小学生がやって来た!
今日は地元の小学生が部活の見学に来る日だ。私達は小学生の相手をすることになった。
隣でジョーが大あくびをした。
「はあー、かったりいなあ。なんで俺がガキの相手なんか……」
「ちょっと、ちゃんとやってよ?間違っても小学生をビビらせたり……」
「分かってるよ」
ジョーはまた大あくびをした。
金ケ崎がそれを軽く睨む。
「ジョー、小学生の見学期間は大事なんだ。ここで生物に興味を持ってもらわないと、新入部員0で廃部ということも……」
「だから!分かってるってのうるせえなあ!」
すると、廊下からヒッっと言う声が聞こえてきた。見ると、小2くらいの女の子が驚いて縮こまっている。
「あ、すまねえ、見学か?」
ジョーが普段とは一変、優しい声で言った。そういえば、子供にだけは優しいんだった。
女の子がコクリと頷くと、ジョーはおいで、と中へ招き入れた。
「なあお前、動物好きか?」
「うん」
「何が好きだ?」
「セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ」
「お、おう、昆虫だな……なあ、寺峰を呼んできてくれ」
「今日はいないぞ」
「そうか……」
ジョーはボリボリと頭をかいた。目線で何かを訴えてくるが、残念、私もセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシを知らない。
「ねえ、お兄ちゃんは何が好きなの?」
「俺は、両生類……カエルとかイモリとかかなあ」
「へえ!なんで好きなの?」
「そりゃあやっぱり、皮膚呼吸とか、肋骨がない腹の解剖とか……」
「カイボー?」
「解剖ってのは。皮膚を剥がしたり筋肉と骨を分けたり、もちろん内臓も……」
「ジョー、ストップだ」
金ケ崎がストップをかける。女の子は今にも泣き出しそうだった。
ジョーが慌てる。
「か、解剖もするけどな、いつもはこの怖いねーちゃん達と遊んでんだ」
「怖いは余計!」
「どんなことしてるの……?」
「居眠りしてる顔に落書きしたり」
「あんたが犯人だったの!?」
私はおでこに「チャーシューメン」と書かれたときのことを思い出した。あのあと後輩たちにめちゃめちゃ笑われたのだ。
「冷蔵庫の冷やし中華食ったり」
「ジョーだったのか……」
金ケ崎から怒りのオーラが立ち上る。
そもそも、学校に冷やし中華を持ってきちゃいけません。
「壁一面を中国国旗で埋めたり」
「なんつーことしてんだ!ていうか、中華好きだねえ!?」
私たちの怒りをよそに女の子はニコニコ笑顔になっていた。
「そうなんだ!楽しそうだね!」
「よかったら入部してきてくれ」
「うん」
女の子が手を振って教室を出て行った。
ジョーは手を振ってそれを見送る。
平和な空気が流れたのもつかの間。
「ジョー……覚悟は出来てるね……?」
このあとどうなったのかは、ご想像におまかせします。
とある倶楽部の活動日誌 ビビビ @1227rin
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