旅行の終わり
灯は洗面台で顔を洗っていた。
冷たい水が灯の顔を覆いそれを灯は何回か繰り返していた。
その後灯は目を閉じたまま手探りでタオルを探し水浸しの顔を拭く。
もうとっくに顔についている水は全てふき取ったが灯は顔からタオルをどけなかった。
「・・・・・・・」
灯はタオルの感触をしばらく顔で受け止めたままその場で突っ立っている。
(お願いだから信じてよ!!・・・灯ちゃん思い出してよ白命郷のこと・・・)
「・・・木葉の目と表情、あの時と同じだったわ・・・」
灯はタオルを顔からどけ自分以外誰もいない洗面台で独り言をつぶやいた。
(本当なの!!トンネルの穴の先に光が見えて、その光がお父さんだったんだよ!!)
灯の脳内でよみがえらせた記憶は幼少期の木葉が先ほどのように自分に必死に訴え、信じてもらうように悲願するものであった。
(嘘じゃないの!!お父さんがいたの!!信じてよお母さん!)
そう必死で説明をしても木葉のお母さんは目を背け座敷の間から出ていく
「・・・・そういえば、戒さんは木葉を信じていたっけ・・・」
灯は今度は木葉の兄である戒の事を思い出す。
(で、父さんはお前になんて言ったんだ?) (なんか、木葉に会いたかったって・・・)
戒の真剣な目は泣いている木葉をしっかりと見つめ木葉も涙を拭きながら戒に説明をしていた。
グッ
その記憶を思い出すと灯は自分の顔を拭いたタオルを握りしめ目の前の鏡を見つめる、自分の目に写ったその顔はとても暗くどこか悲しんでいるような様子に灯の目には見えた
「・・・何やってたんだろ私、木葉の幼馴染なのに・・・」
灯は頭を冷やしたせいか先ほどの木葉に対する暴言を悔い涙を流す。
水で濡らした顔が灯の涙によってまた濡れていく。
「私・・・最低だわ・・・なんで信じてあげなかったんだろ・・・」
そう自分を非難し、灯は洗面台に涙を流す。
「灯ちゃん・・・」
洗面所の外で灯の泣き声を聞いていたおばさんはひっそりと口にした。
ヒタヒタヒタヒタ
灯は思いつめたような顔で廊下を歩き座敷の間を目指していた
「・・・・・謝ろう、心の底から。」
灯が木葉に謝罪をしようと独り言を言い、下に向いていた顔を前に向ける。
曲がり角を曲がった時、灯は玄関でスニーカーを履いている風哉を見つける。
「あ、風哉」
「うん?」
風哉は玄関で座り、スニーカーを履いたまま灯の方に目を向ける。
風哉は先ほどのボロボロの服を着替え今は薄着の長そでを着てその上から半そでのジャケットを身に纏っていた。
「あの・・・木葉は?」
灯は少しの沈黙の後風哉に問う。
「あ、もう大丈夫だから休ませてってさ。だから今から優達と合流して報告に行こうかなと思って。」風哉はスニーカーを履き終えそう言いながら立ち上がる。
「そう・・・・・」
灯はボソッとそう言うと玄関の扉を開けようとする風哉に声をかける
「あのさ、風哉」
「何?」
風哉は扉の取っ手に手をかけた状態で顔だけ灯の方に向ける
「・・・さっきは悪かったわ、私イライラしてて木葉にあんな酷い事言っちゃって」
灯がそう言った後、風哉は灯の悲しげな顔を見てしばらく沈黙をした。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
玄関にいる二人の男女に静寂が訪れた。
「覚えていないんだったらしょうがないよ」
「え?」
その静寂を切り裂くように風哉が口を開いた。
「でもだからと言って俺は木葉が嘘をついてるようには見えない、だから俺は木葉の意見に同意をした、それだけ」
風哉の無表情でのセリフに灯は思わず風哉に言う
「なんで、なんでそこまで木葉にこだわるの!?」
風哉は一瞬びくつき灯を凝視する。
「だってあんたさ、私や優よりも後から木葉に出会ったのにどうしてあの子をそこまで守ることができるの?さっきの格好みたいにさあんなにボロボロになってまで・・・そもそもあんたって一体何者・・・」
灯はそう言いながら顔を上げ風哉の自分をにらんでいる鋭い目つきに黙ってしまった。
「風・・・哉?」
灯はおそるおそる風哉に問う
「・・・・俺はお前とは違うんだよ」風哉は顔を前に向け扉を開く
夜ということもあり少し涼しい風が二人に吹いてきた。
「でもな」
風哉はその吹いてきた風の中でそう口にすると灯に語り掛けた。
「俺もお前も、そしてあいつらも木葉の友達だ。それに変わりはない」
そう言い残すと外に出て扉を閉めた
灯はその閉めた扉をしばらくの間見つめていた。
「・・・そうだよね、風哉も私も友達だもんね。木葉の」
灯は独り言を言うと先ほどの歩きよりもスタスタと座敷の間に向かった。
コンコン
「木葉・・・起きてる?」
灯は座敷の間のドアをノックしながら木葉にそう問いかける。
しかし返事は返って来ない。
コンコン
灯はもう一度ノックをする
「寝ちゃったの?木葉?」
・・・・・返事は返ってこない
「・・・・・・木葉、もし聞こえていたら今から私の言うことを、返事をしなくてもいいから聞いてちょうだい。」
灯はドア越しに木葉にそう問いかけた。
座敷の間では木葉は布団をかぶって横になり目を開けたまま灯の自分への問いかけを聞こうとしていた。
「木葉、こんなバカな私と保育園のころから今まで友達でいてくれてありがとう。・・・・ごめんなさい、私木葉の事信じなくて・・・木葉が嘘を言う子じゃないって私が一番知っていたのに!・・あんな酷いこと言っちゃって!!・・・」
灯は大粒の涙を流しながら顔を下に向ける
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
何度も何度も木葉に謝罪をし灯は地面に崩れ落ちた
ガチャ
「灯ちゃん」
灯は声のした方に目を向ける
座敷の間の扉が開かれてそ、の隙間から自分を心配している表情で顔を出していた。
「こ・・・木葉・・」
灯はそう言葉を漏らす
木葉両膝を地面につき泣いている灯の手を握る
「私の方こそありがとう、こんなバカな私と今日まで友達でいてくれて!!・・・そしてこれからも友達でいようね灯ちゃん!」
木葉は満面の笑みで灯にそう語りかけた。
灯は自分と木葉が幼稚園で初めて会った時の光景を思い出し、泣き、木葉に抱き着いた。
「ねえ、木葉。さっきは本当にごめんなさい・・」
「もういいって、忘れてよ」
木葉と灯は一つの布団に座り背中合わせの状態で会話をしている。
「でも・・・」
「いいって、今考えてみると、おばさんの言う通りあれは夢だったって思うから」
何度も謝罪をしてこようとする灯に木葉はそう伝える。
「え?」
灯は背中越しに疑問を抱いた。
「よくよく考えるとさ死者の世界って行けるわけないし、不死鳥なんて本当にいたら怖いもんね~」と木葉は笑いながら灯に言った。
しかし灯の目には木葉の表情は自分の気を遣って言ってるようにしか見えなかった。
(そうだよね、あれは全部・・・夢、だったんだよね・・・明日音さんも晴太さんも・・・灯ちゃんが私に言ってくれたあの言葉も・・・)
木葉が心の中でそうつぶやいたとき
「木葉」
灯が木葉を呼ぶ声が聞こえた。
「?何灯ちゃん?本当にもういいって」
「お墓参りだっけ?さっきあんたが言っていたの」
灯は木葉に尋ねる。
「お墓?」
木葉は思わず声を漏らす
「さっきさ、おじさんの墓参りに行こうって私が言ったってあんた言っていたでしょ?」
「あ、うん・・・」
木葉は自分の夢だと言ったあの暗い道の記憶を思い出し、灯の言葉を思い出した
「・・・行きましょうか?今度おじさんの墓参りに」
「え?」
木葉は灯の方に顔を向ける
灯は木葉に笑顔を見せた。
「・・・・うん!!じゃあ私が誕生日を迎えたら私と灯ちゃんと風哉君達と、あとお母さんも誘ってみんなで一緒に行こうか!」
「いいけど、何で誕生日の後なの?」
灯は木葉の提案に首をかしげる
「何でって、灯ちゃんが誕生日の後に行こうって」
「は?」
「あ、いやごめん何でもないよ、ほら・・・その・・・来月にはサイレント収まっているかもしれないしさ!」
木葉はとっさに思い付いた理由を灯に告げる。
「・・・そうね、もうすぐで終わるわよねきっと・・・」
灯は天井を見ながらそう言った。
「早く学校に行きたいなー!」
木葉も天井を見つめながら大声で呟く
「あんた授業受けてもほとんど寝てるでしょ」
「えーちゃんと起きてるよ!体育とか」
「それは物理的に寝れないやつだから・・・」
おばさんは座敷の間の外からドアに耳を当て、木葉と灯の仲のいい会話を聞きながら微笑んだ。
翌日...
「みんな忘れ物の無いようにちゃんと確認するのよー」
灯は旅行カバンの中身を一つずつだしながら優たちに言った。
「うん分かってる」「りょ」「なんで、あいつ昨日迷子になったくせに俺たち仕切ってんだよ・・」「仕切りたい年ごろなのさ・・・」
その声に優と夢菜は返事をし、雄二と風哉は小声で灯の愚痴をこぼしていた。
「あれ?木葉は?」夢菜が周りを見渡して木葉がいないのを確認するとそう口に出した。
するとその疑問に風哉が答える。
「木葉なら仏壇の部屋で拝んでるよ」
「あれ?俺のトランクスが1着無いぞ?」
風哉の説明の横で雄二が自身の旅行カバンの中身を見ながらそう言った。
「2階じゃない?あんた昨日2階に荷物置いていたじゃん」
「あ、かもしれねえ、ちょっと見てくる!」
そう言うと雄二は立ち上がり2階に向かった。
「おばさん、今回はありがとうございました。」
優は荷物を全部リュックサックに入れるとおばさん達にお礼を言った。
「いいのよ~そんな改まっちゃって、また遊びに来たかったらいつでも言ってちょうだい?」
「はい、ありがとうございます」
「あ、おばさん!」
灯はおばさんの所に駆け寄る
「あの、おじさんは?最後に別れの挨拶をしておこうと思って」
灯の質問におばさんは答える
「ああ、あの人なら今朝早く村の町内会議に言ったわよ。あの人役員に強制参加させられたから」
と微笑みながら灯に答えた
「そうですか・・・昨日お礼を言えばよかった」
と落ち込んでいる灯におばさんは優しく語り掛ける
「灯ちゃん、これからもいろいろあるかもしれないけど木葉ちゃんの事よろしくね。それとお墓参りおばさん達も連れて行ってね」
「え、おばさんあの会話聞いていたんですか!?」
灯の顔が少し赤面したのを確認すると優は顔をおばさんの方に向ける
「え?会話ってなんですか?」
「えっとね・・・」
おばさんが微笑みながら説明をしようとしている優の腕を引っ張り仏壇の間に行かせる
「おばさん!私たちも拝んで帰ります!!」
「ちょっと、灯ちゃん!?」
それと入れ違いに木葉が廊下を通り夢菜たちのいる居間に戻ってきた。
「あれ灯ちゃんも拝みに行くの?」
「うん、ちょっと最後に拝みたくなっちゃって、ねえ優?」
「え?ああ、うん拝みたくなっちゃって」
優に無理やり同意を求めさせる灯に木葉は問う。
「あ、そういえばさ居間に真紀ちゃんいる?」
木葉の問いに灯は答える
「真紀?もう荷物まとめてスマホ扱ってるけど?」
「あ、そう、わかった」
そういうと木葉は真紀のいる居間に行き、ふすまの前で真紀を呼ぶ
「真紀ちゃーん」
真紀はイヤホンで自分の世界に入っているみたいで木葉の声に返事をしない
「真紀ちゃん?」
「ほら、真紀!木葉が呼んでるよ?」
「ん?何?」
真紀はイヤホンの片方を外し自分の肩を揺さぶった夢菜を不機嫌そうな目で見る
「キャンディー落としてるよ?」
木葉は廊下で拾ったキャンディーを手で持ちながら真紀に言った。
「え?ん・・・」
真紀はポケットにキャンディーが入っていないのを確認すると背中越しで返答をした
「あ、本当だ、私いらないからその飴あげる」
そう言うとイヤホンを耳にし再度動画を見始める
やはり依存症は恐ろしい・・・
「ちょっと真紀!」
夢菜が真紀に注意をしても彼女は無視をする、というか聞こえない
「やったー」
木葉は真紀の許可をもらうとキャンディーを口の中に放り込む。
風哉は口の中でキャンディーを味わってるいつも通りの木葉を微笑みながら見ていた。
「木葉お姉ちゃん!!」
その風哉の横から昭とすずが折り紙の束を持ってきた。
「うん?どうしたの?すずちゃんに昭君?」
「これ」
そういい木葉に折り紙の束を渡した。
「これは・・・」
木葉がそう言うと、風哉はその折り紙を見つめて呟く
「千羽・・・鶴?」
「うん!でも折り紙が足らなくて百羽鶴になっちゃったの。ごめんねお姉ちゃん?」
「これ木葉お姉ちゃんのお母さんに渡して!」
すずと灯は笑顔でそう言った
「すずちゃん・・・昭君・・・」
木葉は感動のあまり泣きそうだった
「ありがとう、君たちは将来いい人になるよ」
そういいながら風哉は二人の頭を撫でる
「んぐ、えっほえっほえっほ!!」
感動のあまりにキャンディーを飲み込んでしまった灯が咽〔むせ〕てしまった
「おい、木葉!?」
「あーもう木葉ちゃん、ちゃんと注意しないから。はい」
おばさんはコップに入った水を渡す
木葉は申し訳なさそうにコップの水を飲む
そしてまた咽てしまう
「お前・・・咽る練習してるのか?」
風哉のつっこみにすずと昭はゲラゲラ笑う
そんな光景をおばさんは微笑みながら見ると心の中でボソッと呟く
(木葉ちゃん、良かったわね、いいお友達が増えて。・・・・姉さんや戒君もきっと喜んでいるわよ)
玄関の扉の前で木葉達とおばさんたちは対面状態で向き合っていた。
「それじゃあおばさん、3日間お世話になりました」
灯がそう言い頭を下げるとほかのみんなも頭を下げた。
「いえいえ、こちらこそいい思い出をどうもありがとう」
「ありがとうございました!!」
おばさんのセリフに昭とすずも笑顔で木葉達に伝える。
「ありがとね、昭君、すずちゃん!あの折り紙絶対にお母さんに渡して元気にしてあげるから!」
木葉は笑顔で二人に言った
「じゃあみんなこの先遠いからちゃんと体調に気を付けて帰るのよ?」
「はい・・・」
夢菜と雄二はここに来るときに通ったあの長い道のりの苦労を思い出しながら苦笑いで返答した
「それと、忘れ物はもう完璧?」
おばさんは先ほどの忘れ物チェックの事を思い出し木葉達に問う
「はい、それなら大丈夫っす!!2階にちゃんと俺のトランクスありましたから!!」
「大声で言いなさんな・・・」
夢菜は雄二の大声の返事に指摘をした。
「・・・・・・・」
その横では真紀はやはりスマホを見ている
もはやスマホから見られているのではないだろうか?
「じゃあおばあちゃん、また来るからね!元気でね!」
木葉は笑顔でおばあちゃんの手を握りそう言った
「はいはい、いつでもおいで。」
「またねーおばあちゃーん!」
「お元気で!」
「サイレントにはくれぐれもご注意を!」
「失礼します」
木葉と灯と優は玄関の外で4人にそう言い風哉は頭を下げ別れを言った
「勉強頑張ってね」
「バイバーイ!!」
おばさんとすずと昭は笑顔でそう言いながら手を振りおばあちゃんはただニコニコの笑顔のまま手を振り続けていた。
少し歩いて家が小さく見えても木葉はおばさん達に手を振り続ける。
それが見えているのかおばさん達も手を振っている様子だった。
「いや~それにしても今回の旅行は濃かったな?」
雄二は両手を頭につけ灯たちに問う。
「・・・悪かったわよ、迷子になって」
灯は恥ずかしそうに雄二に返す
「ってあんたも踊りに夢中で最初ろくに探さなかったじゃない!」
と夢菜が雄二に言うと雄二も夢菜に言った
「お前だって俺と一緒に踊っていたじゃねえか!人のこと言えるか!」
「私はその後必死に探してました~」
「俺はお前のその5倍は必死でした~」
まるで小学生のような口喧嘩をしている二人の注意に優と風哉が動く
「ちょっと二人とも気持ちよく終わりたいから喧嘩はよそうよ」
「こんなところで痴話げんかするな」
その時
「木葉ちゃーーーーーん!!」
自分たちのいる場所の横から男の声が聞こえた
木葉達は横を向く
そこにはタオルを首にかけてもうすっかり田舎の住民のような恰好をしているおじさんがこちらに向かって走ってきていた。
「あ、おじさん」
木葉はおじさんの呼びかけに返答をした
「いや~ごめんね急遽サイレント対策の町内会議に参加してくれって言われてさ、僕強制的に役員にされちゃって」
「あ、それさっきおばさんから聞きました」
優が苦笑いでおじさんに告げる
「ところでみんなはもうお帰りかい?」
おじさんに問いかけに灯は答える
「はい、とても楽しかったですありがとうございました!!」
灯は笑顔でそう言いおじさんに頭を下げる
「そうかい、楽しんでもらえたら何よりだ、また遊びにおいで!・・って僕が胸を張って言えることじゃないか!あはははは」
おじさんの笑いに木葉と灯と優もつられて笑う
「あっ」
笑っているおじさんの視界に風哉が写った、その途端おじさんは笑いをやめ風哉に近づく
「風哉君だったっけ?」
「はい・・・青神風哉です」
風哉は急に自分に近づいてきたおじさんを不思議そうな目で見て名乗る
「かっこいい名前じゃないか、いや~羨ましいな~」
おじさんはそう言うと風哉の肩に左手を乗せてこう言った
「風哉君!!これからも木葉ちゃんの彼氏として木葉ちゃんを頼むよ!!」
「え!?」「かれ・・・し?」
風哉と木葉は徐々に赤面していった。
「ん?どうしたんだい?急に赤くなって」
おじさんは不思議な顔で二人を見つめる
「あ、おじさんこの二人別に付き合ってませんよ?」
灯の説明におじさんは驚く
「えー!?そうなのかい!?いや~祭りの時いかにもカップルぽかったし、木葉ちゃんを誰よりも一生懸命に探していたから絶対に彼氏かと思ったんだけど?」
おじさんはそう言いながら風哉の方を見る
「い、いえ・・・別に木葉とはそういう関係じゃ・・・なあ?」
風哉は木葉の方に目線を向ける
「ふぇ!?え、えええっと・・その・・・あの・・・彼氏というか・・・そのなんていうか・・・まあ確かに大事な人ではあるけど・・・あの」木葉はまるでのぼせたように顔を真っ赤にしながら指を絡め、慌てておじさんに説明をする
「友達ですって言えばいいんだよ!!」
「はい、友達です!!」
「俺に言うな!!」
風哉の指摘に木葉は驚き風哉にそう言ったが、風哉は再度指摘をした
「ははは、なるほど友達ってわけか」
おじさんは微笑み風哉の方を向く
「じゃあ風哉君これからも友達として木葉ちゃんを頼むよ!」
「あ・・・・はい!!木葉は絶対に俺が守ります!!」
風哉はおじさんに大声で宣言をした
「あんたは一言多いのよ!」
今度は灯が風哉に指摘をした。
その後木葉達はおじさんと別れを告げ駅に向かって歩みを進める。
その道中では案の定夢菜と雄二は風哉に笑いながら提案をする。
「なあ、もういっそのこと二人付き合っちゃえば?」
「そうだぜ~俺たちみたいなラブラブカップルになれるぞ~」
風哉の耳には二人の言葉は今自分たちの周りで響いているセミの鳴き声よりもうるさかった
「しつこいぞ・・・浜田、木谷」
なおも雄二たちは風哉をからかう
「まあ~かっこつけちゃって可愛い」
「内心は俺たちの意見に同意なんだろ?時野はどうだ?」
「え?私は~」
木葉は照れながら口にする
「ちょっとあんた達もうやめなさい、風哉と木葉いやがってるじゃない!」
灯は昨晩の記憶の恩返しのつもりで木葉と風哉にフォローをかける。
「何よ灯!しらけるわね~あんたはそんなんだから彼氏ができないのよ?」
夢菜がそう言うと灯は怒りながら夢菜に返す
「今はそんな話関係ないでしょ!!」
「あ、もしかして!?」
雄二は二人の会話に紛れ込む
「城戸も青神の事が好きだったりして~!?」
「え、ちょっとやだ、幼馴染で三角関係!?」
二人のからかいの的は灯に移った
「ば、馬鹿じゃないの!?私は別にそんな・・・」
「あれれ~?じゃあなんで顔が少し赤くなってるんですか~?」
灯は夢菜と雄二のいじりに対抗をする
「だから気持ちよく終わりたいから喧嘩はよそうよ」
優は先ほどの口喧嘩よりもヒートアップした口喧嘩をやめるべく仲裁に入る
その横では真紀は口喧嘩の存在を知らないがごとくスマホでいつも通り動画を見ている。
「木葉」
そんな中風哉は木葉の名前を呼んだ
「?何、風君?」
木葉は一瞬ドキッとして風哉の顔を見る。
「サイレントがなくなったら、また一緒に・・・登校しような」
風哉は照れ隠しをしながら木葉に問いかけをした。
「・・・そうだね、またみんなで一緒に登校しようね!」
木葉は笑顔でそう返し、風哉は無言のまま歩みを進める
7人の男女の話声や笑い声が、静かな田舎の歩道に響いていった
「ただいま~」
おじさんはそういいながら玄関の扉を開ける
「パパ、お帰りなさい」
すずと昭は笑顔でおじさんをお出迎えする
「ああ、ただいま」
そういいながら二人の頭を撫で靴を脱ぎ家に上がる
「さっきさ、木葉ちゃんたちにあったよ」
「あらほんと?ちゃんとお別れ言ったの?」
おばさんはテーブルを拭きながら問いかける。
「当たり前だろ。あ、そうそう俺間違えてさ木葉ちゃんと風哉君付き合っているかと思って、風哉君に木葉ちゃんをこれからもよろしく頼むよって大声で言っちゃってさ!!」
おじさんは笑いながらそう言うとおばさんも微笑みおじさんに返す
「もう、あなたったら。仮に付き合っていたとしても灯ちゃんたちの前でそんなこと言うもんじゃないでしょ。
あ、すずちゃーん!ちょっと座敷の間においてあるお盆とってきてー!!」
「わかったー!」
おばさんはすずにお願いをするとすずは急いで座敷の間に入りお盆を探す。
「あ、あった」
すずはテーブルの上に置いてあるお盆を見つけるとそのお盆を両手で持ち上げる
「ん?」
その時すずの視界にある物が映った
大窓のふちに小さい透明のビニールに入った赤い球のようなものがそこには落ちてあった。
「あ、キャンディーだ。ラッキー」
すずはそう言うとビニールを開けその赤い球を口に放り込む。
口の中でイチゴ味のキャンディーを味わいつつ、すずはお盆を持ったままおばさんのいる台所へ向かって行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます