第9話 美波との決別
俺は隣で眠る夏歌を抱きしめ久しぶりの夏歌の温もりに幸せを感じていた。
愛しい夏歌の寝顔を見つめていると
つい起こして話をしたくなる。
頭を撫でたり、頬をピッと人差し指で
押してみる。
夏歌はお疲れのご様子で💤
♡ビクともしない!
ちょっと気合入れ過ぎたかな?
可愛い
夏歌は俺の愛情に、愛情を返して
くれる、それだけで充分満たされる。
端々に見られる小さなヤキモチも
俺の心に突き刺さる。
そんな夏歌の寝顔を見ていて
美波と過ごした月日が頭を過ぎる!
あの頃の俺は美波に一目惚れ、
それから一途に知り合った10代後半
から20代後半迄美波を底無しに
愛していた。
「一将、私と付き合いたいなら
条件があるの・・・」
「条件?」
「私、一人の男じゃ我慢出来ないの
ほら、一人一人素敵じゃない
勿論一将も素敵よ。
頭良いし、イケメンだし、優しいし
でも私、ちょっと元気な人も
大人しい人も、エッチな人も
好きなの‼
だから、一将が彼氏だとしても
遊んだり、飲んだりのBFは
許して欲しいの‼
勿論一将もそう言う友達がいても
私は、許しちゃうから。ねぇダメ?」
彼女のお願いは絶対だった
そう・・・美波は俺の憧れだっし
妖艶な魅力に取り憑かれ美波の彼氏
と言う響きはずっとずっと
欲しかった。
俺は美波が気が引け無いように
美波に、負けないほど浮名を流した。
半ばやけっぱちな所もあったよ。
どんな女を抱いても満足しなかった。
やはり美波だけしか愛せ無いのか?
遊びだけの女の子と寝た次の日は
虚しさが俺を襲った。
「何やってるんだ‼」
そう、どんなに美人でも、
可愛くても美波以外の女の子と
遊んだ後は
脱力感と、惨めな気持ちがあった。
そんなまどろっこしい毎日が気づけば
5年も続いていた。
俺も親も結婚を
意識する年齢が近づいている。
しかし美波はまだ結婚は
意識していなく遊び放題。
クリスマスの日俺との、
クリスマスディナーを
すっぽかされた俺は途方に暮れ
コンビニの前にいた。
美波の父親に、美波と結婚したいなら
2年で婿養子の話を付けろ!
と言われ、美波の為に色々と
考えていた。
その時母親から好きな人がいるなら
連れて来なさい!
あっちを立てればこっちが立たず
前田家、前田家前田家、
俺にとっては生まれた時から
背負わされた、プレッシャー
前田を潰すな
前田家に相応しい跡取りになれ、
父親から言われ、そう育って来た。
前田を継ぐことは、美波と別れろ
と言う事だ。
前田家に潰されそうになって
美波を手放すのが怖かった。
俺が跡取りじゃ無かったら・・・
毎日毎日、打つ手を考えていた。
「そのうち・・・連れて行くから
まつてろって‼ん?」
「彼も忙しい・・・の‼」
少し開けた車の窓から聞こえた
か細い声に俺はピンとひらめいた。
2年の期間、代理を立てよう。
彼女も親から結婚話を迫られ
て居る様子が、彼女の態度から
見て分かった、渡りに船だった。
俺はその夜彼女を抱いた、
いつものノリのはずだった。
しかし、美波以上に満たされた。
初めての不思議な感覚だった。
気のせいだ‼俺は美波しか愛せない。
そう言い聞かせた。
美波と結婚する為あの手この手を
考えているその最中も、
美波は他の男と遊んでいた。
そんなやる気の無い美波に
俺への愛があるのか疑ってしまう。
俺はいざと言う時のキープ君?
何でも都合のいいように動く
操り人形か?
絶対NOと言わない、馬鹿な男
俺が女の子ならそう思うだろう。
俺は美波のマンションに行き
美波を待って、こんな怪しい関係の
1ヶ月の、期限を切った。
男達と遊ぶのはもうやめて
俺だけにして欲しいと頼んだ
ボーイフレンドと手を切るように
1ヶ月の猶予期間を設けた。
勿論俺も遊びはパッタリとやめた。
だから夏歌とも離れた。
しかし美波を愛してるはずなのに
夏歌の事しか考えていない自分に
気づいた。
風呂に入っても、寝ても夏歌を思っていた。夏歌に別れを告げてから
連絡をキラレて、無性に寂しさが
襲って来た。
美波への愛を確かめる為美波と
寝ても虚しいだけだった。
もう美波には愛情が微量も無い事を
体で知ってしまった。
馴染んだ身体の筈なのに何故か
嫌悪感さえ感じてしまう。
俺は我慢して美波をだいている・・・
と気づいてしまった。
もう美波と、こう言う行為は無理だ
これはもう駄目だと思った。
途中ゴメンと謝り
マンションを出た。
美波はポカーンとしていた。
こんな事は初めてだった。
ヤル気が失せた、俺の心変わりを
自分も知ってしまった。
美波も何かを感じたハズ・・・
こんな時すら夏歌を想ってしまう。
雨の日も、嵐の日も、毎日毎日
夏歌の会社前まで行き夏歌を
待った。
バス通の夏歌が、バスから
降りるのを見届けると、
俺は会社に出勤した。
そんな日々が日常になっていた。
初めて寂しいと思った早く気づけば
よかった。
会社が終わると必ず夏歌のアパート
前迄行った。
しかし尋ねる勇気が無かった。
何回も何回もチャイムを押そうと
したが出来なかった。
カツンカツン、長い階段をおりる。
そして夏歌のアパートを振り返り
足を止める。
の繰り返し・・・
自分から別れを切り出したのだ
どんな顔をすればいい。
後悔に押しつぶされそうだった。
今日も、何時もの様に
夏歌のアパートへ向かった。
金曜日の夜、夏歌の部屋には
明かりが付かない。
土曜日も日曜日も明かりは付かない!
やっと
月曜の夜には明かりがついていた。
彼氏が出来たんだな!
金曜日の夜から月曜の朝まで
男と居るんだと思うと
気が狂いそうになった。
美波には持った事の無い激しい
ジェラシー‼
俺もこんなに激しい嫉妬をするのかと
驚いてしまった。
そんなモヤモヤとした日
やっと俺は、美波に別れを告げる
決心をした。
気持ちは無かったがどう別れを
切り出せば、美波を納得させられ
るのか考える時間が欲しかった。
夏歌に想いを伝える為
本気で美波と向き合うと決心した。
あやふやなままじゃどうにもならない
夏歌に男がいるなら、取り返す。
意を決して美波のマンションへと
入って行く。
玄関には赤いパンプスと
男の靴が二足・・・
静かに寝室のドアを開けた。
そこにはアラレもない姿の
美波が二人の男に遊ばれていた。
「フッ、またか!」
その時の俺の感情がこんな三人を
見ても何も感じない事に気づいた。
焼けるような嫉妬もなく、悔しい
気持ちも湧いて来ない。
ああ、美波とは気持ちの中でも
本当に終わったと思った。
初めて美波がメス豚の様にブヒブヒ
言っているのを聞いた。
気持ち悪い。
俺は、お盛んな三人の前に行き
「美波、別れよう。
もう無理だ‼」
そう言った。
二人の男は動じもしないで行為を
続けていたが美波はハッとした
顔をしていた。
「もう、終わりだ‼
お前が気持ち悪い‼」
1度返した合鍵を又美波に
渡されていたが、奴らの使ったゴムが入っているゴミ箱にポイと投げ入れた。
「お前は、男にとって都合のいい
女だ、早くこんな馬鹿な事は
やめろ・・・
もう美波とは関わりたくない!
お前の父親にも電話した。
お前のしてる事も話した。」
エッ・・・
「最後の俺からの思いやりだ‼
お前は狂っている。
一度病院へ行ったがいい、病気だ‼
そのままだと壊れてしまうぞ‼」
そう言うと男達は行為を続けながら
吹き出して笑っていた。
俺は静かに部屋を出た。
長年愛した美波の心は最後まで
掴めなかった。
美波に別れを告げた時、
美波のマンションを出た俺は
肩の荷が落ちた様に
身軽になっていた。
ヤッター自由だー
そう叫んでいたんだ。
がんじがらめの人生、前田家に縛られ
美波にがんじがらめに縛られ
俺の人生を見据えた事が無かった。
その時頭に浮かんだのは
夏歌の明るい笑顔だった。
夏歌‼会いたい俺は無性に
夏歌を求めていた。
でも、もう遅いのかもしれない。
夏歌が他の男のモノになったかも
その事を確かめる勇気が無かった。
しかし夏歌は突然・・・・・
俺の前に現れた。
夏歌が梅園(うめぞの)の社員と
ゆう事を忘れていた。
夏歌を、クリスマスイヴの次の日
梅園の、会社迄送って行った事すら
忘れるほどあの頃は、
美波に夢中だったんだな!
偶然、木之本部長と夏歌が一緒に
俺の前に現れ、
夏歌は プッ馬鹿じゃなかろうか!
バレバレ面白過ぎる。
顔を隠してもすぐ分かる。
髪に残るシャンプーの香り
愛しい夏歌の匂い、可愛らしい手・・・
今一番欲しい夏歌。
しかし余りの仲良さそうな二人に
嫉妬してしまった。
俺の狂愛が目覚めた。
激しい俺の嫉妬
夏歌の男は、コイツだったのか
なるほと、温情で、やさしいと
評判な男、夏歌が惚れるのも分かる。
この男潰してやる。
嫉妬の炎を抑える事に必死だった。
なるべく落ち着いて平常心を装う。
木之本をどう潰すかそればかり
考えていた。
先ず夏歌を脅して木之本と別れ
させる作戦‼
卑怯なやり方を実践する。
夏歌を木之本から引き離す。
俺の頭は修羅の様になってしまった。
夏歌が泣こうが叫ぼうが
木之本がどんなに苦しもうが
ありとあらゆる手を使って
引き離してやる!
頭は爛々と冴え渡り異常な程
興奮している。
しかし“アンタ馬鹿じゃないの“
燃え盛るヤキモチに水がドバー
鎮火‼
衝撃の一言で、それが誤解だと
分かった時は唖然としたよクスッ。
夏歌は色々やらかしてくれる。
ホントにちょっと目を離すと
何始めるか分からない笑笑
そして俺は・・・
側で眠る夏歌に何度も発情した。
まるで初めてのようなしつこさで
愛してしまった。
夏歌が愛おしい。
比べる相手など存在しない。
もし夏歌が他の男を選んだとしたら
俺達に明日は来ないだろう。
又俺は眠る夏歌に発情期を迎えた
狼の様に激しい愛を注いでしまう。
もう、俺は夏歌だけでいい
夏歌だけがいい。
そんな俺に
“💥💢💥いい加減にシロ‼
お前は━━━━━━━━━ぁ🐒か‼“
こっちは疲れてんのクタクタ‼ワカレ
「ェ、ハイ、スミマセン」
「分かったら、あちこち触るな‼
寝る。」
ハイハイすんません。
今日はこれくらいで大人しく寝る。
そんな次の日
「ばあちゃん、夏歌と毎週
会ってるの?」
俺は確かめるべく電話した。
疑う訳じゃないが聞いてみた。
「夏歌?誰だい?
見た事もないよ。」
でたでた、つらとぼけ‼
バーちゃんは知らないと言った、
ばーちゃんの仕返しだ。
夏歌に対する俺の扱いに多少怒って
いるんだろう。
この間夏歌はウチにいるって言って
たじゃないか!
「おや、そうだっけ?
最近、物覚えが悪くてね。
アハハ歳だよ〜‼
あ💦
思い出したよ
史智(みち)に夏歌紹介しょうと
思ってるんだよ!」
「はぁ?ヾ(。>﹏<。)ノ゙駄目、駄目、
駄目だよ‼
夏歌は俺の彼女何だぞ
ばーちゃん何考えてんの?
それこそ頭大丈夫か?(•́⍛•̀; ≡ •́⍛•̀;)」
「おやおや、そうだったかい?
夏歌はいい子だよ。
アンタが要らないなら史智にと
思っただけさ・・・。
ふ〜ん‼元鞘に収まったか?
仲良くおやりよ。」
夏歌を知らないと嘘をつく
バーちゃんの嘘には前田家の者なら
すぐ気づく。
誤魔化しようのない夏歌の食卓
テーブルに夏歌の作った朝飯に見覚え
があった。
ホカホカのご飯に、ばーちゃんしか
作れない俺の好きな梅干し
だし巻き玉子
ハチクの梅酢漬け、それに懐かしい
ばーちゃんの味噌汁。
わかりやすい、ばーちゃんの嘘
夏歌は見事に前田家の朝食を
覚え作っていた。
これだけ完コピーするなら
うん、何回と通わないと無理だ‼
上屋敷のお手伝いさんも
敵わない味だ‼
並んだ朝飯を見て
「ホントにややっこしい
バーさんだ‼」
そう呟かずにはいられない。
夏歌はクスクス笑いながらご飯を
箸に乗せて食べるパクッ‼
「遅くなるよ、社長‼
ここからだと30分はかかるし・・・」
「ああ、オカワリ
夏歌美味い。」
「そりゃ、おばあちゃん仕込みの
前田家の朝御飯だもん。」
夏歌はニコニコして俺を見て
「私一将だけだから
女作んないでよ。」
フッ俺はビックリして顔をあげた。
(///д///)顔を赤らめてボソッ
と呟く夏歌が・・・( ´,,•ω•,,`)♡可愛い
夏歌〜❤
飛び付きそうな俺に夏歌は
時計を指さしイソゲと言う。
「オッ、やべ〜」
仕方なく玄関へと急ぐ、夏歌を振り返り又ムギュって抱きしめる。
熱いキスをしてアパートを出た。
空が青く気持ちの良い朝は、何年
ぶりだろう。
清々しい
思わず背伸びをする。
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