世界創造
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私がバークリード女学院を選んだ理由は、一つだけだった。
もっと勉強がしたかった。
今年の数学オリンピック代表選考合宿で、私は負けた。数学オリンピックの選考基準は高校生以下、中学生でも参加ができるし、代表の五人には過去何度も中学生で選ばれている。とはいえ、基本的には高校生が主体であり、中学生で代表選考合宿に残った中学生は八人だった。中学女子では三人。私と、あの二人。
愛知の天才コンビ「佐藤ちろる」「鈴木もなみ」。
どちらもIQ180以上という化物で、テレビなどでも取材されている。
佐藤の方は言語学を、鈴木の方はコンピューター系の情報処理学を専攻していたはずだが、その片手間でこれにも参加してきた。
こういうのは、本当に勘弁して欲しい。
私の大好きな数学を、荒らさないで欲しかった。
結果だけ言えば二人は代表に選ばれ、本選でも優勝。上位入賞者がもらう金メダルではない。優勝。
二人の成績は、同率で世界一位。つまりは満点。日本としては初の団体得点での世界一位に大きく貢献した。
テレビ、マスコミでもこれらは大きく取材された。
そしていつも通り彼女達は取材にそっけなく対応した。
鈴木「満点のあるテストで満点を取っても、威張れるものじゃない」
ちろる「数学は、良い頭の体操」
彼女達が天才である事なんか、私にはどうだって良い。
ただ、私の愛する数学を、自分達のバッヂの一つにする為だけに参加し、勝った事を誇りもせずに、負けた者を蔑む発言に、私は心底腹が立った。
でも、それは言える立場ではない。
私には、もっと研鑽が必要だった。
私が、馬鹿だからいけないのだ。
そう思い、と言ってしまえば、取って付けたような言い訳のように聞こえるが、私が厚木という片田舎から都内の有名進学校に行った理由の一つが、これと言える。
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