第17話 小憎たらしいお得意様

7月から御盆商戦の幕は

上がっていた。


8月も近づきいよいよ大詰め‼

企画で夏歌も、店舗を木之本部長と

回る日々が続いた。


当然一将の太幸デパートにも立ち寄る

事になった。


まずは社長に挨拶、太幸デパート前田社長の好物の落雁と、社長の彼女の

大好きと言う栗まんじゅうを手土産に受付へ、


前田は7階の展示場におります。

すぐ別館6階の社長室に行くとの事で

秘書が参りますのでお待ち下さい。


しばらく立つていたら背の高い

お約束の、メガネをかけた

七三のショートビジネスカットの髪で

清潔そうな男性が現れた。


「第一秘書の村神です。

社長がお待ちですどうぞ‼」


2回目の、社長室に案内されながら夏歌は

「あの?もう1人の秘書の方は

たしか、茉莉奈さんって言われましたけど・・・。」


「ああ、彼女は寿退社いたしました。

私が後を継いでおります。」

(寿退社?遂に一将の子を妊娠)

変な想像をしながら村神さんの

後をついて行く。



ニッコリと笑う彼は、とても

優しそう。

こんな人の奥さんは幸せより

安心なんだろうなぁ


ちゃんと仕事して

ちゃんと家庭守って

ちゃんと愛されて・・・

こんな穏やかな人がいいなぁ


あーんな一将みたいな奴


浮気し放題

酒飲み放題

女選り取りみどり

思い出しただけでも

腹が立つ💥💢




「お連れしました。」



「どうぞ・・・」



小憎たらしい一将は相変わらず

スマートで、カッコイイ。


書類に目を通していた一将は、木之本

部長を見て、隣にいる夏歌を完無視‼


「やあ、梅園さん久しぶりですね。」


上下揃いの仕立ての良さそうな

品のいいスーツを着た一将は

切れ長の目で、一瞬パッ

夏歌を捉えたが 空気 空気

素っ気ない態度をしていた。


一将は夏歌を無視しながら木之本に

挨拶をした。


『そうきたか!』


心で呟き、夏歌も素知らぬ態度に出る。


2人は和気あいあいで話が盛り上がり

木之本部長はソファーに通されたが

夏歌は立つたままだった。

直立不動‼


木之本部長も気にしつつ

チラチラと夏歌を気にしている。


「あの〜社長、紺藤も同席いいで

しょうか!?」


「ああ、もう1人いらしたんですねー

気付きませんでしたアハハハ」


「ホォーォhohohohoho


お気遣い無く‼立つのは部活で慣れて

ますんでっ‼」


「ホウ、それは頼もしい

じゃそのままで・・・。」


夏歌は💢



「村神、アイスコーヒー

3つ頼む!

濃ゆめのやつね。


特に彼女のは、濃ゆく入れてもらって

3階のカフェに注文してね。

凄く美味い珈琲を出してくれるん

ですよ。」


「はい、直ぐお持ちします。」


あ、あのぉ・・・こ、こう・・・茶がい

「村神、珈琲ブラックな‼ 3ツ‼

1個濃ゆめな‼」


一将がニヤリと笑った。


商品の説明を部長がしてる間も一将は

夏歌を気にする事はなかった。



3階の男の店員さんが黒いエプロンに

白シャツ、蝶ネクタイで現れた。


「ブラック珈琲、アイスで、3杯ですね。」

確認するように顔を見る。


コト、コト、


コトン

これがスペシャルBLACKです。


珈琲を置くと若い店員さんはニッコリ

夏歌に微笑みながら、

「間違いございませんか?」

とイケメンな顔をみせた。


「ええっと‼

《《間違いないよ、

ありがとう。》》」


はぁぁあ夏歌はイラッ

一将はカフェの店員さんにニッコリ。



「また宜しく、お願いします。」

彼は愛想良く出て行った。


夏歌も「どーも﹏w」

愛想笑いをしながらペコり



そんな様子を見ていた一将は、



「君、紺藤さん?だっけ?

さささ君もどうぞ‼」

そう言いながらミルクを取り上げる。



一将の野郎はニコニコしながら

苦手な苦手なブラック珈琲を勧める。

それにスペシャルBLACKとか

言ってたっけ?



「あは、あ、ありがとうございます。

コノヤロウ!!

と思いながらꉂꉂ ニコニコ


アイスコーヒーのブラック大好き

なんです;( ; -᷄ ω-᷅);お、美味しそー」



「へえ、じゃご遠慮なくどーぞどーぞ

ゴクゴクどうぞ・・・ニャニャ

外は暑かったでしょう。ニヤニヤ」


飲んで見ろよ!吐き出したら

許さんからな!

一将の目がそう言っていた。


「さあ、さあ、どーぞどーぞ‼」


えっ・・・とぉ


「お気遣い無く、ハハッ」



「早く早く飲んで下さい。」

一将はニヤニヤしながら夏歌の

苦手なブラック珈琲を勧める。


三人の目が夏歌に集中している。


「どした?紺藤、嫌いなのか?」


木之本部長が、冷や汗流して

声をかける。

『飲まないと社長に失礼だぞ‼』

チラチラ見る木之本の目はそう言って

いる。


夏歌は キショオーォボエテロ


息をスーツと吸いハーっと吐き

ゴクゴクゴクゴクゴクゴク

カランカランカラン氷の音を響かせ

プハー苦い!スペシャル苦い

べろべろ、ペッペッと舌をだす。


一将はパンパンパンパン膝を叩いて

ꉂꉂあーっははは

ꉂꉂあーはははꉂꉂあははは

と、ソファーの上でゴロゴロしながら

笑いほうけた。


夏歌はニッコリ💢しながら

ほんと💢お返ししないと収まらない

くらい美味しかったですよ﹏社長

ニコニコ


「ぐおちそうさまデシタッ‼ニガ」

口の中に残る強烈な苦味

普通のブラックが飲めないのに

味なんて只苦いだけ・・・

心でオボエテロと呟いた。


💡⚡ピコーン

夏歌は、塩分補給の為

サラダにかける瓶塩を持っていた事を思い出した。

サラダに必ずかける岩塩

夏場は必需品!

熱中症対策‼


「社長、ちょっと‼」

秘書さんが呼びに来たので一将は

席を立った。


チャャャーンス到来‼

もう夏歌の目は爛々復讐する気

満々

シャ━━━━━━━━━━━アァァ

キタ━━━━━━ッ!!!


瓶塩の蓋を開けてドバドバドバドバ

アイスコーヒーにIN

小指を突き入れグウルグウル

消毒液の付いた小指は又独特の味


傍で見ていた木之本は

ギャャャャャャー(((

な、夏歌夏歌夏歌━━━━‼

ヤメ、ヤメーェロ


帰ってきた一将に木之本は何も言えず

アワアワアワアワ



一将は アッと言う木之本を見て・・・

「ん?どうかしましたか?ゴクッゴゴ

ゴ・・・オエ﹏

オェェェェェ;'.ブッ

ゴエツ、ウエツ

ギャャャャャャーカラ、カラ塩辛い‼」


立ちながら肩を揺すりꉂꉂあはは

ꉂꉂあはははꉂꉂあははは


「塩分多めにいれときましたー

熱中症対策でーす。

アハハアハハ!」

と笑う夏歌に一将は、


(▽ω▽)ギラッと目を向け た。


「夏歌お前かーー

お前がやったのかー」

近寄る一将に飛びかかり


「だぁかぁラー

そう言ってんじゃん。ゴンガン」

(´×ω×`)イタッ

頭づきの、不意打ちを食らった一将は

ボーゼン



「セーェノオー」


夏歌は自慢の石頭でもう一発

御見舞する。

ガツーンイタツ‼


続いて

木之本部長の前に置いてある

部長の分のブラックコーヒーを鷲掴み


「カフェの珈琲

お好きでしたよぉ━━━━━━ねぇ

めしあがぁーれぃ ソリャー。」

バシャャャャバシャャャ


底端に残ったちょびっとの珈琲と

ガラガラの氷を再び投げる


☆⌒いてっ


ダーツの要領で、ぶち当てた。

ꉂꉂあはははꉂꉂあははは

命中ー


プファー

アイスコーヒーを頭から掛けられ



なお、底の氷をぶち当てられ

頭づきをくらい、暫し固まる一将‼


「オイオイオイ一ィ‼ 一将?どした?

動けねーのか?」


カランカランカラン

夏歌の分の

アイスコーヒーのコップに残った

氷をガリガリゴリゴリ


ペッと手のひらに乗せてツメターイ

一将の顔に塗り塗りパタパタ


ウヒャヒャヒャヒャウヒャヒャヒャヒャホレホレホレ

クックックッ

「外も暑かったですよー

社長は冷え冷えで

ううらやましぃーつ」


バン‼ ソファーから立ち上がり

一将は、テーブルをガアアァァン蹴り

回す。


ウワァァ!!

木之本部長も立ち上がりパッと

その場を離れた。



「夏歌やってくれたな‼」

ワナワナと拳を握り

やられ放題だった一将が応戦する。



「初めにやったの一将じゃん、

スペシャルBLACK何か飲ませやがって


茉莉奈と、結婚したのかー

バカヤロー

浮気者、スケベ、エロ‼」

と一将の髪の毛を掴みグワシャグワシャ


「なんで着拒ブロックなんだ、」

一将も夏歌の脇を人差し指で

グギッ グギッ グギッかなりの

力でつつきまくる。


痛いタイターイ イターイ

このこのこのーお‼


夏歌は仕返しとばかりに

お得意の、👠靴を脱いで

スリッパ叩き、パコーンパコーン

パシーン‼


村神は!!

木之本もスゲェ!!


ハアハアハアハア言いながら掴み会う

2人を村神と木之本が引き離す!


「お、落ち着いて下さい社長‼」

回し蹴りを夏歌がブアアァァン

一将の臀にヒット

これ以上すると一将が本気出しそうで

木之本と、村神が止める。


アタフタ; アタフタ


「落ち着け夏歌、お得意様だぞ‼」

と止めにかかった、木之本の襟足を

一将がムンズと掴み

ゴン押しのけた。


「し、社長、落ち着いて下さい」

今度は村神がとめる。


木之本もすかさず夏歌を羽交い締め

にして引き離す。



「部長離して、この浮気野郎に

飛び蹴りしないと、収まらない‼

浮気ばっかりして

許せないのぉ━━━━━━💥💢💥

浮気何回したとおもうんだヨッ!!」


「なにおー、浮気は寸止めだった

ろうが・・・。」


「フンッ(*˘ ³˘)💕チュッチュ(๑ˇεˇ๑)

チュッチュ(๑^э^๑)♡ した時点で

う、わ、き、なんだよッ‼

馬鹿か‼」


木之本と村神は二人の関係をおおよそ

分かったようで、


「知らなかった。ハアハアハア

夏歌の彼氏なのか?ハアハア

そう言えば、夏歌も栗まんじゅう

好きだっけ。」


「どうりでハアハアハアハア、社長が今日は、

ウキウキして いたわけだ‼」

と呟いた。ハアハアハア


睨み合う二人を力一杯引き離し

やっとの事で落ち着いた2人は

プィッフンンッ


お互いを見ずに背中合わせに

ふんぞり返ってソファに背中合わせ

に座っていた。


ヤレヤレ

木之本と村神は呆れて2人を見守っていたが、夫婦喧嘩は犬も食わない

と言う名言を思いだした。


木之本は社長にハンカチを手渡し

村神は、社長にブラックコーヒーの

缶、夏歌には林檎ジュースの缶を、

渡した。


缶ジュースなら中身が、飛び出す範囲が決まっているからだ‼



夫婦では無いが2人は好きあって

いる事は、夫婦喧嘩以上の

親密度高めの喧嘩で村神も木之本も

良く分かっていた。


次いでに何があってこうなったかも

おおよそ理解できた。


「木之本さんお昼を食べに行

きましょう。

鰻が美味しいんです。

勿論社長の奢りですよ。」

社長にタオルとお絞りを渡し


「ね、社長。」ニッコリ

一将は


「見苦しい所を見せてしまって

申し訳ない。


店には連絡しておきます。

お昼済ませて来てください。」


「そうですか!

一太の鰻ですね、好物です。

遠慮なくご馳走になります社長。」

木之本は社長にブリやられた首を

揉み揉みしながら夏歌を見た。


夏歌はバツ悪そうな顔をして

ソッポむいた。




二人は社長室に、

立ち入り禁止 ‼会議中

の札を立てて、ヤレヤレと

疲れた顔をして出てきた。



パターンとしまったドアを確認する

と、一将と夏歌は、お互いチラ見した。


フンツ プイ

一将の、ボサボサの頭と夏歌の綺麗に結い上げていた巻き髪が、烏丸の巣の様になっていたグアジャグアジャ


しばらく沈黙が続いたが

一将が重い口を開いた。


・・・💦



「夏歌、会いたかったんだ

本当は会えると思って、

楽しみにしていた。」


「プィッ!

結婚したんじゃないの?

BLACK何かのませやがって、

信じない‼


計画妊娠にハマって‼

会いたかった?そんな事

言うのも浮気よ!彼女に悪いと

思わないの‼」


「夏歌、誤解するな!

茉莉奈は、梨花の父親、

松崎部長と結婚したんだ。」


「えっ﹏‼

梨花って、茉莉奈さんのこどもの?

松崎部長さんは父親なの?」



「そうだコツン勝手に勘違い

スンナ‼

茉莉奈は部長と結婚したんだ‼」


あひゃー

「そうだったの?」


「うん、夏歌のおかげだな‼」


「俺酒はあんまり飲まない

秘書の村神が、俺を止めて

くれる酒止め手当も出して

いるんだ。」


「そう。」


「夏歌、お前が居ないと寂しい。

酒で寂しさは埋まらない。


もう絶対浮気はしない。

他の女性と関係持たない!

約束する。」



「チッそんな約束

守れなく無い?」

夏歌の舌打ちは社長室に響く


「守れるよ。

夏歌を失うなんて金輪際

嫌だ‼

毎日毎日、夏歌の事ばかり

思っている。

信じて欲しい、やり直そう。」


「・・・デモ」


「夏歌・・・。」


一将のジョーマロー〇の

フローラルの香りに包まれると

気分が落ち着いた。


ボサボサの髪を解いて一将の

五本櫛で優しく梳いてくれる。


「美容院、いくか?」


「仕事中だし無理‼」


枯れたススキの穂のような頭を

しながら、一将の指は

夏歌の髪を優しく梳いていた。

痛く無いように優しく優しく



でもまだ引っ張られたほっぺたと

ドン付きされた、脇腹が

ジンジンする。


一将本気でホッペ引っ張ったな‼

微かなムカつきも起きて来る。


一将は携帯の動画を見ながら

器用に夏歌の髪を一生懸命結って

くれたから・・・💦がまんするか‼。


「凄い上手」


「夏歌の髪だから一本一本

愛おしいよ。」

(その愛おしい髪をさっき

烏丸の巣 状態にして

しまったよな?お前は‼)


心の声を出せない悔しさ。



「夏歌、今からマンションに帰ろ

う。」


「ムッ、だから、仕事中デッス

それにあの寝室には入りたくない!

何人も連れ込んだベッドがある‼

イヤ拒否‼」



困った顔の一将は、

「分かった。」

としか言えなかった。

あのマンションには夏歌が嫌がる

事しかない。

随分酷い事をして来た。

茉莉奈との思い出したくない

事が夏歌には詰まっている。


「そうかじゃあ仕事終われば

いいんだよな‼」


「今日終わったら電話する。

一緒にご飯食べよう。」


「分かった。」

夏歌は茉莉奈が結婚した事で

ホッとした。

ヤキモチで毎日疲れていたからだ。


フッと覗き込む彼の腕に

手を回しながらキスをする。


もう協力なライバルはいない。

美波さんも茉莉奈さんも

もう一将は本当に自分の彼氏に

なったんだと繰り返しキスをしてくる

一将に安心していた。



ドアの隙間に目が4つ

「ほらね!上手く行きましたよ‼

これからは忙しくなりますよ。」


「いやぁ二人が付き合って

いたなんて知りませんでした。

夏歌が彼女だったとワ

商売がし安くなりますワ」


「ですね。

でも夏歌さんが怒る気持ちも

何となく分かります。

彼女に対して意地悪ですよね。」


「可愛いから

ヤキモチでしょう。


私と夏歌が営業で来た時

距離置いて座ってるのに怒りが

凄かったですからね。

今になると社長が急に怒りだした

理由が良く分かりますよ。

結構独占欲強かったんですね。」



「それだけ愛してるんでしょう。」

村神と木之本部長はニマニマしながら

2人をみつめていた。


2人は気が合い

お互いの妻が身重だと言う共通点

があった。


木之本も村神も長い付き合いに

なるような予感がしていた。


袖振り合うも多少の縁

って奴だ。

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