前世の勇者(女)と魔王(男)が転生して、勇者が男になり、魔王が女になって出会うところから始まる物語です。
前世の記憶が蘇った勇士(転生した勇者。今は男)は、麻央(転生した魔王。今は女)が何か企んでいないか、いつ悪さをしでかすのではないかと色々疑ってきます。
しかし、その思い込みから始まった関係が、前世では不倶戴天の敵だった二人をある一つの活動を共にする仲へと繋げていきます。
それも、それぞれ違う思惑と想いを抱いたまま……。
そしてその話の流れで見せる、勇士の思い込みの激しい部分や、先走る行動、そして若干周りが見えていないという、いかにも勇者らしい(?)部分と、意外にも素直すぎる麻央の態度がいいアンサンブルとなって話を盛り上げてくれます。
また設定と同様に、話の端々に潜んでいる笑いを取るギミックと、特徴的な人物間の組み合わせは、物語全体のクオリティを高めています。
そして主人公である勇士の心理描写が丁寧に、だけども決してルーズになることなく読みやすい筆致で書かれており、それが読む側にとっても彼(前世は女でしたけど)に感情移入しやすく、また彼の多少突っ走る言動にも納得感を与えてくれます。
それだけではなく、ネタバレにならないために詳細は伏せますが、その勇士と麻央が一緒にやることになる活動の中で、推理要素や裏をかくような反転、思わぬ展開が盛りたくさんですので、ただのラブコメとしてだけではなく、色んな部分を楽しみながら飽きずに読み進めることができる物語だと思います。