第33話 食材の旬が淫れる
「白子かー、あるかなー?」
「…………」
遊子が白子を食いたいというので、モモヤに来てはみたのだが、どうやら白子というのは『冬の食材』らしい。
それらしきものは全く売っていなかった。
「シクシク……別にいいんだよハルキ、無理して探さなくても……」
「……なんで泣いているんだよ?」
食べたいんじゃなかったのか……俺の(調理した)白子を!
「まだわからないぞっ! ここって結構、マニアックな食材も売ってたりするからなっ! あっ、あのおばちゃんに聞いてみよう!」
この間、シャウトエッセンを売りつけてきたおばちゃんだ!
ちょうど今、魚売り場の商品陳列にやってきた。
あの人なら、なにか良いものを知っているかもしれない!
「すみませーん!」
「あらー、いつもの若夫婦さんじゃないー、今夜もお楽しみなのー?」
「えっ、ええ……まあ」
白子料理を楽しむんですが……。
このおばちゃんは、そんなにドラ◯エのネタが好きなんだろうか?
だが俺は、そんなおばちゃんの精神攻撃をものともせず、果敢に切り込んでいく!
「その……季節外れかもなんですけど、『白子』ってどこかにないです?」
「あらまー! あるのよー? ちょうど今、並べようとしていたのー!」
「えっ! 本当ですか!?」
言われて俺は、おばちゃんが押している台車に目を向けた。
するとそこには、プリッとした丸い形をした白子の入ったパックが、3パックだけだが乗っかっていたのだ!
「これはゴマフグの白子よー? たまーに夏場に流通する珍味なの。お兄さん、運が良かったわねー。今夜はフグの白子でお楽しみできるわー」
「は、はい! 良かったな! 遊子!」
「う、うん……」
「若い2人が白子でお楽しみとか、すてきねぇー、うふふふー」
「はっ!」
慌てて周囲に目を向けると……。
――まあっ! あの2人、白子でお楽しみなの?
――あんな若い子達が……。
――いいわねぇー。
案の定! おばちゃんの営業トークにつられて奥様方が集まってきたー!
毎度のパターン!
「ひ、1パック頂きます!」
「まいどさーん」
値段は結構なものだったが、俺は1パックだけ白子のパックをひっつかむと、そのままレジへと直行した。
* * *
(遊子視点)
「よしっ! やるぞ!」
「う、うん……本当にここまで来たね……」
白子のパックを前に、私の家のキッチンで意気込むハルキ。
白子という言葉の意味を、完膚なきまでに勘違いしている。
そして、私のことを拒食症だと思いこんで、全力で治そうとしてくれている。
それ自体はまあ……嬉しいんだけど。
「こうゆうのはな……ヨーチューブかクックパッパを見れば……ほらあった!」
ご丁寧に、ネットで調理法まで調べてくれているし。
もうこうなったら、なるに任せるしかないのだろう。
どのみち、当分はハルキの精はお預けなのだし……。
「まずは、シンプルにオーブンで塩焼きにしてみよう!」
「アルミホイルならここにあるよ?」
まずは丸ごと一つ、アルミホイルの上に乗っけて塩をふる。
塩はもちろん、ハカッタのシオである。
ゴマフグの白子は丸くてぷっくりしていて、本当にハルキの白子のように可愛らしい。
別の意味での食欲も励起する食材だ。
「これをオーブンにいれて……10分くらいでいいかな?」
加減がわからないので、ちょくちょく様子を見ながら焼くとする。
500グラムで2000円くらいしたみたいだし、大事にしなければ……。
同じ白子には違いないので、食べた分だけハルキの精力になるはずだ。
「もう一品は、定番のたちポンだな……まずは塩で揉む!」
ボウルの中に白子を入れて、塩を多めにふって揉む。
粘り気が出てくるので、その都度、水で洗い流しながら何度か揉む。
その間に、お湯を沸かしておく。
ああ、私もハルキの白子揉みたいなぁ……。
「念のために、少し長めに火を通すか……」
「そうだね……生ものだもんね」
ハルキのだったら生でもイケるんだけどねっ♡
魚に関しては、プロのように鮮度を見極められるわけではないから、火はしっかり通しておくに越したことはないだろう。
白子を入れて、再度お湯が沸騰してきてから、さらに1分ほど火を通した。
それから氷水に入れて冷やす。
「おおっ、それでも結構ぷにぷにしている!」
「ほんとに?」
卵みたいに固まるのかと思ったけど、そうでもないんだ。
私も触らせてもらう。
確かに、子供の頃のハルキの白子と同じくらいの柔らかさであった。
一緒にお風呂に入った時に、引っ張ったりしていたのだよ。
「あとは一口サイズに切って……と」
ああ、可愛そうな白子ちゃん。
塩で揉まれて茹でられ冷やされ、ついには美味しそうな形にカットされてしまいました。
最後に紅葉おろしまで添えられて、ポン酢の入った器を用意して完成である。
男の人的には、これってどうなんだろうね?
肝が冷えたりしないのかな……。
「よ、よし……じゃあ、食べてみるか……」
「う、うん……!」
だがまあ、白子は白子だ。
私たちにとってはご馳走でしかない。
ハルキが作ってくれたのだと思うと、さらに美味しそうに感じられてくる。
これは本当に……精の代用になるかもしれないな……。
「じゃあ……早速……」
右手にお箸、左手にポン酢の入った器を持って、そろそろと白子に箸を伸ばす。
――こういうの、ママも好きそうだな。
と、思ったのがフラグだったのだろうか?
不意に廊下の方から、しゃなりしゃなりと色っぽい足音が聞こえてきた。
「あらぁ♡ 何か良い匂いがするわね……」
「あ、ママ!」
「遊子のお母さん!」
「まぁ……♡ こんな時間に2人でお料理?」
時間的には3時のおやつ時なのだが、ママ的には、今は一体何時なんだろうな。
ママはいつものスケスケのネグリジェを着て、豊満な胸の谷間と、艶めかしい生足を誇らしげにさらしていた。
淫れた髪の毛もそのままで、娘の私から見ても、エロスの化身そのものだ。
「お、おじゃましています!」
こころなしか、ハルキが緊張しているし……。
「うふふふ、ハルキ君……ちょっと見ない間に、美味しそうになったわね♡」
「えっ?」
「……はっ!」
そんなハルキに、ママは妖艶な視線を送る。
私はお箸を持ったまま、警戒レベルを引き上げた。
ハルキの中の『男』が、ママに引き寄せられていくのを感じたのだ。
まさかとは思うけどお母さん……。
それは私の『贄』なんだからねっ!?
食べたらダメだよ!?
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ちょっとあとがき。
いつも応援ボタンありがとうございます!
淫魔に白子を食わせるという、特殊性癖にも程がある展開です(゚A゚;)
正直、読者の方々がついてこられるか心配しながら書いてます(汗)
それでも出来るだけ面白おかしく書いていけるよう頑張りますので、今後ともよろしくお願い申し上げますm(_ _)m
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