第3話 一将のややこしい祖母

どんなオバーさんが出て来るのか

ちょっと楽しみ


夏歌の祖母の桜も中々ガンコで

しかし夏歌の事を可愛がってくれていた。そんな遠い昔を懐かしむ・・


一将のお婆ちゃんと夏歌のお婆ちゃんの姿が重なり、その日から夏歌は凄く楽しみにしていた。


一将の仕事が忙しいらしく

中々日にちが合わず、いやいや

彼はホンカノとのデートもあったの

カモしれない。


連絡が来た時は、そろそろ

五月の菖蒲湯の季節を迎えていた。


一将の祖母との御対面には気合いを

入れた。これから二年仲良く

したかった。


流石に御両親との対面は絶対?

無いだろう、一将には本当の彼女が

いるのだから・・・

一将から頼まれた事をクリアして行くのが契約彼女だろう。

夏歌の時も手を貸して貰わなければ

ならない時も来るだろうし・・・


Win-Winの関係は美味しいのかも

しれない。


「ウワッ‼ な、夏歌どうした?」


夏歌は薄桃色の訪問着に淡い

ライトグリーンの帯をして髪は

くるりんぱをアレンジして

可愛らしく結い上げていた。


「夏歌、着物着れるのか?」

一将は着物姿でクルリと回る

夏歌に見とれてしまう。


「えへへーおばあちゃんに

仕込まれたんだー

着物着れても意味無いと

思ってたけど、どう?」


一将を見ながらニッコリ笑う夏歌は

とても綺麗で、可愛らしかった。


「お、おお、いい感じ

似合うし、綺麗だ。

なんか違う意味で脱がせたい。」


「バカヤロウwwwwww

せっかく着たのに、一将の為に

着たんじゃないつーぅの‼」


ちょっとむくれ気味の

一将を無視しながら部屋を出る・・・

(時代劇の帯クルクルをしたいのか 町娘を誑かす、 お前は悪代官か?)



アパートの前には

予想はしていたけど

黒のピッカピカの高級車がドカン

と止まっていた。


車は街を抜け高速に乗り1時間

くらいの所で高速を下りた。


少し山道に入り、抜けた所に

大きな門構えの御屋敷が見えた。


「うわあ、一将のバーちゃんち

凄くない?」


夏歌が呆気に取られて目を丸く

していると車は、だだっ広い駐車場

に止まった。



すると、



タタタタタ‪=͟͟͞͞(=͟͟͞͞(=͟͟͞͞

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨


一将の車を待ち構えていたらしき

二、三人の60代くらいのおばちゃん達がドドーンと出てきた。

3人とも作務衣姿だった。


「ん、まあーあ‼

おぼっちゃま、

おばあ様がお待ちです。

早く、早く、早く‼」


「あのー私一将と御付き合いし・・・


夏歌はガン無視されて一将は

担がれる様に連れていかれてしまった。


「えっ、あっ、おい‼」

一将はジタバタと暴れていたが

オバちゃん達はかなりガタイがよく

疲れ知らず、一将はヒョイと傾げ

られて見えなくなった。


坂道が続き着物姿の夏歌は置いて

行かれた。


もう一将の姿は消えていた。

ポカーン


ハッ「成程・・・作戦か!」

夏歌はややこしいババアだと

確認した。


「やる事がまどろっこしい。」

帯をポンと叩き、上前を帯に挟み

急な坂道を登りはじめた。


へっぴり腰と言うかあまり

人に見せられない姿で

30分ばかり歩いたら

車が何台も止まる駐車場が見えた。


「一将の野郎

アイツもグルか‼

駐車場ここじゃんか

″ムカッ…💢」

さっき止めた一将の車は坂下に

ある。しかし車止めの付いた

広━━━━━━━━━い駐車場が

デ━━━━━━━━━━━━━ン

と広がっていた、余裕で20台は

いけそう。



夏歌も頭に来ていた。

最初から、ここまで乗せてくれたら良かったじゃん。

着物と知ってるくせに﹏w💢」


こうなったら、BBAの顔を意地でも

見て帰る‼フン"夏歌は

強い決心をしていた。


御屋敷の玄関に着くとチャイムが

見当たらない。

しかし玄関は中途半端に空いていた

コレは?


赤、白とピンクのアマリリスが

ドドーンと生けてあるのが見えた。


「ごめんくださーい‼

ごめんくださーい‼」

夏歌は叫んだが、中から誰も

出てこない。


しかも玄関の横に500円玉が

落ちていた。


確かどっかの外国では、人柄を

知るためか?何か分からないけど

テーブルに金貨をワザと置いて置く

って読んだぞ!


金貨にしろよ!

五百円玉じゃ・・・力不足だぞぅ

いや金力不足‼。


夏歌は500円玉を拾うと

「500円玉落ちてますよー

金貨にして下さーい‼」

と又デカい声を上げた。


プッ:∴ブハッ

と笑う声がした。


それでも誰も出てこない。

夏歌は玄関の戸に500円を挟み

暫く待ってみた。

1時間も車に乗り、さらに30分歩き

さすがに、着物で来た事を

後悔していた。


どうやら夏歌は不適切と判断

されたのだろう。

無視に継ぐ無視‼


くるりと向きを変え歩き出した。

朝止めた一将の車の所まで来たが


唖然とした。

一将の車が無い‼

どこ行った?休めんじゃん、足

痛い!!


「帰ったのか?

夏歌を置いて・・・。は?一将って

こんな薄情な男だったのか‼」


夏歌は慌てて財布をみる。

金欠だったが1万円は、

入っていた。何故かホッとした。」


交通機関を調べた、しかしバス亭迄

可成の距離がある。

仕方ない門の入口にデカい桜の木が

あった。青葉の頃を迎えデカい根が

盛り上がっていて腰掛けられた。

車で入って来た事もあり、気づかなかったが立派な木だ‼


あ〜優しくしてくれるのは樹齢

何年かの桜の木かー

ありがとう。


疲れた夏歌はハンカチを広げ

木の根元に座り少しウトウトしていた。


疲れちゃった!




「おい、おい、おいぃーってバー‼」

俺は母親の護衛の使用人

空手3段、剣道4段、柔道三段は、

女を捨て、前田家の為に骨を

埋めると誓った、前田家女御用人

に捕まった。


「なんで?バーちゃんちに

おめぇーらが待ち構えてんだよー」


(´×ω×`)イタッ

一発ぶたれ俺は引きづられながら

連れていかれて着替えさせられた。

玄関で夏歌のごめんくださーい

の声が聞こえた。


「お、夏歌ムグムグムグ」

御用人のババアに口を押さえられ

ハァハァハァハァ苦しかった。


やっと帰りましたー‼

家政婦3人が玄関から、座敷迄

小走りに走って報告にきた。

暴れる俺に着物を着せられ、

なんか?分からん?支度を

させられていた。


俺は頭に来て

「俺も帰る‼」

そう口にした時、御用人のボス

俺の母親が現れた。


「一将、やっと会えたわね。

あなた見合いを嫌がり逃げ回って

るから大変だったわー

やっと捕まえたわ。」


「母さん卑怯だぞ!

騙したな‼」


「だって、こうでもしないと

あなた捕まんないじゃない。

オホホホ」


「夏歌は?夏歌はどーした。」


「帰ったわよ!案外根性無いわね。」


「今日はお見合いよ、

一度くらいお父様の顔を

立てなさい。

分かったわね。」

身長163の母親は着物をビシッと

着こなし前田家を守っている。

結い上げた髪に今どき簪を刺し

極道の妻のような、近寄り難い

50代。

ピッと切れた流し目はゾクリ

とする逆らえ難い貫禄がある。




「一回だけだぞ‼

夏歌はちゃんと返してくれ

それが条件だ‼」

俺は夏歌を心配しながら母に

確認をとる。


「最初からそうすれば

良かったのよ。」

そう言うと母親は


「玄関に車を回してちょうだい。」


夏歌がウトウトカクッとした時、黒塗りのピカピカした車が門の前で止まった。


車の中には着物をきた一将が見えた

藍色のお高そうな着物が良く

似合っていた。


かず・・・ま・・と叫びそうになったが

何故か声が出なかった。

出しては行けない雰囲気が広がって

いた。


ボーっと突っ立っていると


ポンポン、肩を叩かれた。


「あんた誰じゃい。」


背の低いお婆さんが、しゃがれた声

をだし、夏歌を不思議そうに見ていた。


「あ、💦私怪しい者じゃありません。 ちょっと手違いがあって・・・」


そうだ私は一将の本当の彼女じゃない。彼に協力する振りをしながら

恋人になったつもりでいたのだろう。


彼の人生とは交わってはいけな

かった。


お婆さんは姐さん被りをして

小さくて元気の良い人だった。


お婆さんの、背中には沢山の

籠いっぱいの梅が見えた。なんとも甘酸っぱい青梅の独特のいーい香りがする。


「梅漬けるんですか?」


「そうだよ、梅の木が沢山あるし

私の漬けた梅を孫が喜んでくれ

てね。一年中食べれるようにね。」


「へえー、美味しいんでしょうね。

私も食べてみたい。」


「あ、そうそう、🍙があるよ

たべるかい?」


お婆さんは荷物を下ろすと

カゴの中から、ラップに包まれた

🍙を1個出してきた。


お腹すき過ぎて🍙に目が


爛々・・・


パクッ一口噛みつくと中に

紫赤い梅干しが顔をだした。


うわぁスッパーイヒヤヒヤヒヤ。

デモ、ウマーい。

お米もウマーい。


「あー、🍙食べたら

又お腹空いて来ましたー。」


「ハハハ、迎え腹ってやつだよ。

お茶でも飲むかい。家そこなんだけどついてこれる?」


「ハイッ‼」



お婆ちゃんは返事のいい夏歌を

つれ、年寄りとは思えぬ足取りで

10分くらい歩くと

小さな門構えのある平屋のお家に

入って行った。


「あ‼ さっき一将が止めた駐車場の

近くだ‼」


立ち止まり辺りを見回していた。

駐車場とは、ちょっと違う

木戸口の空き地みたいな場所だ。


「早くおいでー」

おばあちゃんが、手招きして

くれたので小走りで走った。


玄関を開けるとやはり、アマリリス

がドーンと生けてあった。


アマリリスがこの辺の人は

好きなんかな?



「はい、手洗い、うがいして・・」


お婆ちゃんの言う通りガラガラガ

ガラガラガラ

綺麗な洗面台だなぁ〜

ホテル並〰

なんて思いながら手洗いうがいを

済ませた。


おばあちゃんはキッチンに立って

何か始めた。

不思議そうに夏歌が立って見てると


「着物汚れたら大変だから

アッチに座ってなさい。」


「着物疲れちゃったんです。

着替え貸してもらえませんか?」


「着替え?‎

私のかい?」


「はい、ご迷惑じゃなければ・・・」


おばあちゃんは、紺色のブラウス

と、よくトゲぬき地蔵のおばあちゃん

達が来ているズボンを出して来た。


「うわあ、有難うございます。」


夏歌は着物を脱ぐと

おばあちゃんが出してくれた

着物かけに着物を掛けた。


「あースーっとした。

朝から着てたんです。」

帯を解くと羽でも生えた様に

軽い軽い。


とげぬき地蔵ファッションの

ばーちゃんスタイルの夏歌は

お婆ちゃんに “プッ“ と笑われて

しまった。


「なんで?見合いでもしたの?」


お婆ちゃんは不思議な顔をして

夏歌を見た。


夏歌は人なっっこい笑顔をみせ

ながら


「実は内緒ですよ。

一将って知ってます?

この上にある屋敷のボンボン

なんですけど・・・。」


「あ、ああ知ってるよ。

小さい時からね。あの子ボンボン?

なのかい?」ꉂꉂあははは


「あーですよね。家近いですもん。

その一将のおばあちゃんに

会いにきたんです。

見た感じボンボンですよ。

イケメンですけどね。ハハハハハ


私、御年寄なので失礼があったら、

行けないと思って何着ようか考え

て、悩んで、金欠だから新しい服

買えなくて、失礼のないように

着物にしたんです。」


「へぇーで‼ 会えたのかい?」


「いいえ、歓迎されて無くて

門前払い、くっちゃいましたー

ハハハハハ。」


「プッそれは、気の毒にね。」

おばあちゃんは眉を潜めて呟いた。


トントントン

樽から大根漬けを取り出し

お味噌汁を作りながら大根漬けを

切っていた。


「あー漬物のいい匂い

ウチのおばあちゃんも良く

つけてました。


私も真似したけど上手く出来な

くて・・・」


あっという間に白いご飯と

漬物とだし巻き玉子

とお味噌汁が並んだ。


「うわあパチパチパチ

The、日本のご飯って感じ

おーいしそうー。」


夏歌はさっき🍙を食べたばかり

なのにパクパクパク


「うわあ、お味噌汁も

美味し〜

おばあちゃん天才。」


おばあちゃんも

「そうかい‼ 喜んで貰えて

良かった、良かった。」

と、ポリポリパリパリ。


夏歌の口もポリポリパリパリ


「市販の味噌より香りが強くて

油揚げのまったり感

椎茸の香りも強く、お豆腐も絹ごし、美味しーい!!」


ブツブツ感想を呟く夏歌をみて


おばあちゃんは

「なんか、あなた私の姑みたい

だよ。アハハハハ!」


そう言って笑った。

「あー美味しかった。

お腹いーっぱい。」

最後にお茶をすすり。


夏歌はご馳走様でした。

空になった食器をまえにして

手を合わせ頭をさげた。


おばあちゃんはそれを見て

ニコニコ

「どーいたしまして、こんなに

食べてくれるとは・・・」

と又ニコニコ


後片付けを夏歌と2人で終えると

おばあちゃんと2人で昼寝を

した。


夏歌はグッスリと眠ってしまった。

辺りは薄暗くなり初めていたのも気づかずに。


早起きと緊張と一将に置いてかれた

大ショックなところに、

お婆ちゃんに優しくして貰えた安心感でホッとしたのだろう。


“捨てる神あれば拾う神あり“



「大奥様、御夕飯は上屋敷で

とられますか?

今日は一将坊っちゃまがいらして

おられますよ。


お見合いも無事に終わったらしい

ですよ。

御報告をお聞きになりますでしょう。」


この辺では広い敷地内にある土地を

上下に分けて上屋敷、下屋敷

と呼んでいた。


昔は武家屋敷があり、一将はその

血を引く跡取りだった。

前田家の土地が令和に入った今日でも広く残っている。


しかし一将の祖母、篤子は気ままな

暮らしがしたいと、敷地内に平屋を

立て、当主である一将の両親とは

別に1人で住んでいた。


「・・・見合い?

一将が見合いをしたのか?」


「はい。

中々良いお嬢様だったと奥様が

仰っておいででしたよ。」


「そう。

私はやめておく!

お客さんが来てるのよ。」


「エッ‼そうなのですか?

失礼いたしました。

直ぐ、お茶のご用意を致します。」


「いいの‼

気心のしれた友人だから大丈夫よ。」


夏歌は遠慮が無いとゆうか・・・

スッカリ実家気分で寝てしまった。


ꇐ₃ꇐ 目が覚めた時は

もう夕方だった。



「なんだい?なんだい?

どーしたの?」


夏歌は慌てて

「ごめんなさいスッカリ長居して

しまって、帰ります。

着替えは洗ってお返しにきます。」


「あ、ああ、もう遅いし

泊まりなさい。

駅までは遠いし、しかも

もう 電車もないよ。


明日の朝早く、知り合いに送って

貰う様に頼んだから

夕ご飯又付き合いなさい。」


「エッ‼

いいんですか?」

おばあちゃんはニコニコしながら

頷いた。


夏歌も緊張が熔けホッとした顔を

見せた。


話によれば孫は男の子ばかりで

女の子が欲しかったと

笑いながら話てくれた。


その夜はおばあちゃんと話に

夢中で携帯の存在をスッカリ

忘れていた。


2人で枕を並べて眠った。

田舎の祖母を思い出し久しぶりに

体も気持ちも安らいでいた。


《《母さん、夏歌帰って

無いんだけど、携帯にも

出ないんだ‼ちゃんと

送ったのか?》》


見合いが終わり一将は急いで

夏歌のアパートの前にいた。

もう夜なのに明かりも付いていない、

携帯にかけるが出ない。


ライ〇に、連絡して・・と何度も

送るが返事も無かった。


「アラそう‼ 彼女幾つなの?」


「25」


「一将、もう大人よ、

ほっときなさい!何処かで

遊んでいるわよ、今どきの子だも

の心配は要らないわよ。。」


なんかあったら母さん許さない

からな‼」


「なんにも無いわよ!

それよりお返事は早くしなさいね。あちらは乗り気よ」



「今断った。」


💢

ひっくり返りそうな母親の悲鳴を

聞きながら💢電話をバシッ

っと切った。



その後

「一将かい?せっかく来たのに

顔見ないで帰るとは・・・

薄情な孫だよ。」


「ゴメン、バーちゃん。

俺、今忙しくて後で電話するよ。」


「夏歌?かい?」


「えっ‼

夏歌を知っているの?」


「心配要らないよ。

私といるから安心おし。」

祖母は落ち着いた口調でしゃべった。



「はーああぁぁ、

良かったー‼」

俺は安心してドスンと崩れ落ちた。



「明日迎えに行くよ。」


「いや、屋敷の者に遅らせるよ。



夏歌は合格だよ。

いい嫁探したじゃないか!

私も楽しみが出来て長生きする

よ。」


「あ、あ、ああ‼

夏歌は・・そのでも

・・・

・・・

バーちゃん・・・ありがとう。」


バーちゃんが夏歌を気にいつたのか?


美波をばーちゃんちに連れて行った

一年前は賛成するでも無くて、

反対するもなく、美波には

興味を持たなかった。


一将がいいなら反対はしない。

とボソッと呟いただけだった。

そして忙しいからと

サッサと農作業に出て行った。



なんかバーちゃん騙してるみたいで

気が引けてきた。


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