第40話 マミさんが淫れる


「ふう……!」


「ナイスプレス!」


 俺は無事、テントを張ること無くベンチプレスを終えた。


 最大のピンチは、20kgでウォームアップをする時だったが、そこから30kgを5回行い、体を慣らして40kgに上げた時から、テントを張るどころではなくなった。


 そして何故か、いつも以上にパワーが出た。


 40kgの1セット目は、なんと10発も上げる事ができたのだ。


 1分のインターバルをおいての2セット目は8発、3セット目は7発であった。


 どっちもナオミさんを透けTバックを拝みながらのプレスであったが、純粋に筋トレに集中できたため、股間がテントを張ることはなかった。


「なんだかすごく調子が良いです!」


「そうだね! 全身の精力が『上半身……』に集中しているよ!」


「は、はうっ!」


 上半身と口にする時、ナオミさんは何とも言えずに残念そうな顔をした。


 前回は『下半身』にも集中してしまっていたことは、やはりお見通しのようだ。


 俺は、改めて顔を火照らせてしまう。


 ナオミさんは俺の大胸筋をタッチしつつ。


「ふふふ……いい感じに胸がパンプしているじゃないか……」


「は、はい……」


「でも、こっちはパンプしてないんだなー?」


「はううっ!?」


 と言って、なんと俺の股間をタッチしてきた!


「ご、ごごご、ごめんなさい!」


 慌てて飛び退きながら謝る。


 やっぱり、前回のモッコリのことを覚えていたんだ!


「謝っても許さないぞ! 私の補助を受けても股間をモッコリさせないなんて!」


「えっ?」


「そんなの、乳首拷問の刑だ!」


「は、はうう!?」


 そっちの意味でか!


 わ、わざと俺をモッコリさせようと……!


 そしてナオミさんは、両手で俺の乳首をグリグリしてきた!


「は、はああん!」


「サキュバスを前にして股間をモッコリさせないんなて酷いじゃないか! ほれほれー!」


「や、やめてー!」


 俺は慌てて後ろに下がるが、身体能力で及ばないこともあり、あっという間に壁際に追い詰められてしまう。


「このこのー! 遊子ちゃんがいなかったら私が食っちまっているところだー!」


「ひいいいー!」


 ナオミさんまで淫魔の戯言を!


 そこにマミさんが現れ。


「ちょっとちょっと、ナオミさん! 何を羨ましいことをしているの?」


「えへへ、だってこんなに美味しそうな坊やが手つかずの状態なんだぜ……そりゃあ手も出ちまうって」


「だめですよ! 彼は遊子ちゃんのものなんだから……」


「はいはーい」


 マミさんに逆セクハラ行為を咎められたナオミさんは、そのまま悪戯な表情を浮かべながら去っていった。


「あぶなかったわね♡」


「あ、ありがとうございます……」


「早く遊子ちゃんの期待に答えてあげないと、大変なことになるわよ?」


「えっ……?」


 あいつが俺に、一体何を期待しているんですかね。


 こんな陰キャでボッチな童貞野郎に……。


「その様子だと、彼女のことを信じていないのね?」


「実は淫魔だってことですか?」


「うんそう。遊子ちゃんはね、もうずっとハルキ君しか食べていないのよ? 最近はハルキくんを育てるために、食べるのを我慢しているんだけど、そのせいで一時的に栄養失調になっているの」


 な、なに……。


 マミさんまで同じようなことを言うのか。


「だから出来るだけ沢山食べて、いっぱい鍛えて体力をつけて、お腹いっぱい遊子ちゃんに食べさせてあげてね?」


「お、俺を食べさせるんですか……?」


 そんな、一体俺のどこを食べさせればよいのだ。


 というか、俺は食べ物ではない……!


「今まで何度も、夢の中で食べられてるはずよ?」


「そ、それは……!」


 俺が遊子のエッチな夢を見ることさえマミさんは知っているのか。


 従姉妹同士な上に女同士なのだが、殆どのことは知っているのかもな……。


 も、もしかしらたパンツのことも……。


「じゃあ、これからも夢の中に出てきて食べれば良いんじゃ……」


 俺はひとまず、マミさんに話を合わせてみる。


 どうしていちいち、淫魔のふりをするのかはわからないけど、マミさんはふざけてそういうことを言う人じゃないと思うのだ。


 何か深い意味があるのだろう。


「前にも言ったかもだけど、淫魔が一人前になるためには、見初めた男を1人、直食いしなければいけないの」


「直食いですか?」


「そうよ、直食いよ。もっとストレートに言うのなら『エッチする♡』っていうことよ? ハルキくんは、遊子ちゃんとエッチしたくないのかしら?」


「え……!」


 そ、それは……したいに決まっている。


 だが、そんなこと恥ずかしくて言えるわけがない!


「あ、あわわわ……どうしたんすかマミさん、いきなりそんな……。あいつとはただの幼馴染なんです……」


「ハルキ君!」


「……えっ!」


――ガタン!


 俺はマミさんに肩を捕まれ、壁際に押し付けられた。


 どういういわけかマミさんは、とても怒っているようだった。


「本当にこのままだと、遊子ちゃんは他の男を食べちゃうわよ!? そうしたらハルキ君は、完全にただの『エサ』でしかなくなってしまうのよ!?」


「え、ええ……!?」


 遊子が他の男を食べる……? 性的に食ってしまうということか!?


 いやでも……なんでそれで俺がエサに……。


「今日トレーニングして気づかなかった? いつも以上に力が出たんじゃない?」


「ええ、まあ……」


「それは遊子ちゃんが、あなたを食べるのを我慢しているからよ? 物心着いた時からハルキ君はずっと遊子ちゃんに精を食べられてきたの。それで貴方は、人の何倍も精力が鍛えられて、すでに精力絶倫の男の子になっているの!」


「は、はいい!?」


 そ、そんなの初耳だ!


 言われてみれば確かに……夢精の量が多すぎる気はしていたが。


 だが、そんな……絶倫だなんて!


「そんな危険な男の子を放っておけるわけがないでしょう? 私達は遠からず、ハルキ君を処分するという目的で、貴方の精力を根こそぎ食い尽くして殺してしまうでしょう。それが私たち淫魔族の、人間界に対する、最低限のエチケットなのだから……」


「あわわわ……」


 わからないよマミさん!


 マミさんが何を言っているのか、俺にはわからないよ!


「ど、どうすれば良いんですか?」


 だから、結論だけ教えて下さい!


「簡単なことよ。今から家に帰ったら、すぐに遊子ちゃんにこう言ってあげて。『おまえとエッチしまくりたいから、頑張って体を鍛えるよ♡』って」


「……!?」


 そ、そんなこっ恥ずかしいことが言えるかー!


「それだけで、あの子の自尊心は回復するわ! あのままだと彼女、本当にフラフラと夜の街に繰り出してしまう……。だからいいわね? 絶対に言ってあげてね?」


「は、はい……」


 だが、あまりに真剣なマミさんの視線に押されて、俺はそう答えざるを得なかったのだった。


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