トラウマ
(・・・・・ん?、眩しい・・・それに誰かが私を呼んでいる・・・)
木葉は目を開けた
「っは!木葉!目が覚めたの!?」
「良かった~木葉ちゃんも目が覚めて」
「ったく心配したんだぞ二人とも!」
「でも気が付いて何よりだわ」
そこには夢菜や優達が自分の周りを囲むように座っていて木葉はおばさんの家の布団に横になっていた。
右を見ると灯はすでに目を覚ましていて体を起こしていた。
「・・・・頭痛い。」灯はそう呟いていた。
「あれ?私一体何をして・・・」木葉はそう口にしたがすぐに先ほどの事を思い出した。
(そうだ、私と灯ちゃんは白命郷に行って、明日音さんや流之介様にあってその後光の所に入ってそれから・・・)
木葉はその後の記憶を思い出せなかった、自分と灯が手を繋いで光の中に足を入れた後気が付くとこの布団の中にいた。
「お前たちな、太鼓の台の下で倒れていたんだぜ。なあ?」雄二は夢菜にそう問いかける。
「そうそう、布をめくったらあんた達二人並んで眠っていて声かけても揺さぶっても無反応だからとりあえずおぶってここまで連れてきたの。」夢菜は木葉と灯にこの事情を説明した。
「・・・え?太鼓の台の下?」木葉はぼんやりしながらも夢菜に問う。
「うん、マジで焦ったわよ熱中症かと思ったもん今日なんかジメジメするから。でもこうやって二人を見つけることができたのも黒峰君のおかげだわ。ねー?」そう言いながら夢菜は優のほうに目を向ける。
「あ、いや。僕は何となくそんな気がしただけだから。」優は照れながら口にした。
灯は頭を抑えながら優に「優が見つけてくれたの?」と言った。
「そうだよ、ほら前にもあったじゃん。木葉ちゃんが迷子になった時」優が説明を始めたとき真紀は立ち上がり座敷の間から出た。
「あの時もさ木葉ちゃん太鼓の台の下の中で眠っていたからもしかしてと思って確認したんだ。でもまさか灯ちゃんも一緒だとは思わなかったよ」と苦笑いで優は説明を終えた。
「そう。助かったわ優」と灯はお礼を言った。
「はい、どうぞ」灯が優に感謝を述べた後おばさんは灯と木葉にコップに入った1杯の水を渡した。
木葉と灯はその水を受け取るとおばさんは二人に問いかけた。
「で、二人とも何があったの?風哉君から聞いた話によると木葉ちゃんも灯ちゃんも祭りの最中に急にいなくなったって聞いたけど」おばさんは心配そうな顔で二人の方を見る。
「あ、それが・・・」「ところでその風哉は?」灯は木葉のセリフに重なるように発言すると周りを見渡す。
そこには夢菜、雄二、優、おばさん、昭、すずの6人がいたが風哉の姿は見当たらなかった。
「本当だ、いない」と木葉が口にし「それに、さっきまでいた真紀も・・・」と灯が口にしようとした時。
「青神君連れてきたよ」と真紀の声がドアの前から聞こえてきた。
全員その真紀の声が聞こえたドアの方に目を向ける。
ドアが開かれボロボロの状態の風哉が真紀の後ろについてきて座敷に入ってきた。
「風君?」「風哉・・・」木葉と灯はそのボロボロの格好の風哉を見て言葉を失う。
顔は泥だらけで、服は所々破け、半そでの肘は擦りむけ絆創膏で既に手当て済みの様子だった。
風哉は深刻な顔のまま座り木葉の方に顔を向ける。
すると風哉は涙目で口を開く。
「木葉・・・すまない、俺のせいだ・・・俺が・・・お前を見失ったから!・・・」そういうと下を向き涙を流す。
「え、ちょっとどうしたのよ?風哉」という灯に雄二は代弁する。
「あ、こいつな時野が居なくなったのを自分のせいだと思いこんで、めちゃくちゃ必死に探していたんだよ。で、優が見つけた後もな目を覚まさない時野達を自分のせいだと言い放って外で一人にしてくれって言って聞かなくてさ、いやもう参ったよ。」
「あの後そんなことが・・・」そう独り言を言った灯の横で木葉は涙を流している風哉を見つめる。
風哉はすまない木葉と何度も何度も涙を流しながら謝罪をしていた。
そんな風哉を見つめて木葉は木々の中での記憶を思い出す。
(毎日のように虐待があったんだよ・・・親父からもお袋からも・・・)
(その先生が言ってくれたんだ《君が守りたい人を守ってあげなさい》って)
そして木葉は自分が風哉に言ったことも思い出した。
(ありがとう風君、全部話してくれて)
木葉は木々での出来事を思い出した後体を風哉の方に向け口を開く。
「風君、こっち向いて」
風哉は言われた通りに顔を上げ木葉の方を見る。
「めっ」そう言い木葉は風哉の鼻に指をあてる。
灯を含む他のみんなは唖然の表情をとった。
少しの沈黙のあと木葉は風哉に伝える。
「今度からはもう私の事を見失わないでね、私、風君のそばにいたいから」
木葉は笑顔でそう言った。
「もちろんみんなのそばにもね」
そして振り向き夢菜たちの方にもそう言った。
「なによ//それ」「僕も・・・そう思うよ」「よく言った時野。おい青神、お前王子なんだからもう姫を見失うなよ」「さすが木葉ちゃん!」夢菜たちは木葉にそう言うと灯も微笑み心の中で呟く
(やっぱすごいわね木葉って、みんなが友達になるのなんとなくわかるわ)
おばさんもその光景を見て微笑んだ後木葉に再度問う。
「で、木葉ちゃんお話戻して悪いんだけど。祭りの時に何があったの?」
木葉はおばさんの真剣な質問に笑顔をやめる。
「あ、それなんだけど・・・」
木葉の言葉にみんなは耳を傾ける。
「実はね私、あの後木々の中にいる人影に手招きされたの。でその手招きする人影を追いかけて行ってそこで灯ちゃんに出会ったの、ねえ灯ちゃん?」
「うん、それでそのあと謎のコートの男の人が現れて・・・」
木葉から灯の説明に移った時雄二が口を開く
「コート?こんなに暑いのに?」
「ちょっと雄二うるさい」
そんな雄二を夢菜は黙らせる。
「で、その後木葉はそのコートの男の人に付いていって私が木葉を追いかけに行ったら、洞窟が見ええてきたの。」
灯の説明に今度は優が口を開いた
「洞窟?あそこにそんなものあったっけ?」
灯は優の独り言が聞こえても夢菜たちに事情をつたえる
「そして洞窟に入っていったら確か・・・そう光が見えたの2つ。最初の光は無視をしたんだけど
2つ目の光はそのコートの男が出現させたものなの。」
「出現?そのトリック動画で使えるかも・・・」
そう呟いた真紀を夢菜はにらみ真紀は慌てて目線をそらす。
「その後は、そのコートの男が私たちを出現させた光の中に落として・・・・それで・・・」
木葉は自分と灯が白命郷に来るまでの過程を灯から聞き、灯に変わって自分たちに起きた出来事を話し始めた。
「で、ここからが本題なんだけど私たちね不思議な世界に迷い込んだの!」
「不思議な世界?」
木葉の言動に夢菜たちは聞き返す。
「そこはね、白命郷とかいうところで死んだ人たちが仲良く暮らす場所だったの。そこでわたs」
「まてまてまてまて」話の途中だったが雄二が木葉の説明を中断させた
「時野、俺たち夢の話を聞きたいわけじゃないんだ」
飽きれたような顔をしている雄二に木葉は真剣な表情で否定をする。
「嘘じゃないよ!!本当だよ!!ねえ、灯ちゃん!?」
木葉は灯に助けを求めようとした
「・・・・・何の事?」
灯は無表情でそう口にした。
木葉はその言葉を聞き固まる。
「・・・な、何の事って、さっきの街の事だよ!?ほら、明日音さんとか幻霊館とか!!灯ちゃん私と一緒に不死鳥見たじゃん!」
「不死鳥って・・・いるわけないでしょそんなもの。」灯はあっさりと言葉を返す。
「?誰?明日音さんって?」優がそう灯に問いかけるも灯は「知らないわよ、誰その人?」と木葉に逆に問いかける。
「誰って・・・そんな・・・」木葉は落ち込みながらそう言葉にした。
そんな中夢菜は二人に問う。
「で、そのコートの男の人結局何者だったの?」
「それが、わからないのよね。手品師かしら?」
そう答えた灯に木葉は必死の表情で語り掛ける。
「手品師なんかじゃないよ!灯ちゃん龍之介さんのお兄さんって言ってくれたじゃん!!」
「それも誰よ一体?。私今頭痛いんだからあんまり訳の分からないこと言わないでちょうだい」
木葉の必死な訴えも今の灯の前では無意味だった。
木葉は少し考え頭を抑えている灯に問いかけをした
「・・・ねえ灯ちゃん。」「ん?何?」頭痛からか少しイライラしている灯は声を多少荒げて返事をした。
「今度、私のお父さんのお墓参りに行こうって言ったの覚えてる?・・・」
「・・・・・そんな約束したっけ?」
木葉の真剣な問いかけの答えは期待を崩すものだった。
「やっぱり・・・」
木葉はボソッと口にすると顔を下に向け暗い表情になる。
そんな木葉を灯は呆れた目、夢菜たちは不思議そうな目で見ていた。
「・・・何これ?」「さあ」夢菜と雄二は小声で会話をする。
そんな思い空気を換えようとおばさんが明るい口調で言葉にした。
「・・・・まあでもすごいわ木葉ちゃん!!そんなファンタジックな夢を見るなんて、やっぱり想像力は子供の時から衰えていないんだね!」
おばさんは笑顔でそう言ったが今の木葉にはその慰めと笑顔が一番の苦痛だった。
「ち、違うのおばさん!夢じゃないの、本当に見たの!」
木葉は必死な表情でみんなに伝える。
「みんな信じて!私と灯ちゃんは本当に死者の世界に行ったの嘘なんかじゃないの!」
「じゃあ何でお前生きてんだよ?」
雄二は必死に説明をしている木葉に冷静な問いかけをする。
「そ、それは・・・」
木葉は答えられなかった。
「まあ、何はともあれ二人が無事で何よりだわ」夢菜が笑顔でそういい木葉の話を終了させようとした。
「そうだね・・・元気そうで良かったよ」と優も夢菜に助け舟を渡す。
自分の友人達が自分の話を信じてくれないことに木葉は焦り幼少期のトラウマを思い出した。
それは自分が生まれる前に亡くなっているはずの自分の父親に会ったという話から始まる。
ぼんやりとしててあまり覚えてはいないがその父親は笑顔で自分を抱きしめ幼い自分にグレープキャンディーをくれた、木葉のグレープキャンディー好きは亡くなった父親から来たものだ。しかし、その後の記憶はあいまいで気が付いたら家の布団で眠っており目が覚めると自分の母親と兄、そして灯たちが自分の安否に喜んでくれていた光景だった。そうまさに今のような状態だ。
その後母親に父親と会ったことを伝えたが母親はそれを信用はしなかった、何度も何度もしつこく父親のことを話しているうちに母親は激怒し父親のことを話さないよう木葉に怒鳴った。
あの時の母親の怒りと悲しみに満ちた表情が今の木葉にはトラウマそのものであった。
それ以降、木葉は人から信用されない話や嘘話はしないと心に誓い18歳になろうとしている今でもそれを貫き通している。だが本当の話を信用されないのは木葉にとって最も残酷なものである、真実を伝えるのが他人にとっては害になり、それによって自分自身が他人から嫌われ、あの母親の様な目を向けられる。
(嫌だ・・・嫌だよ、助けてお兄ちゃん・・・)木葉は心の中で兄である戒に助けを求めた。
母親に激怒され放心状態の木葉を戒は優しく抱きしめ木葉に言った。
「木葉、安心しろ。お兄ちゃんはお前を信じる」
その言葉で木葉は立ち直りこの事がきっかけで木葉にとっての兄の存在はとても大きいものになっていた、しかしその兄は自分と母親の元から去り、唯一の心の支えである灯を含む友人たちからは嘘つきのような扱いを受けている。
(灯ちゃんたちには嫌われたくない・・・灯ちゃんたちに嫌われたら・・・私は!・・・)
木葉は涙を流しみんなに再度訴えかける。
「みんな、信じて!!本当に私は死者の世界に行ったの、灯ちゃんはそれを忘れているだけなの!!」
木葉の目は真剣そのものであったがそれを見ている夢菜たちには伝わりはしなかった。
木葉にはあの出来事を夢という浅はかなもので終わらせたくはなかったのだ。
なぜなら先ほどの白命郷の世界からこの世界に戻るまでの黒い道に生じた光に歩んでいた時に、灯が言ったセリフ
(・・・・・・これからもよろしくね)
単純なものではあったが、あの時の灯の笑顔とこれからも自分の友人でいてくれるという証の言葉に木葉は心の底から感動をしていたからだ。
それだけではなく白命郷で見ず知らずの自分や灯を優しく、暖かく迎えてくれた明日音や流之介を含む白命郷の住人の事を自分の夢の中の物語で片付けるにはあまりにも悲しすぎるからだ。
木葉は先ほどの出来事を現実であるように自分にも言い聞かせるべく訴えを続ける。
「お願いだから信じてよ!!・・・・灯ちゃん思い出してよ白命郷の事・・・」
木葉は涙目で自分と同じく白命郷に迷い込んだ灯に悲願の目で思い出すよう訴えかける。
しかし、その木葉の悲痛な願いは届かず、今の灯にとっては耳障りそのものだった。
「頭痛いからやめてって言ってるでしょ!!少しは大人になりなさい!!」
灯の怒号に木葉は母親のトラウマを思い出す。
(やめなさいって言ってるでしょ!!お父さんの話は・・・しないで・・・お願いだから・・・)
「あっ・・・」
木葉は声にならない声を出し先ほどよりも顔を下に向ける。
だが、灯はそんな木葉に向かってなおも怒りをぶつける。
「大体からあんたがあの変な男についていったからこんなことになっちゃったのよ!!せっかく私が空気を読んであの場を去ったっていうのに・・・ちょっとあんた聞いてんの!?」
「おい、よせ城戸!・・・」
灯の怒りを静めるべく雄二が灯を抑える。
その後ろでは昭とすずも悲しげな表情を浮かべていた。
小刻みに震え涙をぽたぽたと布団に落とす木葉を優は心配そうな表情で問いかける。
「木葉ちゃん・・・・大丈夫?」
優は今まで見たことのない木葉の状態に恐怖すら感じていた。
しかし、その優の言葉は今の木葉には入ってこない
木葉の脳内は過去のトラウマによって支配され、それにより身震いをしているのがその証拠だ。
(私、嘘つきで、みんなに嫌われる・・・嫌だ嫌だ嫌だ・・・)
木葉の精神は崩壊寸前だった。
「俺は信じるよ」
そう口にしたのは風哉だった。
木葉をはじめ他の全員が風哉に目を向ける。
風哉の顔は真剣な表情であった。
「え、ほんと・・・風君?・・・」
木葉はか細い声で風哉に問う
「ああ、だってお前昔から嘘つかないじゃん」
風哉は笑顔でそう答えた。
その笑顔を見た瞬間木葉は兄が自分を信じてくれると言ってくれた過去を思い出した。
バッ
木葉は風哉に抱き着いた。
「えっ」という風哉のセリフとともに二人は畳の上に倒れる。
「ちょっ木葉?」風哉の言葉は木葉には届いていたが、風哉に抱き着いたまま木葉は涙を流す
「うっうっうっうっ・・・」木々の中での出来事と今の出来事は真逆そのものであった、風哉の着ている服が、今度は木葉の涙によって濡らされていく。
「あら~」「木葉ちゃん・・・」「マジかよ」「見ちゃいけません」
その光景を見て夢菜は口を押え、優と雄二は驚き、真紀は昭とすずの目を隠す。
おばさんは少し微笑み立ち上がると何も言わず座敷の間から出て行った。夢菜たちもそれに続き外へ出ていく。
座敷の間に残されたのは木葉に抱き着かれて倒れている風哉と灯だけとなった。
灯はしばらくの間その二人を見つめると思いつめた表情で立ち上がり座敷の間を出て行った。
二人きりになったところで風哉は泣いている木葉を慰める。
「大変だったんだなお前も」
「うっうっうっうっ・・・」
風哉はそう言いながら木葉の頭を撫でた。
「いや~いいね~青春ぽくって」
夢菜は夜空を見ながらそう口を開いた。
「急になんだ?」
雄二は川に石を投げ込み問いかける
「なんだって、今の私たち物凄く青春を堪能してるって感じしない!?幼馴染の男女に空気を読んで外に出てそんな私たちは人気のない川で二人だけの時間を作ってあげる。」
夢菜は両手を握り体をくねくねしながらそう雄二たちに説明をする。
「ドラマの見過ぎだろ・・・なあ優?」雄二は後ろの石段に腰を掛けている優に問いかけた。
「え?・・・・ああ、うんそうだね・・・」
何かを考えているような優の横ではすずと昭に真紀がスマホの動画を見せていた。
「どうした?難しい顔して」水切りをやめた雄二は優の方に近づいてきた
「いや、その・・・さっきの木葉ちゃんの話・・」
そう優の言葉が聞こえ雄二は笑いながら返答した。
「そんなの夢に決まっているだろ。洞窟の光の先が死者の世界って、ラノベかっての」
「でも・・・一緒なんだ前と・・・」
「は?一緒?」
雄二のセリフに夢菜も気づき近づいてくる。
「ほら昨日のご飯の時にさ木葉ちゃん前の鷁霊祭で迷子になったっていう話あったよね。」
優の始めた説明に夢菜は頷く。
「うん知ってる知ってる、でその後木葉のお母さんやお兄さんやあんたたちが一生懸命探して見つかったってやつでしょ」
「てか今回のだって前回と同じ場所にいたからお前見つけられたんだろ?」
優は自分の話を聞いてくれている雄二たちに説明を続ける。
「そうなんだけどさ、その時も木葉ちゃん必死に話していたんだ。【お父さんに会った】って」
優の放った言葉に二人は不思議な顔をする。
「お父さん?でも木葉のお父さんはもう昔に・・・」
「うん、だから夢でも見たんじゃないかっておばさんは、あ、木葉ちゃんのお母さんね、そう木葉ちゃんに言ったんだけど木葉ちゃんはさっきと同じように嘘じゃない本当に会ったんだ、お父さんにキャンディーをもらったんだって」
雄二は優に問いかける。
「で、その後お父さんどうしたんだ?」
優は少し間を置き雄二に答える
「その後は、木葉ちゃんよく覚えていないみたいだったんだけど。確か・・・お父さんの前に知らない男の人が現れて、その男の人に光に向かって走れって言われたとか・・・」
「光?さっきの時野が言ってた洞窟の光の事か?」
優は頷き再度口を開く
「多分・・・で、その光に入っていったら、目が覚めて布団の中にいたって」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
雄二と夢菜は優の説明を聞き終えるとしばらくの間無言でいた。
「・・・くだらね、それも夢だったんだよじゃあ」
「でも!」
雄二の放った発言に優は口を開く。
「だとすると木葉ちゃんはどうやって今回も太鼓の台の下に入れたんだろ?灯ちゃんも」
「え?」
夢菜は疑問を持った。
「だってさおかしくない?前の祭りの時もおばさんや戒さん、僕たちや他の大人の人たちも協力してあっちこっち探していたんだよ?勿論太鼓の周りも誰一人離れることなく。
それに話によると今回のだって太鼓の近くにいた人達は木葉ちゃんと灯ちゃんがその台の下に入っていくのを誰も見てないって言っていたし、まずそんなことをする理由がわからないよ・・・」
「確かに・・・」
夢菜は優の説明に同意をする。
「じゃあ時野たちは一体どうやって?」
その横で雄二たちはそう口にし疑問を述べた。
「だから、僕も風哉君と同じく木葉ちゃんを信じるよ!木葉ちゃんはおそらく今回も不思議な世界に行ってそこから何かしらの方法で台の所にその世界から戻ってきたんだ」
優の発言に夢菜は質問をした。
「じゃあ何で灯はそれを覚えてないの?一緒に行ったって木葉は言っていたけど?」
「そ、それは・・・」
優の先ほどの勢いは弱まり落ち込んだように地面を見つめ3人は沈黙をする。
河川敷では真紀の動画の音声しか流れていなかった。
「あーもう!!よく分かんねえけどとりあえずよかったじゃねえか、時野と城戸が無事に戻ってこれて」
「そうよ、信じる信じないは置いといて二人が無事でよかったじゃない?黒峰君」
優は顔を上げ二人の笑顔を見つめる
「・・・そうだね、せっかく二人が戻ってきたのに暗い顔をしてちゃいけないよね」
優は笑顔でそう言うと立ち上がり川に向かって走り出す
「よーし僕も青春をエンジョイするぞー!!」
そう言いながら地面に落ちている石を拾い川の方に投げた。
優の投げた石は見事に優の手から滑り落ちて元にあった地面に落ちた。
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