓動が早くなり、私は直ぐに検索エンジンで調べました。彼女の名前を検索した途端、驚愕の記事を目にしたのです。
ウィキペディアが、一番上に検索されました。
先ほどBIG3の記事を検索していた時、彼女等のウィキペディアが出てきたのは数ページも進んだところで、記事自体も長いものではありませんでした。
当然です。歴史上の偉人とは違い、彼女達はまだ十数年しか生きていない子供なのです。いくら人気のアーティストとはいえ、枚挙に限りがあるのです。
しかし、彼女の記事を開いた途端、異世界に飛ばされたようでした。私とて、ウィキペディアの一つ二つは見た事があります。有名な音楽家、ショパンやモーツァルトなどは隅々まで読みました。
それと寸分違わない分量であり、全て、偉人伝だったのです。
例えば「経歴」の一番上。
「物心をつくより前に、ピアノをマスターする」何歳かも書かれていないのに、既にマスターしている。
「バークリード女学院幼稚舎の入園式で、母親の結った髪の結び目が気に入らなかった為、入場の伴奏曲を『アイネ・クライネ・ナハトムジーク第2楽章』から『ショパン エチュードOp10-4』へ変更して演奏」
これには思わず、
「嘘だ!」
と叫んでしまいました。
『アイネ・クライネ・ナハトムジーク第2楽章』のピアノ独奏ならば話は分かります。定番ですし、普通より少し上くらいの才能がある人ならば三歳頃には弾けるでしょう。私もその頃には弾けていたはずです。
ただ、「ショパン エチュード」はありえません。
しかも「op10-4」。大の大人が裸足で逃げ出す超絶技巧で、私ですら最近弾けるようになったばかりなのです。3歳児では、まず握力が絶対に持続しないのです。
その後の逸話も、度し難いものばかりです。
「天皇陛下の桜を見る会での御前演奏」「ウィーンフィルでの客演にて、目隠し演奏」「英国王室御前演奏の後、英国王子からの求婚」などなど、モーツァルトの様な逸話が「幼稚舎期」というカテゴリーの中でも十を超えている。
続く「小等部低学年期」「小等部高学年期」「中等部期」では、「世界一」という言葉が何度も登場します。
トドメとばかりに最後の一節は「十五歳以下で最もギネス記録を持つギネス記録を更新中」とのことです。
因みに、十八歳以下だと記録は二位になるそうで、一位は既に「歴史の教科書に載る事が確定した」と言われている「馬東クリス」さんです。
馬東クリスさんの名は私も昔から聞いていて、私達の世代の女子が海外へ行くと「貴女は馬東クリスなの?」と聞かれる事が多々あります。帰国子女あるあるの定番です。先生も彼女の事は度々口に出していて……。
そうです。
私は、思い出しました。
三津谷朋という名は、先生から聞いたのです。
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