【R15】言葉の力【なずみのホラー便 第61弾】

なずみ智子

言葉の力

 ベッドの中にいるコウの頭を、ママが優しく撫でる。

「ママ……ぼく、おゆうぎかいでしっぱいしちゃわないかな?」

「大丈夫よ。あのね、コウくん……言葉には力があるのよ。失敗しちゃうかもって言い続けていたら、本当にその通りになるかもしれないわ。だからね、言葉には気を付けないと」

「うん、わかったよ、ママ。なんだか……こんやのママはすごくきれいだね」

「まあ、コウくんたら。おやすみ」


 数刻後。

 コウは、ママとパパの寝室から響いてきた獣の雄叫びのごとき断末魔と、ジリリリリリリという火災報知器の音で目を覚ますことになった。

 泣きながらママたちの元へと駆けつけたコウの幼気な瞳に映ったのは、ダブルベッドの上で炎と煙に包まれ、のたうち回っているママとパパであった。

 さらに、コウにはまだ意味が分からなかったであろうが、ベッドの近くには性急に脱ぎ捨てられたママたちのパジャマと下着、そしてコンドームの空き袋も転がっていた。


 言葉には力が宿る。

 おそらく久々となるであろう夫婦の夜の営みにおいて、ママだけでなくパパにも火が付いてしまい、互いに熱く燃え上がってしまったのだ。



――fin――

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【R15】言葉の力【なずみのホラー便 第61弾】 なずみ智子 @nazumi_tomoko

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