第十七話 誰よりも何よりも
アルベルトの両手で頬を包まれる。長身の恋人が身を屈め、口づけの角度で
「そんなに近くに来られたら、話せない」
押し返す。跳ねのける。サリオンは、あらゆる拒絶を封じられ、伏し目になる。アルベルトの濃艶な香油に
「綺麗だ。サリオン」
くり返される甘美な囁き。熱い息。親指で頬を撫でられる。涙の
「ゆるい巻き毛の金髪も、挑むような碧の眼も、薔薇色の頬も、ふっくらとした唇も……」
告げられながら唇で、髪を、目蓋を、頬を順になぞられる。
そうなのだ。アルベルトにはレナよりも、他の誰より綺麗だなどと言われたい。
「サリオン」
切なげに名前を呼ばれて、目と目が合わさる。
「愛して良かった」
「俺もだ。アルベルト……」
ここにいるのは皇帝ではなく、
音もない。
声もない。
言葉を失い、顔を近づけ、口づける。
アルベルトの絹のトガにくるみ込まれたサリオンは、恋人の肩に手を掛ける。
彼をこのまま、この身の中まで沈めたい。
サリオンは、恋人の首に回した腕でかき寄せた。
「……サリオン……!」
と、極めたように
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