お見舞い
・サイレントウイルス消息から3週間経過。犠牲者は15日間連続0人を記録
・飲食店本日より多数営業再開
・大物My tuber消息不明 神隠しが関連しているのか?
・海外開発ロケット試作型完了まであとわずか
・インターネット会社「フリーダムロード」にて極秘開発をしていたサイレントワクチンの配布を決定
一人の女性はベットに横たわりテレビでニュースを見ていた。
そのニュースの記事は1か月前までは絶対に見ることのできなかった記事が並んでおり、女性はこの世界に再び平和が訪れたかのような気分を改めて実感することができた。
ピッ
テレビを消し女性は自分一人しかいない個別の病室で独り言をつぶやく。
女性は何気なしに自分の病室を見渡す。自分の娘が持ってきてくれた花や、絵、そして着替えや千羽鶴ならぬ百羽鶴が壁にはかけられてあり、自分がこの病室に越してきたときとはまるで別空間の様な光景が3年という月日を重ねてそこに広がっていた。
「・・・・・」
今度は女性は窓の方に目を向ける。
そこにはまさに快晴と呼ぶのにふさわしい青空と太陽が空に浮いてあり日光が自分のベッドを照らしていた。
そんな光景を見ていると女性は入院する前の日常を思い出す。
「お母さーん、お布団取り込んでもいい?」
「あ、うん。ありがとうお願い」
自分の娘が日光に照らされたお布団をお手伝いからか取り込もうとしている光景が脳裏に蘇ってくる
「よっと・・・うわ!」
娘のその声が聞こえて慌てて振り向く。
娘は布団を持ったまま体制を崩して今にも倒れそうな状態だった
「あ、この・・・!!」
そう女性が言おうとした時
バッ
自分の息子が妹である自分の娘を横から支えてくれた光景が目に写った。
「あ・・・ありがとうお兄ちゃん」
「無理するな、俺がやるからお前は家にいろ」
大きくなった息子がその自分の妹を助けたことに女性は心から感動をしていた。
「・・・・・・」
昔の記憶を思い出しながら女性は首にかけられている息子からもらったお守りを手に取り見つめる。
自分の娘とおそろいのお守りは昔と変わらず手作り仕様で今でもその息子の温かみが残っているようだった。
「戒・・・・お母さん達・・・ずっと待ってるからね」
そう女性はお守りに語り掛けた。
「時野 舞さん?」
自分の病室のドアから看護婦の声が聞こえて舞はとっさにそのドアの方に目を向ける
「はい」
舞はドア越しに看護婦に返事をした
「娘さんとそのご友人様がお見舞いに来られました」
「(ご友人・・・あ、灯ちゃんか)どうぞ」
そう舞が答えると病室のドアが開かれた
ガラガラガラ
開かれたドアから看護婦と二人の女子が病室に入ってくる
「お母さん、来たよ」
「お久しぶりです、おばさん」
木葉と灯は笑顔で舞に挨拶をする
「来てくれてありがとう木葉、灯ちゃん」
舞は微笑みながら二人に返答をした。
「へーそれじゃあ、もう来週には退院ができるんですか?」
灯はお見舞いに持ってきたリンゴを剥きながら舞に質問をする
「ええ、医院長先生がもう大丈夫って。ごめんね今まで散々迷惑や心配かけちゃって」
舞は申し訳なさそうに木葉と灯に謝罪をした
「そんな、謝らないでください、私達おばさんには感謝しているんです。ね、木葉?」
灯は木葉に視線を向ける
「感謝?」
舞も娘である木葉の方を見る
「うん。だってお母さんが入院してからお母さんのありがたみがやっと理解できたような気がするからさ」
木葉は舞に笑顔でそう答える。
「木葉・・・灯ちゃん・・・」
舞は二人を見て心の中で涙を流した
「で、お母さん」
木葉は舞に声をかける
「退院したらさ、お父さんたちのお墓参り行こうって思ってるんだけど、どうかな?」
「お墓参り?」
舞は木葉の提案を復唱した。
「あれ?あんたまだおばさんにお墓参りのこと言ってなかったの?」
灯はりんごを剥け終わると木葉に問う。
「うん。ちょっと忘れちゃって」
木葉は照れ笑いをしながら、灯に返答する。
「墓参りね・・・いいわね行きましょ。」
「ほんと!?やったー、じゃあ私と灯ちゃんと風君と優君とお母さんと・・・」
木葉は自分の指を折りながら人数の確認をする。
「はいはい、人数合わせはまた後にして。時間がかかりそうだから」
灯はそう言うと木葉の手を下げたさせた。
「相変わらずね二人とも」
舞は二人のやり取りを見てクスりと笑い口を開く
「え?」
木葉と灯は同時に舞に聞き返す。
「いやね、二人を見ると、あの田舎の風景を思い出すの。」
舞は窓越しに空を見つめる
「あの時はほんとに楽しかったわ、木葉や灯ちゃんたちが公園で夕方まで遊んでそのままうちに来てご飯を食べて、また木葉と一緒にお部屋で遊んで、そしていつものように灯ちゃんたちのお母さんが迎えに来て・・・」
舞は思い出話を語りながら微笑む
「そして・・・」
「ん?」
舞は急に顔を下に向け思いつめるような顔になり、二人はその舞の様子をうかがった
(その後に、戒が部活から帰ってきて・・・)
舞は心の中で戒が家に帰ってくる光景を思い出す
「お母さん?」
「おばさん?」
「あ、ごめんなさいね、なんでもないから」
木葉と灯が自分の安否を心配すると舞は笑顔で二人に返す。
「そうですか・・・まあ、何はともあれおばさんが無事退院できるんだったら私もうれしいです」
灯はそう言うとカットしたリンゴを皿にのせて舞と木葉に渡す
「これ、私からの前祝です。結構高いリンゴですよ?」
木葉は笑顔で舞に教える。
「あらそうなの?ごめんなさいね私みたいなおばさんのためにわざわざ」
「いえ、いいんです今日私もおばさんに見舞いに行くために持ってきたんですから」
灯の説明に木葉も賛同する
「そうそう、駅で灯ちゃんと会ってね、リンゴ持ってるから弓道にでも行くのかって聞いたら。《そんなわけないでしょ・・・お見舞いよあんたのおばさんの》って言われて」
木葉は笑いながら灯の物まねをしつつ舞に説明をした。
「ああ、そう。・・・ってかリンゴ持っていても弓道にはならないでしょ・・・」
舞は冷たい目線で木葉を見つめる
「あんたの天然っぷりはこのリンゴ以上ね・・・」
灯も同様だった
木葉は二人から呆れた顔をされつつ、リンゴが入った皿とフォークを持つ
「・・えー・・・いただきまーす!!」
木葉は何事もなかったかのようにリンゴをかじる
舞は少し微笑み木葉と同様にリンゴを食べる。
「おいしい!」
木葉は笑顔で灯に伝える
「ほんと!?」
灯も木葉の感想に笑顔で問う
「ええ、本当においしいわ。灯ちゃんってセンスあるわね」
舞の絶賛の言葉に灯は照れながら後頭部を触る
「うん、確かに!甘くてとてもおいしいよ、灯ちゃん!!」
「え?」
「・・・・え?」
木葉の感想に二人は木葉に目線を向ける
「うん?何?私の顔になにかついてる?」
木葉はフォークを皿に置き鮎立で自分の顔を触る
「木葉・・・あんた今なんて言った?」
灯は真剣な表情で木葉に問う
「なんてって・・・私の顔に何か」
「その前」
木葉は謎の緊張感に包まれながら先ほどの自分の言葉を思い出す
「えっと・・・甘くてとてもおいしいよだっけ?」
木葉は不思議ながらそう灯に返す
「甘いって・・・これ甘くないやつよ?」
「え?」
灯の説明に木葉は驚きの表情を見せる
「灯ちゃんの言う通り、これ甘くなくて酸味が強い高価なリンゴだと思うけど・・・」
舞も木葉にそう問いかける。
3人にしばらくの間沈黙が訪れた。
「・・・・あー確かに言われてみたらそんなに甘くないかも、ってか全然甘くない、すっごい酸っぱいこのリンゴ、でもすっごいおいしい!!」
木葉は前言撤回をすると笑顔で灯に伝えた。
「ああ、そう・・・」
「うん・・・おいしいわねこのリンゴ・・・」
そう二人が言い、再び沈黙が流れた後舞は灯に語り掛ける
「あのさ、灯ちゃん悪いんだけど、自販機で飲み物買ってきてくれないかな?」
「え?飲み物ですか?」
灯は驚いたような表情で舞を見つめる
「うん、ちょっとりんご食べたら喉乾いちゃって」
舞はカバンから財布を取り出し千円札を灯に渡す。
灯は不思議そうに千円札を受け取る
「私は紅茶、灯ちゃんは好きなもの買ってきていいから、あんたは?」
舞は木葉の方に顔を向ける
「・・・えっと、オレンジジュース・・・ていうか私も一緒に灯ちゃんと・・・」
木葉がそう言い椅子から立ち上がろうとした時
パシィ
舞は木葉の腕を掴んだ
「え?お母さん?」
「じゃあお願いね灯ちゃん」
舞は木葉の視線を灯に向け笑顔でお願いをした
「はい、わかりました・・・行ってきます」
灯が病室のドアから外に出ると木葉は、その閉められたドアを見つめていた。
「・・・木葉」
突如後ろから聞こえてきた舞の真剣な声を聞き、驚きながらも木葉は恐る恐る舞の方に振り向く
そこには先ほどの声と全く同じように真剣な表情でこちらを見つめる母親の姿があった
「えっと・・・お母さん、どうしたの?」
木葉がそう言うと、舞は木葉が持っているりんごを一口かじり、しばらくするとリンゴを皿に戻し木葉の目を見つめる
「木葉・・・」
木葉はつばを飲み込む
「あなた・・・何があったの?」
ピンポーン、ピンポーン
コートを着た男は木葉の住む学生寮に入り木葉の部屋のインターホンを鳴らす。しかし木葉は灯と一緒に母親の見舞いに行っているため当然出るわけがない。
「・・・・・・・」
男はドアを見つめると、諦めて右を向き階段を下りていく。
その学生寮の外では趣味のジョギングを終えた風哉が自分の部屋に戻っていことしていた。
「ふぅ、まあ今日は大体これぐらい・・・あ」
風哉は学生寮の入り口から出ていくコートの男を見つける。
「あの男、もしかして昨日安藤たちが言っていた木葉の・・・」
風哉は意を決してそのコートの男に呼びかけをする。
「あのーすいません!」
コートの男はその風哉の方を振り向く。
「ちょっと聞きたいことがあるんですけど」
風哉はそう言いながらコートの男に近づいていく
バッ!
「あ!」
その途端先ほどまで歩いていたコートの男が全力疾走で風哉の元から去っていこうとしていた。
「待て!」
風哉は先ほどのジョギングのスピードよりも速い速度でそのコートの男の後を追う。
コートの男は全速力で走っているようだったが、風哉の方が速度は上の様で徐々に距離が縮んでいった。
(よし、これなら追いつける!)
風哉は心の中でガッツポーズをとる。
コートの男は学生寮の先にある角を左に曲がった。
「逃がすか!!」
風哉も男と同じように左へ曲がる
「・・・あれ?」
「風哉君?」
そこにいたのは私服を着ていた優の姿があった。
そして不思議なことに、先ほどまで追いかけていたコートの男は確かに左に曲がったはずだったが、どこにもその姿は見当たらなかった。
「風哉君どうしたの?」
優は必死に辺りを見渡す風哉に問う。
風哉は目線を優に向け呼吸を整えながら質問をした
「あのさ優、今ここにコートを着た男来なかったか?」
「え?コート!?」
優は風哉の発言に驚く
「ああ、多分昨日安藤が言っていたコートの男だと思うんだけど、そいつが俺たちの住んでいる学生寮から出ていくのを見かけてさ。
で、俺が近づいたら慌てて逃げたもんだから追いかけたんだけど・・・姿が消えちまって」
「あ、そうなんだ・・・」
優は風哉の説明に相槌を打つ。
「風哉君は今さっきまでジョギングの途中だったの?」
「え?ああ、そうなんだよ、で一通り走ったから帰ろうとしたら、そのコートの男がいてさ」
「へー、やっぱすごいね風哉君は・・・」
風哉の返答に優は少し落ち込んでいる様子だった。
「優は何やってたんだ?」
風哉は今度は逆に優に質問をする
「え!?僕は・・・ちょっと散歩に・・・」
優は声を小さくしながら返答をした
「ああそうか。・・・あっ、なあ優!」
「はい!?」
風哉の突然の呼びかけに優は驚きながら返事をした
「木葉がどこに行ったか知ってるか?」
風哉の質問に優は返答をする
「木葉ちゃん?さあ、木葉ちゃんなら休みの日はよく灯ちゃんと一緒にいるから今日も灯ちゃんとどこかへ行ってるんじゃないのかな?例えばお見舞いとか・・・」
「そうか・・・」
優の有力な説に風哉は真剣な表情で考察を始める
(あの男、旅行の時に灯が言った奴だったら絶対に木葉に用があるはずだ・・・それに奴は昨日の文化祭にも来ていたみたいだし、一体何を考えているんだ?)
風哉は心の中で必死にコートの男の正体を探る
「えっと・・・風哉君?」
そんな風哉を優は心配そうな表情でうかがう
「優、もしコートの男や木葉を見つけたら俺に報告してくれ、とりあえず俺は部屋に戻って木葉に連絡してみるから」
「え?・・・うん、分かった」
風哉の頼みに優は承諾をした
「じゃあよろしくな優」
そう言うと風哉は学生寮に向かうべく回れ右で角を右に曲がろうとした
「あのさ、風哉君!」
優は角を曲がろうとしている風哉を呼び止める
「ん?なんだ?」
風哉は振り向きながら優に問う
優は少しの沈黙の後口を開き風哉に尋ねた
「・・・・そんなに、木葉ちゃんの事が好きなんだね」
優が微笑みながらそう言うと風哉は優と同じく少し黙って優に返した
「・・・バカ」
そう言うと風哉は角を曲がり姿を消した。
「バカか・・・」
優は顔を上にあげて青空を見つめる
そこにあるのはまさに真っ青な絶景で、太陽の光が建物の壁や地面に反射している様子だった。
その光景をしばらく見つめると優は心の中で決意をする
(僕も今夜からジョギング始めようかな・・・強くなるために)
優はいつもの散歩コースを少し小走りで進んでいった。
「じゃあ本当になんともないの?」
「うん、本当だって、心配しないでよお母さん」
「・・・・・・・・」
灯は病室の外から舞に頼まれて買ってきた紅茶とオレンジジュースと天然水を胸に抱えて二人の会話を聞いていた。
「そう、ならいいけどもし具合が悪くなったらちゃんと病院に行くのよ。なんなら私が看護婦さんに言って・・・」
「いやいいってお母さん!私なら大丈夫だから!」
病室からは木葉の笑顔がこもって明るい声が聞こえ灯はそれを背中越しに聞いていた。
「木葉・・・・あんた・・・」
灯は1週間前の出来事を思い出した。
灯はその日休みだったので木葉とどこかに遊び行こうと思っていたがその木葉が寮にいなかったため家で勉強をしていた。
「うーん、はあ~ちょっと気分転換に外に出ようかな」
ある程度勉強を終えた灯は背伸びをし息抜きがてらに外の空気を吸おうと近くを散歩することにした。
昼間ということもあり人通りが多かったが灯はそんな人ごみが嫌いではなくいつもは通ることのない道に足を踏み入れた。
「へーこんなところに神社あったんだ、あっ猫!かわいい~」
灯は神社の横でうずくまっている猫を発見するとその猫の頭を撫でる
にゃ!
眠っていた猫は突然自分の頭を撫でられた恐怖と驚きからその場からとっさに逃げる
「あ、待って!」
猫好きの灯はその猫を追いかけるように道の奥に進んでいきやがて路地に出た。
その路地の光景も自分が見たことのない光景だったので灯は少し不思議な感覚を味わっていた。
「意外と知らない場所ってある物ね・・・」
灯は独り言をつぶやきながらその道を歩いていく
その時道路を挟んで向かい側の自動ドアから一人の女性が出てきた。
その女性は半袖でも過ごせるような気温にもかかわらず少し厚着の格好をしてマスクをし灯と反対方向を歩いていった。
灯は女性の姿を見て驚く
「え・・・木葉?」
普通の人だとそれが木葉とは到底わからないが保育園のころからずっと一緒にいた幼馴染の灯にとっては、例えどんな格好をしようともそれが木葉だと一目瞭然だった。
「木葉!」
灯は木葉に大声で呼びかけをしたがその木葉と思われる女性はそれに気づかず建物の影に隠れていった。
木葉は慌てて横断歩道を渡り、自分がさっきまでいた道と反対側の道に来た。
そして先ほど木の葉が出てきたと思われる自動ドアの前に足を運ぶ。
「烏山(カラスヤマ)内科?」
その店の看板にはそう書かれてあった。
(もしかして・・・木葉)
次の日
「ねえ木葉」
「うん?何、灯ちゃん?」
灯は5時間目の劇の練習の時間を使い、出番がなくて体育館の床に座り、衣装を着て待機をしている木葉に呼びかけをした。
「あんたさ・・・昨日どこ行ってたの?」
「え?」
木葉は灯の真剣な表情に一瞬驚きつつも笑顔で返答した。
「えっと、昨日は・・・あっちょっと夢菜ちゃんと一緒にお買い物に行っていたの」
「ああ、そう」
「あ、もしかして灯ちゃん昨日私と遊びたかったの?ごめ~んまた今度遊ぼ?」
木葉は灯にそう謝ると灯は立ち上がり体育館の後ろに向かう
「?」
木葉はそんな灯を不思議な顔で見つめつつも、もうすぐ来る自分の出番に備え体育館の袖に向かった
「夢菜」
木葉は体育館の外で先生にばれないようにスマホをいじっている夢と友人たちに声をかけた
「うわびっくりした、何だ灯じゃんどうしたの?もしかして意思ちゃん来た!?」
夢菜と友人たちは焦りながら灯に問う
「あのさ、あんた昨日浜田君と二人っきりでデートだったよね?」
「え?そうだけど・・・どうかしたの?」
「・・・・・・・」
灯は体育館のドアを閉め中に入っていった。
「いらっしゃいませ~」
木葉の声に灯が振り向く
「こちらの服なんておすすめですよ?」
そこには電気の消された体育館の中で唯一照らされているステージに立って、役からかもしくはいつも通りに笑顔で演技をしている木葉の姿があった。
その衣装は灯の目から見ると、少し大きい作りでできているように見えていて灯はボソッっと呟く
「木葉・・・」
灯はその1週間前の出来事を思い出すと不意に嫌な予感が心の中で浮かんだ
(もしかしてあんた、体に何か異常が・・・)
灯がそう思った瞬間
「あれ?城戸じゃねえか」
その声に灯は下げていた顔を声のした方に向ける
そこには病院服を着ていてこちらに体を向けている近藤の姿があった
「近藤君?」
「よっ」
近藤は腕をあげ灯に返事をした
「何で近藤君ここに・・・」
そう灯が口にしたとき昨日の優の言葉を思い出した
(大型トラックに轢かれて全治3か月の怪我を負ったんだって)
「あ、実はさ・・・」
「あ、ごめんやっぱ言わなくていいわ」
灯は近藤の説明を拒否した、拒否された近藤は灯を不思議な目で見つめつつ口を開いた
「ところで、城戸は何してんだよ?こんなところで」
近藤の問いかけに灯は焦る
「ああ・・・えっと私は・・・その」
灯は迷った、盗み見聞きをしてるなんて言えるはずがない。でもだからと言って木葉のお母さんのことを話したらなんだかややこしいことになりそう
「ん?」
灯の沈黙に近藤は疑問を抱く
ピロロロ ピロロロ
その時、灯のポケットに入れていたスマホの着信音が鳴った
灯はラッキーだと思い、その場を去る
「ごめんね近藤君、ちょっと電話きたから」
近藤は不自然な空気を味わいつつも自分の病室に戻った。
「えっと、誰からだろ?」
そう言うと灯は病院の待合室でスマホを開く
風哉より 1件
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