第8話 久しぶりのニャンニャン。
梅干しの土用干しも終わり
又夏歌は東京に戻って来た。
慌ただしい日常に、一将との生活は
すっかり影を落としていた。
一将が何処で何をして誰と過ごし
ているのか、もはや分からない。
つい一将恋しさに駅前のマンション
を下から眺めた。
それは本当に、偶然‼ 仕事で駅前の
デパートに出かけた日だった。
新商品の売り込みに木之本部長が
目を付けたのが、ナント‼
駅前に堂々と立ち尽くす、太幸デパートだった。
交渉に夏歌を指名したのは
木之本部長曰く‼
“社長は女たらしと噂に聞いて
ごつい男と行くより、お得意様に
評判のいい夏歌を連れて行くのが
得策だと思ったから“
・・・らしい。
朝出勤してすぐ社内メールで
今日、“営業に着いて来て“
と回って来た。
夏歌は何も聞かされず、
部長と連れ立って太幸デパートへ
とやって来た。
木之本部長は、やり手で頼りがい
のある人物だった。
「お菓子の梅園です。
部長をしております木之本です。
社長さんにお目にかかる
約束をしています。」
「こちらは、部下の紺藤夏歌です。」
夏歌は、静かに頭を下げる。
「はい。承知致しました。
エレベーターに乗られまして
東館の 6回の会議室にて前田が、
お待ちして おります。」
おしとやかで綺麗な人だ。
さすが会社の“華“ 受付嬢‼
奥の方にデパートと繋がった別館
へと上がる従業員用のエレベーター
がある。
部長と仲良く笑いながら
会議室まで行く
部長は、36歳若くて温厚で優しい
部所の中でも評判がいい。
背が高く、きちんと
ビジネスカットのスッキリ系、
清潔感がありお得意様には
中々可愛がられる派
部長は既婚者で、夏歌の大学の
先輩の真紀と、この春ゴールイン
していた。
木之本部長とはウマが合って
良くして貰う仲だった。
「木之本さん、社長ってどんな方?」
夏歌はまだ会った事の無い若手で
やり手と聞く社長に会うのを楽しみ
にしていた。
噂では若い子達が
「昨日、太幸デパート行ったらぁー
凄いカッコイイ集団がいたのぉ〜
アパレルのテナントの人に聞いたら
社長集団って教えて貰ってサー
先頭歩く人が社長さん?
って聞いたら・・・」
夏歌も興味深々に顔をツッコミ
「聞いたら何だって?」
「そうだってー‼
めっちゃイケメンだったー」
って噂話を聞いていた。
どんなイケメンなんだろう
ワクワクする‼
「社長は、若いけどやり手だぞ・・・
イケメンだけどナメるなよ
厳しいし、キツイ事をズバッと
言うからな‼
気を締めてかかれよ。
交渉に応じてくれるも中々
難しいんだぞ!
失礼の無いように頼むぞ‼」
「はーい。
愛想振りまいて、交渉成立さ
せましょうエイエイオー!!」
夏歌は意気揚々と足を進める!
上下、黒のスーツを着た女の秘書が
頭を下げて入って来た。
夏歌は少々緊張してきた。
ドキドキ
「前田は少し遅れます。
お茶をどうぞ・・・」
20代後半ぐらいの彼女はお茶を
丁寧においた。
新茶のいい匂いが鼻をすり抜けて行く。
はああああぁぁ癒されます。
鼻をクンクンさせていると
バタバタと音がして
社長らしき人間が入って・・・
き・・・た。
“は?“
さっきとは違う┣¨‡ン┣¨‡ン
夏歌は彼を見て青ざめた。
ゴクッ生唾を飲む‼
あの人が、社長さん?
・・・( ꒪Д꒪)ヤバ…💦
背が高く、髪は清潔感があるショート
サッパリ系・・・
清潔感はお菓子メーカーと
社長には必須?
優しそうな目をして
厳しい眼差し・・・
上着をバサパサパサと、脱いで
シロシャッ、すかさず受け取る
美人秘書‼
・・・?デキてるのか?
あの人が彼女なのか?
まるで慣れてる・・・いやいや
秘書ってぐらいだから
いつも一緒カー?
逞しい腕❤・・・
お高そうなロレック〇
向こうで何人かに指示を出している
結構仕事には厳しそう。
夏歌は咄嗟に顔を隠し、
下を向いた。
「木之本部長お待たせしました。」
長い足でスタスタスタ
キキタキタワァ
━━━━ヤバイ━━━━ ョ
「いゃあ社長お久しぶりです。
こっちは、紺藤です。」
「は、は、はははじめまして!
紺藤です。」
夏歌はずっと深く頭を下げていた。
「お、おい、頭を上げないか
失礼だゾ‼」
木之本部長はハラハラしながら、社長に
愛想笑い。ソワソワ
お茶をひと口飲んで、社長は・・・
ちょっと夏歌を見た。
「・・・キミ?」
ドキッ
不信な顔をした社長に気付かって
木之本が夏歌に肘でクイクイ。
木之本の額に汗タラタラ
やべぇ(((;꒪ꈊ꒪;)))・・・
「あ、ハハハハハ社長、こ、紺藤は、
人見知りするんですよ。ハハハハハ」
「エッ・・・そのぉ、あのぅ、そ、そ
えーと( ꒪Д꒪)人見知りします」
夏歌は木之本の言葉に相槌を打ちながら、俯いたまま呟いた。
夏歌は髪の毛で顔を隠し、
右に左に顔を背けて前を見よう
としない。
「キミ、紺藤さん?
顔を上げてくれないかな!
話が出来無いだろう。
ちょっと失礼じゃなイカ?」
「あ、ハハハハハですね。
どーぞ部長とお話ください。
お気がね無く・・・
私は、
金魚のフンですから・・・
付いてるだけです。」
夏歌は下を向いたままつぶやいた。
「ん?(눈_눈)ジッ…」
(눈·̫̮ 눈)じー・・・
ウッみ、みるナ
社長は不信な顔をして夏歌の
顔の前に近付いた。
一将が顔を近付けたと同時に、
一瞬顔をパッ☆と上げた
夏歌は、パッ顔を又逸らした。
一緒に右に左に、右、右左、左、
右と見せ掛け左、右、右・・・顔を
パッパッパッパパパと、動かした。
同じ動きを一将も腰を屈めて
夏歌が動くように顔を動かす。
顔が疲れた頃
「ははぁ
フウーなるほどね。」
社長は何か納得したようで
「契約しましょう。
中々面白い方ですね。
彼女と僕と気があいそうですよ。
契約はします。
ただし着拒を取り消し直ぐ
携帯を使える様にする事‼
それが条件です。」
( ー̀дー́ )チッチッバレたか‼
夏歌の囁きと同時に社長は
「忙しいのでこれで・・・」
出て行こうとする一将に木之本部長
が 「御婚約、おめでとう御座います。」
ふと足を止めた一将は振り返り
「ああ、はい。」
そう言って夏歌を見た。
バックで顔を隠していたが夏歌の
グルグルとした目(ΦωΦ)はしっかりと
一将を見ていた。
「あーラッキー契約取れて
良かったワ
夏歌のおかげだな!
でも・・・なぁ?
夏歌があんなに、イケメン苦手
とは知らんかったワ アハハ」
木之本部長は、安心したような
表情をしていた。
「夏歌、オイ、夏歌・・・」
ボーっとした夏歌は疲れていた。
木之本の呼び掛けに相槌も
面倒臭い程に。
「ん?あ、ああそうですね。」
「お前今日は変だぞー飯でも食う
か?腹減ってんのか?」
木之本部長は、携帯を取り出し
「あれ?ヤッパリ着拒なんて
してないぞ!
俺がする訳ないよなー
社長勘違いしてんなー。」
ああ、木之本さんはノー天気な
考え無しのお人好しだと真紀先輩が
愚痴ってた事を思いだした。
その人柄が気にいられて昇進
したのだとか?
真紀先輩はしっかり者、部長の
手網をしっかりと握る真紀先輩を
お嫁さんに貰って
大正解と、夏歌はしみじみと感じていた。
「部長
仕方ない、気晴らしに、
飯、食う食う、くいまーす。」
夏歌は鰻狙いだ。
デパートの中に鰻の一太とゆう
名店がある。
嫌がる木之本を引っ張り
鰻をおごらせた。
「真紀に言いつけてやる!」
部長はカードを出しながらブツブツ
「次は夏歌お前の奢りだかんな‼」
「部長のくせにミミッチイ
真紀先輩はなんでも食わせてくれるし
ケチ臭くナイ‼」
「俺には家庭がある‼
しかも子供生まれるんだぞ‼
節約、節約‼」
「ハイハイわかりましたよー
サンドイッチおごりますよ。
コンビニの新しく出たハムポテチサンド、ハムにポテチを挟んで卵とレタス、を重ねる、お昼限定の
バリッ、シャキシャキの奴」
「チッ、ステーキ‼ だステーキ‼」
(๑˘・з・˘)は?
「部長の給料と私の給料
どれくらいの差か知ってます?」
(๑ˇεˇ๑)•*¨*•.¸¸♪シーラネ!
「モウッ‼
又ボーナス出たばかりでしょ
夏のボーナス‼ケチくさいと
真紀先輩にケチ男って
言いつけますヨ‼」
「あーハイハイ‼
もうお前とは外回りしねー」
キャッキヤ、キャッキヤ
笑いながら歩く2人を
ジ━━━━━━━ツ
と見つめる一将がいた。
⚡ゴゴゴゴ━━━━━━━━🌀
デパートを出て会社に戻る為夏歌は
バスに乗り揺られながら
夏歌は又ボー
・ヤレヤレ
一将の事を考えていた。
少し失恋💔の痛みが薄れ始めた頃
バッタリ会うなんて‼
しかも太幸デパートの、社長おー‼
余計近づけないじゃん。
こりゃ一将の父親から💰💰💰
金狙いと思われる訳だ・・・
何を期待していたんだろう。
鰻じゃ埋まらない気持ち‼
駅前のマンションは通勤楽チンに
する為デパートの近くに、
借りてたのか、なるほどね。
金持ちのやる事は違うワ‼
それに予定通りってか、当たり前に
ってか、婚約者いたんだ‼
知っていたようで一将から聞いた訳
じゃ無かったから、だろうな〜
って思っていたのが確信に変わった。
彼女いたのに私ともヤってたって・・・
ヤッパリ遊ばれてたんだ・・・
ちょっとショック
コレが本物の失恋💔・・・か‼
分かっていたけど・・・中々
キツイ・・・もんだな‼
着拒、取り消さないとダメなのか?
なんで?
契約の条件に着拒取り消し
と言ってきた。
どー言うつもりデスかー?‼
木之本部長、その着拒は私に言われ
たんですー
部長じゃないんですぅー
そう言ったところで
なんで?なんで?と聞かれるの
めんどくさい。
説明するのか?彼のセフレと?
どんな関係?
いつ知り合ったの?
説明めんどくさい。
黙ったままの方が身のためだ。
言われた通り直ぐ着拒を解除した。
続いて、LIN〇を解除すると・・・
「なんだァこりゃあ」
呆れる文面が並んでいた。
日付は5月終わり、恐怖の
高速道路頃・・・か?
夏歌男がいるのか?
今どこだ?
夏歌、夏歌
また居ないのか?etc
ヤレヤレ
どー言うつもりですか?
二股ですかい?
彼女いるヤンケ
どう言う気持ちでライ〇して
来たのか?
唯の心配か!?
文句言わないと気が収まらない!
スクロールして文字を打つ
バスの中は電話はNG
「アンタ婚約者いるのに馬鹿野郎
じゃん。」
ピッ送信
秒で返信きた。
ピュ〜ン
「お前、着拒なんて何様だよ💢」
「婚約者いながら見合いする?
アンタに言われたくねーよ‼」
「お前が心配なんだよ。
木之本部長がお前の男か?」
ピッ
「だとしたらなに?契約宜しく‼
着拒は解除したんだから
約束守れフンッ!!」
ピユ〜ン
「契約書持って又コイ
お前んとこの社長に連絡した。
夏歌に持ってこさせろってナ」
「なっ‼、は?私?何で?」
バスの中で声を上げてしまい
白い目でジロジロ
「す、すみません。」
夏歌は軽く右左にペコペコ
部長は得意先回りに一つ先で降りた。
夏歌も次のバス停で降りて
直ぐLINE〇の電話マークを押した。
ムカムカしながら電話に出る。
「もしもし、一将
木之本部長の立場があるの‼
部長も一緒にって頼んでよ!」
「アイツ、お前の男なんだろ‼
俺はムカついているんだよ‼」
「は?この〜‼ 浮気やろう。
乙女の私を遊んだくせにー」
「夏歌、アイツが好きなのか?
愛してるのか?」
「だったらなに?」
「ヤツを潰す‼
木之本を徹底して潰す。」
「はあああああああああぁぁぁ
馬鹿じゃん!」
「俺は嫉妬深いんだ‼」
「は?嫉妬?嫉妬ってどんな?」
「夏歌は・・・俺のだ
どんな事しても取りもどーす。」
「はぁ?何言ってるか分からない。」
夏歌は呆れた叫びに似た声をだした。
ジロジロ、ジロリ
何人か振り向き又ジロリ
夏歌は、ちょっとペコペコ
頭をさげた。
「言ったままの意味だ‼」
尚、一将は挑発気味で騒いでいる。
可成の大声、耳にキンキン
夏歌は、掠れるようなちっちゃい声で
「木之本部長は私の先輩の旦那さん
真紀先輩が大好きナノ‼
だから旦那さんの部長にも良くして
貰ってるーだけ‼。」
「それにしちゃ仲良くね?
しかも、声ちっちゃ‼」」
「アノネ、私が一将を好きなのは
おばあちゃんが良く知ってる。
毎週一将のおばあちゃん家に
通ってるの‼
だから車も買った。
“アンタ馬鹿じゃないの!“」
・・・マジか
衝撃の事実‼
一将は一瞬ポカーン
その“馬鹿じゃないの“ の一言で
魂が戻った。
しかし、気を取り直した一将は・・・
馬鹿みたいに上機嫌
「夏歌ぁー
そうだったのかぁー」
急に怒りのドス声からキャンキャン
したトーンに変わる‼
「ゲッ‼ キモ その声どーにかシロ‼」
夏歌は全身の血が下がりそうになる。
「夏歌会いたい♥」
「は?‼今会ったじゃん。」
「会いたい♥」
「あんた、婚約者いるじゃん
ばかじゃん。」
「夏歌が好きだから別れた。
お前が好きだから・・・」
「はああああああぁぁぁ
・・・ฅ(๑*д*๑)ฅ!!」
「何とか言え夏歌‼」
「急展開過ぎて・・・」
「じゃあ、答えろ!
お前は俺がすきか?
男は居ないんだな‼」
「あんたじゃあるまいし、
私は一途なんだよ。‼」
「夏歌ぁ〜❤
何気なしに、俺に告ってるのかァ〜
知らないぞぉ﹏w
・・・会いたい、今スグ‼」
「は、はァ〜馬鹿か💢
あんた社長だろうけど
コッチは給料貰ってるんだから
仕事はしないと、給料に響くの‼」
「夏歌ぁ〜❤
お前の告白を聞いたのに・・・
冷たすぎないか?
給料と俺の愛情を天秤にかけるのか?
お前は、会いたくないのか?」
「シラネ‼」ブチッ
咄嗟に切られた電話を握りしめ
「そーだったのか
夏歌も俺のことがなー
そうなのかー」
その夜、一将は仕事終わりに
夏歌の築50年の住処にやって来た。
一将は、顔がニヤケて止まらない。
引き締めてはニヤリ
ん、んんッ・・・ニヤリ
ピンポンピンポンピンポン
が煩くて風呂に入っていた夏歌は
知らん振り。
「ちょっとアンタ‼煩いんだけど‼
いい加減にして💥💢💥」
と一将を一撃したのは夏歌では無く
近所のオバチャンだった。
文句三昧。
アンタのトコのコンシェルジュさん
みたいに彼女達は甘く無いし
優しくない!
付け足せば美人でも無い‼
年期の入ったオバチャンだ‼
世間のパートの荒波を立派に
乗り越えたオバチャンなのサー
睨み付ける厳しい眼差しも長年
鍛えた筋金入り‼
そうやって荒波にもまれ生きて来た
気のつええオバチャンなんだ‼
「すみません、すみません
いやぁすみません、ニヤニヤ」
怒られても夏歌が俺を好き・・・
嬉しい気持ちは抑えられない!
オバチャンには怪しい男と思われた
かも知れない!
一将のタワマンとは違い夏歌の
築50年のアパートは防音完備が50年
前なので顰蹙をかった。
余りの嬉しさに勢い余ったらしい
一将は、アパートの住人15世帯に
梅園の和菓子を買い、お詫び行脚
そして、又夏歌の部屋にやってきた。
一将は知っていた。
長年、パートのおばちゃんと接して
勉強もした。
人付き合いの!!
ここの、オバチャン達は袖のした、
しかも甘い物が好きだって事を・・・
それに美味い酒も足せば
旦那も喜ぶ、イコール俺は
嫌がられ無い方程式!!
夏歌は突然現れた一将に
「来たの?ホントに?」
キョトンとする夏歌に一将は
飛びつき
ガバッ
「夏歌会いたかった。
アレーアレアレェ〜
そんな〜急にヤル?
か、髪がまだまだ濡れてるーっ
て!」
「うるさい‼着拒の罰だ‼」
まあ、大人なんだからこんな事も
あるさ!
夏歌もあの懐かしい腕に
しがみついて久しぶりの
汗を流した。
夏歌も溜まっていたのかも知れない。
大人なんだからで固唾いてしまう。
夏歌は、腕フェチなのか?・・
ごつい腕は堪らないジュルッ
ま、人それぞれこんな世の中
少しの幸せを感じていられるのは
凄く幸せなことだろう。
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