恐怖のテスト前〜ジョー、永田、寺峰の場合〜

 私は学校でテスト勉強をしたあと、我が家、『ハツラツ食堂』に帰宅した。ハツラツ食堂は主に和食を提供している定食屋で、懐かしの味とお手頃価格で、地元民憩いの場である。

 いつものことながら、扉を開けるといい匂いが胃袋を刺激した。


「ただいまー」


「おかえりなさい。お友達が来てるわよ」


「友達?」


 私が首を傾げると、死角になっている席から声がした。


「おーい、こっちこっち」


 声のする方へ行くと、ジョーと永田がノートを広げて座っていた。


「二人ともいらっしゃい。何してるの?」


「見ての通り、テスト勉強。急で悪いけどさ、答えなくしたから、わかんねーところ教えてくんね?」


「いいよ。どの問題?」


「和訳:He baked a cake with his sister.」


 なるほど。答えは『彼は妹とケーキを焼いた』だ。ジョーの答は……


『彼は妹ケーキに化けた』


「なんでやねん」


 え、bakeをローマ字読みして化け?しかも妹ケーキって妹の肉片入ってる感じ?どういう状況?


「次は:Joe is as ugly as flog. 」


 答は『ジョーはカエルと同じくらい醜い』なんじゃこりゃ。ジョーの答は……


『ジョーはすっげえかっこいい』


「ちょっとジョー!ちゃんと訳しなさい!」


「仕方ねーだろ!英文が間違ってたんだから!」


「どこから来るんだその自信は!?」


 ジョーと一通り騒いだ後、私は隣で永田が死にかけているのに気づいた。


「永田、大丈夫?」


「……無理、死ぬ……」


 掠れた声で永田が答えた。


「あれ、永田ってそんなに勉強苦手だったっけ?」


「いや、コイツさっきまでテストの存在忘れてたんだよ」


「何か……忘れてると思ったら……」


「嘘でしょ?」


 永田が抜けてるのは前々から知っていたが、これはヤバい。


「今何やってるの?」


「漢字……」


「ちょっと見せて」


『次の語を漢字で書きなさい

 1、水平トウシャ   当社

 2、アンモクの了解   安目

 3、政治家のオショクジケン   お食事券

 4、バジトウフウ   マジ豆腐』


「うわ、全部間違ってる。ってか、マジ豆腐って何?」


「さっき冷奴食べた……美味しかった……」


「お粗末様」


 しかし、みんなヤバすぎる。このままだと赤点だ。赤点だと補習にかかって、その間の生き物の世話は私のところに……

 私が頭を抱えていると、カランカランと、お客さんが入ってくる音がした。


「あれえ、みんな集まってどうしたの?」


 入ってきたのは寺峰だった。


「寺峰ー、聞いてくれよ、永田がさっきまでテストの存在忘れててさー」


「てす……と……?」


 寺峰の顔から表情が消える。そしてそれは絶望へと変わるーー


「ちょっと、まさか」


「何か忘れてると思ったら……」


 一同、絶句。ヤバいよ、このままじゃみんな赤点だよ。

 かくなる上は……


「みんな、上がって」


「え?」


「私が勉強教えるから!うち上がって!赤点回避!」


 急遽、我が家では勉強合宿が行われることになったとさ、めでたしめでた……くねえ!





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