星の都の入り口

@yugamori

わざわざ都会の星経由でふっ飛ばしてきた。

ずいぶんとつかれた。星と星の感覚が広すぎる。都会の空は星の数が少なすぎる。地上から星を渡って来るにはあまりにもキツイ。同じ都だっていうのに、こんなにも都同士の距離があるっていうのもなんだか皮肉なもんだよな。田舎の方がずっと楽に来れる。田舎の空は無数に星が輝いているから。

 こっちの都の奴らにとっても、地上の都から来る人間が少ない方がかえっていいんだろうけど。そういった意味ではバランスが取れているんだろう。星の数が少なければここへ来るのは困難だ。田舎を経由してくるか、本当に気力がある人間しか地上の都からここへ来ることはできない。あの少ない星を渡ってくるなんて、はっきり言って正気の沙汰じゃない。そういう俺は、正気じゃないってことになるんだけど。

「おまえよくあの星の感覚で渡って来れるな」

 星の都の門番が、毎度のことながら呆れて言った。

「最短ルートだから必死こいて来てるだけですけどね」

「ふつうのやつじゃ最短ルートにならないがな。不可能なルートだから」

「地上の泥落としてきたいんですけど」

「ほらよ」

 門番が投げてよこした鍵を持って、門の裏に備え付けられたシャワールームへ入った。下界の都会の空気の悪さに触れたままでは、こっちじゃ泥にまみれて来るようなものだ。

「さあて……久しぶりに羽を伸ばすか」

 シャワーを浴びて着替えながら、空に広がる都を眺めた。星々が街灯になった街は、都会の明かりとはまるで違う輝きに、いつもどおり満ちていた。

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