第6話 前田家の蕎麦

「夏歌ー👋ここだよ〜」


おばあちゃんは待てなかったようで

近くのバス停でチョコリンと

座っていた。


「どーぞ‼」


スッカリ短時間で、運転に自信を

つけた夏歌は

1番に乗せるのは、おばあちゃん

と決めていた。


ナビに案内を入れる。

車は上に上に登っていく。

おばあちゃんはウトウトしかし

蕎麦屋には行き着かない。


「あれ?あれ?」


おかしいな?広い森の入口に着いた。

蕎麦屋はおろか、道すらも怪しい。


怖くなった夏歌はUターン。

いつか聞いたことがある。

ナ〇があの世の近くまで連れて

行くって ・・・

そんな事を思い出しゾクゾクとする。


それから同じ道をグルグル

“おばあちゃん“ “

おばあちゃん“

もうナ〇は当てにしない。


おばあちゃんはぐっすり眠ったまま

何度も道を変えても同じ森の入口に

たどり着いた!


仕方がない!

おばあちゃんが起きるまで待つ事

にした。

疲れていた夏歌もついウトウト

としてしまった。


目が冷めるとバカでかい御屋敷

の上がり段に座っていた。


おばあちゃんは、何人かの若い

人達とお茶を飲んでいた。


広い家屋の中で玄関にはやはり

アマリリスがドーンと行けてあった。


もうアマリリスの時期は過ぎた

のに何で?

あんな沢山生けてあるの?


夏歌の軽い疑問が頭を持ち上げる。


開き戸はデカくて夏歌の座る

上がり段はピカピカと黒光りが

していた。


凄く美しい。


夏歌はびっくりして回りに目をやった


開き戸は大きく開けられ庭は

日本庭園が広がり見事な松や

デカい庭石、灯篭が職人さんが

一生懸命手を入れているのだと

わかる。


庭に広がる苔もそれは緑が濃い所

もあればライトグリーンな所もある。


ふと賑やかな話声に目をやれば

たくさんの人が集まっていた。


おばあちゃんの他に何人も

御年寄が集まってて、おばあちゃん

も凄く楽しそうにしていた。


おばあちゃんは

「この子はね、上屋敷の一将の

お嫁さんになるんだよ。」


私を指さして「夏歌」って言うの。


女の人達が目を向けた。

私はぺこりと頭をさげた。


「オーオー

一将の事よろしく頼みますよ。」


「前田は絶やしちゃいけない。

あなたに頼みましたよ。」


せつなそうな瞳で、夏歌を見てくる。


よく見ると御年寄も若い人も

昔の着物を来ていた。


ティセットもなんか古っポイ

テーブルもツヤツヤとした高級家具

気品がある。

1枚の木から作ったと思われる

6人掛けのテーブル。


なんか明治時代から昭和初期の

雰囲気。


蓄音機なるものも、クラッシックピアノもある。かなりの金持ちっポイ



おばあちゃんと私だけがパンツ姿


「嫌だあ、お母様。」


は?お母様?

おばあちゃんより10歳は若い人に

おばあちゃんは、お母様?と言った。


篤子、篤紀、篤美、女三姉妹

おばあちゃんに良くにている。


と‼そこに、

「篤子久しぶりだな」



「一吉さん。」

そこには一将(かずま)と瓜二つの

初老の男の人が立っていた。


おばあちゃんはウルウルと涙を

浮かべ飛びついた。


「会いたかった。」


「苦労かけたな!でもまだまだ

前田家を守ってくれ。

まだ篤子はこっちには来たら

ダメだぞ・・・。」


前田家?前田?


そうだ聞いたことがある。

「爺さんは養子だったらしい。」

一将から聞いたことがあった。

じゃあ、おばあちゃんは一将の

おばあちゃんって事?


と、言う事は?


ここに集う皆様は?


しかし夏歌は怖く感じない。


みんな良さそうな御先祖様ばかり

言わなきゃ、一将に振られたと、

おばあちゃんばかりか、御先祖様

を騙す事はできない。


「さあさ、夏歌食べなさい。

篤子も沢山召し上がれ。」


「お父様」

おばあちゃんは、90歳くらいの

おじいちゃんを見て叫んだ。



お爺さんは夏歌も沢山食べなさい。

そう言った。

おばあちゃんより若い

おばあちゃんの実母が2人に

蕎麦を薦める。


あの世の食事を一将の

御先祖様と取るなんて滅多に

無いことだったってか、有り得ない。


「有難く頂きます。」


夏歌は椅子に座ると薦められる

まま、頭を下げてズルズルと

蕎麦を食べた。


足をバタバタさせ、

う、う、ウマーイ、さすが

明治時代のそばは水が違う。


木の芽、山椒が露に刻んであり

シソの葉と口の中で味がわかれる。


おばあちゃんもズルズルズルズル


懐かしい。

お父様の、お蕎麦にまちがいない。

美味しい。

お婆ちゃんは泣きかぶりグスングスン


御先祖様もズルズルズルズル


「篤子、泣きながら食べると

味が落ちるお父さんの蕎麦は

美味しく・・・食べなさい。」


「はい。」


昔話に盛り上がり

楽しい食事会になった。


賑やかに孫たちの話をしたり

手作りのぼた餅や煎餅を進めて

くれた。


暖かいお茶をすすると

「夏歌、篤子、もう帰りなさい。

道までおくりますよ。」


総勢100人に近い前田家の使用人

が家の前に立っていた。


みんなニコニコニコニコしていて

あの世の人とはおもえない。

おばあちゃんが1人1人近況を

伝えていた。


籠八さんとこの玄孫に、

孫が生まれたよ。助太さんとこの

畑にはスイカを植えている。

などなど皆嬉しそうに聞いていた。


みんなが手を振って手を振って

誰も一言も話さない。


笑顔で送ってくれた。



前田家は、こうして続いて来たの

だろう。

おばあちゃんの旦那さんだけが

辛い顔をしていた。


おばあちゃんはこの世の人で

おじいちゃんはあの世の住人なのだ。


「おまいさん、体に気をつけてな‼」


お婆ちゃんも、お爺ちゃんも

名残おしそうにしている。


「ああ、篤子も元気でな‼」


「逝く時は迎えに来てね。」


「ああ、来るさ!

でもまだ遠いぞ!

曾孫、玄孫、前田家を頼むぞ」


おじいちゃんは夏歌を見て

「一将の事、待っててくれ。

今一将は気付か無いんだ。」


おじいちゃんは優しく夏歌の頭を

撫でた。何故か夏歌は泣いてしまった。


そして見送りの人達が1人1人

遠くなって、

白い霧がかかって・・・


篤子と夏歌は同時に

パッ(⊙⊙)!!(⊙⊙)!!目が覚めた。


しばらく2人とも喋らなかった。

動きもしないで

おばあちゃんは泣いていた。


夏歌は夢じゃなかったと思った。



峠の蕎麦屋は、全く違う場所で

ナビは今度は正確に場所を示した。


おばあちゃんは

何か言いたそうにしていたので


「皆さん、いい人でしたね。

おばあちゃんは一将のおばあちゃん

だったんですね。」


「ああ、一将は孫だよ。

黙っててゴメンよ。」


「そうだったんだー

でも初めて会った日の翌日

一将が私を置いて行った理由を

シッカリ話してくれたから

親戚かな?とは思っていました。」


「ハハハハハごめんよ。

そうだよ。

私がややこしい一将の

ばーさんだよ。」


「ふふふ

一将の言う通りのばーちゃんです。」


「又、来てくれるかい?」ฅ


“「来てもいいですか?

一将には他に彼女います

私は一将の嫁にはなれないです。

それでも来ていいですか?

今まで通り。」


「勿論。一将がダメなら

孫はまだいるから夏歌、頑張れ

今外国にいる孫が又良い男でね、

一将と違って真面目なんだよ。

ちょっと歳下だけど、いい子だよ。」




「うふふふふ

了解、お婆ちゃんの孫だから

間違いないでしょうね。


でも未だ彼氏はいいかなぁ・・・

彼氏よりお腹空きました。



現世の蕎麦も美味しいん

でしょうね。」


「勿論だよ。」


あの世の蕎麦を食べてお腹いっぱい

になったはずなのに

篤子も夏歌も、お腹ペコペコだった。


二、三時間はいたはずなのに

バス停の前で寝ていた時間は

高速を降りておばあちゃんを乗せた

時間ピッタリだった。


時間は止まっていたのか?

逆戻りしたのか?




不思議な事も有るもんだ。

おばあちゃんと夏歌は、峠の蕎麦屋

で天ぷらそば、笊蕎麦

蕎麦がきを、たらふく食べた

勿論凄ーく美味しかった。


デモ、おばあちゃんのお爺様が

打った蕎麦が一番美味しかった。


お爺ちゃーん📣

ご馳走さまでしたー


又ご馳走して下さーいーねぇー

青い空を仰ぎながら夏歌は叫んだ


ビューンと風が吹いて優しく

頬を撫でられた気がした。





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