死者の秘密
「灯ちゃん!見て見て赤い髪の毛のウナギが泳いでるよ!!」
木葉ははしゃぎながら川の中を指さした。
灯は目を向ける、確かにウナギのように長くて赤い模様が川の中を泳いでいたがそれはウナギではなくリュウグウノツカイだった。
「すごーいきれい!」木葉はリュウグウノツカイをウナギだと信じ興奮している状態だったが、灯はなんて言えばいいのかわからなかった。
自分たちのいる世界ではリュウグウノツカイが発見されれば瞬く間に報道されテレビや新聞やネットニュースにもたたき出されるだろうが、今の灯は以外にも冷静だった。
「・・・・そうね・・きれいなウナギね」灯はめんどくさいので木葉に合わせた。
というかなんで川の中に・・・そもそもここは川の上なのか?
「へーじゃあお二人さんは生者の世界からおいでなすったんですかい?」自分たちの乗っている木製の船をこぎならがハチマキをまいたおじさんが灯たちに尋ねてきた。
「ええ、まあ・・・」灯は死者との話は苦手の様で目線をずらしながら返答した。
「それで私たちは主様にお会いすべく今幻霊館へ向かっているんです」明日音がおじさんに事の成り行きを詳しく話すとおじさんは驚く
「主様にですかい!?はえ~いきなりこの街の原点へ足を運ぶとは、お嬢さん方お目が高いですな~」おじさんは笑いながら二人を見る
「ねえ、さっきも言われたけどお目が高いってどういう意味?」木葉が灯に質問をする。
「・・・・・さあ?」灯は再度面倒なので適当にあしらった
おじさんは灯たちの方から明日音の方に目線を戻し口を開いた。
「ところでお嬢さん、その着物は・・・光兩寺(こうりょうじ)にお勤めの方ですか?」
「はい、そうです」明日音はおじさんの質問に回答をした。
「やはりそうでしたか!これはこれはいつもお世話になっております」「いえいえとんでもございません」船乗りのおじさんはお辞儀をし明日音も同じくお辞儀をする。
「光兩寺?」「さっき私たちがここに来た時にいたあの御屋敷の事ですか?」木葉と灯が明日音に問う
「おっしゃる通りです、私はあそこに勤めているものなのです」明日音は笑顔で木葉達にそう言った
「勤めてるってことは・・・お坊さんですか?でも髪の毛が・・・」木葉の疑問に灯がつっこむ
「それは言うなら巫女さんでしょ」灯は木葉の天然パワーに訂正を入れる
「巫女ってほどではないのですが私たちはあそこのお寺でこの街の人々にあるものを送っているのです」
「あるもの?」明日音の回答に二人は口をそろえて聞き返す。
「霊力です」明日音は二人にそう伝える。
「・・・・霊力?」二人はまたしても口をそろえ聞き返す。
明日音は二人に話を始める
「この街の人々がすでに亡くなっている者と先ほど説明したかと思いますが。実はこの街で暮らしていくにはその霊力というものが必要不可欠なのです」明日音の真剣な表情と口調に二人は黙って聞き入る。
「霊力というのは死者の力。つまり・・・動力源です」
明日音は説明を続ける。
「私たちの仕事はその霊力を管理して光兩寺に来られた方や霊力が尽きようとしている方々に霊力を授けるというものなのです」
木葉はその説明を聞き口を開いた
「霊力ってどうやって作るんですか?」
明日音は手を合わせる拝み始めた
「・・・・・・?」二人は困惑する
しばらく拝み続けると明日音は目を開け説明をする
「こうやって生者の世界でお墓やお寺で拝む方ががいるとその方の慈悲が神通力となりこの世界へ舞い降りてくるのです。」明日音は笑顔でそういうと木葉は納得の顔をした。
「え?じゃあ私たちが親戚のお墓参りやお正月のお彼岸に足を運ぶとその行為があなたたちの霊力に変わるって言いたいわけ?」灯の疑問に明日音は「さようでございます」とあっさり即答した。
まさかそんなからくりが・・・灯がそう思っていても明日音の説明は止まらない。
「昔は全ての霊力は、今から向かおうとしている幻霊館に舞い降りてきていたのですが、何しろ参拝者や街の住人の人々の数が多くなってしまったため。寺を創造しそこに霊力を集めるようにしたのです。」
明日音は苦笑いとともにそういった。
「霊力を集めているのはその光兩寺とかいうところだけなの?」
灯は再度質問をする
「いえ、あそこだけではございません。全部で4つございます。」明日音は指を4本だし一つ一つ説明を始める
「まず一つは先ほどお伝えした光兩寺。もう一つは幻霊館のお近くにある卿藍寺(きょうらんじ)。そしてもう一つはこことは反対方向にある宋明寺(そうめいじ)。最後は・・・」明日音が最後の指を見せ説明しようとしたところで急に止まった」
「・・・どうしたんですか?」木葉は明日音に聞く
明日音は最後の指を折り何かを思い出したかのような顔をすると笑顔に変え木葉達に伝えた。
「・・・・あはははは、すいません最後の寺は潰れたんでした。」
「潰れた?」木葉の問いに明日音は答える
「はい、霊力をため込みすぎて寺が崩れてしまったのです」明日音は笑いながらそう言うと木葉も笑いながら納得した。
しかし、灯は笑えなかった
「ところで、その霊力とかいうものがなくなると一体どうなるわけ?」灯は真剣な表情で明日音にうかがった。
明日音は笑顔から思いつめるような顔に変わり灯にこう言った
「・・・・・・・消えてしまいます・・・」
「消える!?」
灯と木葉はまたしても同時に声を発した。
「ええ、霊力というのは私たちがこの街で暮らしていくためだけのものではなく、あくまでも大元にすぎません。死したるものはその霊力によりこの街で少しの間暮らしそこから天国か地獄へ行きそこから生まれ変わりをなすのです・・・」
明日音の真剣な返答に二人はつばを飲み込む
「霊力が尽きるというのは、もう死者でもなんでもなくなるという意味です。霊力がなくなり次第この肉体は消滅し天国や地獄にも行けず、ただ消えていくのみです・・・」
明日音はそういいながら下に顔を向け死者の仕組みを二人に教えた。
「・・・・・・・・」二人は何も言えなかった。まさかこの街にそんな事情があったなんて・・・
木葉は驚き。灯はただの死人だと憶測していた明日音達に申し訳ない感情を張り巡らさせていた。
しばらくうつむいていた明日音は笑顔で顔を上げ二人の方を見る。
「・・・・すいません。なんか暗い話をしてしまい、まあ消滅する方なんてそんな滅多にいませんから安心してください!」明日音の笑顔はどこかもの悲しいそうにも見えた。
「あ、見えましたよお嬢さん方!あそこが主様の館に続く道でっせい!」船乗りのおじさんはそういうと指を指し沖の方に目線を向けさせる
そこにはこの木製の船と同じく何台もの船が並ばれておりおじさんと同じハチマキをした男の人が手を振っていた。
「ではお二人方、参りましょうか、主様の所へ」明日音は木葉達にそう笑顔で言うと
木葉と灯はまたまたしても同時に同じ返事をした
「はいっ!・・・」
川の中ではリュウグウノツカイがひらひらと泳いでいる。
「すいません、この絹2つください」
「最近霊力使いすぎちゃってさー」「大変だな寺行くか?」
「この前俺ね・・・」
なんていう会話が弾む街を3人はまるでその住人かのように通り過ぎていく。まあ3人のうち1人は住人だが。
しかし見れば見るほどこの街は幻想そのものだった
祭りでもないのに狐や鬼の面をして人を喜ばさているもの、和傘職人やガラス細工の歩き売りの男の人や、小屋の上で追いかけっこをしている子供たちの姿がその街をより盛り上げ木葉達を歓迎しているようにも見えた。
「おや、明日音さんではありませんか?こんにちわ」「ごきげんよう」
「明日音お姉ちゃんいらっしゃい」「お元気そうで何よりです」
明日音はその道を歩く人々とあいさつを交わしながら木葉達の誘導を続けていた。
やはり、寺の人は人気があるのか・・・・というかこの人は本当はめちゃくちゃ地位が上の人なのでは!?と灯が考察した刹那。木葉が明日音にとある質問をする。
「明日音さん、さっきから気になっていたんですけど、ここって食べ物屋さんないですよね?」
木葉は周りを見渡しながら明日音に問う。
その言葉で灯も周りも見渡す。
確かに、こんなに広い街なのに今の所食べ物を販売している店や茶屋などは1軒も見当たらない。
一つぐらいあってもいいものだと思うが・・・
灯が木葉と同意見になった際に明日音が背中越しで説明をした。
「この街に食べ物を販売しているところはございません。しいて言うなら私たちが食べ物屋です」明日音の回答に二人は疑問を持つ。
「え?霊力って食べ物なの?」灯の言葉に明日音は続ける
「まあ、違うとは言えません。食べ物で霊力を補充することも可能なので」
「霊力の補充ってどうやるんですか?」木葉の問いに明日音は立ち止まり振り向く。
「こう・・・やるんです」明日音は木葉の指に自分の指を絡めてまるで恋人つなぎのような体制をとる。
「えっ!」木葉は赤面し、灯は驚く
明日音はそんな二人を見て微笑み説明をする。
「自分の中に霊力を一度ため込み、こうやって相手の体の一部分を触り念じて霊力を体内へ送るのです。」そういうと明日音は木葉との恋人つなぎをやめ説明を続ける。
「・・・じゃあ霊力を高める食べ物ってどんなのがあるんですか?」
明日音は戸惑いながらも質問をしてきた木葉に答えるように自分の着物から巾着を取り出し二人に見せる。
「それは?」灯は明日音に質問すると明日音は回答した
「お米です」
「お米?」
巾着の紐をほどくとその中にあったのは正真正銘の白い米粒だった。
「え?米だけを食べるの?」灯は不思議そうに回答したがその予想は外れる
「いえ、お米だけとは限りません。おはぎとかお団子とか果物とか・・・あ、あと大福も!私好きなんですよね大福!」明日音は嬉しそうに説明するも二人は苦笑い状態だった
「それって・・・もしかして・・・お供え物?」「ご名答です」明日音は二人の回答に正確を教えた。
「あ、そう・・・」灯はなんだかよくわからない感情のまま相槌を打つ。
「でも、お供え物は主に貧しい人や霊力が尽きようとしている人に配布されるので私たち寺の職員は主にお米しか食べません」明日音は誤解を解くように二人に伝える。
「配布って、それもあんたたちの仕事?」「もちろん、参拝者の方にお渡しをします」
「でも、お米ばかり食べてると飽きませんか?味気ないのに」灯の後の木葉の質問に明日音は再び笑顔になる
「問題ありません。私たちには味覚がありませんから」
「味覚が・・・ない!?」明日音の発言に二人は耳を疑う。
「じゃ、じゃあこの街の人々はみーーんな味覚がないってこと?」「はい」
灯の質問にまたしてもあっさり返してしまう。
死ぬと味覚がなくなるなんて、あっちの世界では今のうちにおいしいもの沢山食べとこ・・・!
灯がそう決心している間にも木葉は明日音に尋ねる
「でも、さっき大福が好きって言ってませんでしたか?」木葉の問いかけに「ああ、大福は触感が好きなのですよ、あのもちもちとした触感がたまりません!」と明日音は単純に返す。
「えーーーーでもほとんど主食が米だけだなんて、かわいそう・・・」木葉は悲しい表情にり、それを見た明日音は木葉を笑顔にすべく口を開く
「だ、大丈夫ですよ私お米も好きですから!あ、そうだ私こういうものも持っているんです!」そう言うと明日音は着物の袖から別のきんちゃく袋を取り出した。
紐を開けると中にはまるでおはじきのようなカラフルの飴玉があった
「あ、飴玉じゃん」灯のセリフに明日音は語る
「たまに気分転換でこういうのを食べたりもします。よろしければお二人もどうぞ」
そういうと明日音は二人にそれぞれ別の飴玉を手に渡した。
「・・・これ食べても平気なの・・・?」灯がおそるおそる尋ねる
「問題ありませんそれは生者の世界の飴玉ですから」
木葉は赤い飴玉を見つめながら不満そうにつぶやく
「どうせなら、グレープ味が良かった・・・」
「贅沢言うんじゃないの木葉、昨日食べたばかりじゃない。」
「だってグレープは・・・」
「あー知ってる知ってる!思い出の味って言いたいんでしょ」
二人はそんなやり取りをしながら飴玉の包み紙を開ける。
「じゃあいただきます」「召し上がれ」
木葉と灯は口に飴玉を放り込む
「・・・・・あまり味はしないですね」木葉は明日音にそう言うと
「まあ、世界にはいろいろな飴玉がありますからそういうのもあるでしょう。私たちは味覚がないのでそれで充分ですが」と笑顔で返した。
「・・・・・そうかな?・・・」灯は口の中でミカン味の飴玉を味わいつつ疑問を抱いた。
二人は飴玉をなめながら明日音に誘導され道を歩く。
「あ、あの人!」「こらやめなさい!・・・」
「おい、あれ・・・」「マジかよ・・・」
などと幻霊館に続く道を進んでいくと先ほどよりも自分たちを驚きのまなざしで見つめるものが増えてきた。
「そんなに生きている人が珍しいんですか?」もうすでに飴をなめ終えた木葉が明日音に聞く
「・・・そうですね、生者が来られるのはほんと何年に一人か二人ぐらいですから・・・」と思い出しながら答える明日音に今度は灯が尋ねる。
「何年って、あなたいくつなの?見た目は私たちと大差ないように見えるけど・・・」
「17です」明日音は灯の予想に的中する答えを出した。
「へー17歳なんですか?私と一緒ですね!今年17歳ですか?それとも・・・」
「今年【も】です」
「・・・んっ、どういう意味?今年もって?」灯は小さくなった飴玉を飲み込み明日音に問う。
「これもこの街ならではの現象なのですが、私たち死者はこの街にいる間。現世で死んだときの年齢のままです」
明日音の答えに二人は愕然とする。これで何回目だ・・・
「死んだときって・・・じゃああなたは17歳で死んでそれからずーーーっと何年も17歳のままってこと!?」「ええ、そうです」明日音は歩きながら答える
「じゃあ、明日音さんもこの街の住人の人全員年も取らず、子供はずっと子供のままってことですか?」
「いえ、そうとは限りません」明日音は足を止める。
「例外ではありますが体を成長させる方法はあります。」
「例外・・・?」木葉はつぶやく
「霊力を体内に必要以上補充するとそれが肉体にうまく適合し体の細胞を蘇らせることができるのです。」
木葉は訳が分からないようで混乱していたが灯は続けて明日音に問いただす。
「必要以上って大体どれくらい?」
灯の問いかけに明日音はしばらく沈黙し
「死者によって個人差はありますが・・・・ま大体死者一人分の霊力ですかね」と答える。
「つ、つまりその・・・霊力をいっぱいもらうと体が大きくなるってこと?」
「まあ、ざっくり言うとそうですがその逆もあります」そういいながら明日音は手のひらから手の裏を見せる
「体が成長するのは子供たちでその逆にご老体の方は霊力により若返ることができます」
「へー便利ですね」木葉の納得の声に明日音は真剣な表情に変わる
「しかし・・・霊力は使い道を誤ると強大な力になります・・・」明日音はそういい自分たちの近くで喧嘩をしている二人の若者に手を向け力を入れる
「しつこいんだ・・・うっ!」「わっ・・・・!」その喧嘩をしていた二人の男は急に体が固まりその場に倒れこむ。
「今のは霊力によってあの二人の体の動きを封じ込めたものです」その説明に灯は明日音に質問した
「じゃあ、さっき私が木葉を連れてこの街を出ようとしたときに体が動かなくなったのは・・・」
「ええ、今のと同じ、霊力によるものです」明日音はさらっと答えると二人の男の方に向かう
「すいません、驚かせてしまい。でも喧嘩はいけませんよ地獄に落ちちゃいますから。これ良ければどうぞ」そう笑顔で言い二人に飴玉を渡し木葉達の元へ戻ってくる
「と、まあそういうものです」「へー霊力っていろんなものにもつかえるんですね」木葉は手品を見せられたようなリアクションでそう口にする
しかしこの時灯は自分たちがこの街に来る前のことを思い出していた。
「あの男の・・・あれは・・」灯はコートの男が指を鳴らし光を出現させたときのことを思い出す。
「あれも霊力だとしたら説明がつく!・・・・やっぱりこの人たちは何かを隠している・・・」
灯は心の中でそう考察をしていた。
灯ちゃん、何考え事してるの?
横から木葉の声が聞こえとっさに顔を横に向ける。
「・・!な、何?」「何じゃないよ、行くよ」
木葉の前では明日音が笑顔で手招きをしている。
「あ、ごめん。行こうか」灯は木葉と一緒に明日音の後をついていく。
(・・・・・・・・・)顔中に包帯を巻いている男は卿藍寺の上から望遠鏡で明日音達を見ていた
「もうじきこちらへ向かわれる、我々も出発するぞ」男の後ろで60後半の僧侶がそう言ってきた
「・・・・・はい」包帯の男はそう言い僧侶と一緒に階段を下りて行った。
「ほら・・・喰え・・・昨日入ったばかりの新鮮なやつだ」そういいながら灰髪の男は隣の囚人にいつも渡している球体よりもより光る、真っ白な球体を壁の隙間に押し込む。
「あ、ああ・・・くれ・・・くれっ!!」囚人はその白い球体にかぶりつき飢餓状態を癒す。
ぐちゃぐちゃ、バキバキ、と隣の牢獄から生々しい音が聞こえてくる
「存分に味わえ・・・最後の晩餐だからな・・・」灰髪の男は腕を組みながら不気味にそう隣の囚人に言った。
しかし、隣の囚人に彼の言葉は全く入ってこずただその物体を堪能しているだけだった。
「・・・おい、24番何をしてる!」巡回中の看守が隣の囚人に声をかける、その囚人が球体を貪り食っているのを確認すると灰髪の男に看守は光を当て問いただす。
「貴様っ!・・・まさか今までずっと、こいつに・・・!」「あたりめーだろ、窓からメシを捨てる馬鹿がどこにいんだよ?」とバカにしたように微笑むと看守は慌てた様子で24番に声をかける。
「24番!!やめろ、それ以上喰うな!!それ以上喰ったら貴様はっ・・・!!」
「・・・・・・うっ・・・」24番は看守の言う通り食べるのをやめた、しかしそれは看守の言うことを聞いたわけではなく何かの前兆の様だった。
「あ・・・・遅かったか・・・」「おい、どうした!?」看守の大声に駆け付けた二人の看守がそういいながら24番の牢獄の前に集まる。
「うぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・」24番はその大きな巨体を震わせゆっくりと看守たちに姿を見せる。看守の懐中電灯に照らされたその体は自分たちの知っている24番ではなかった。
肌は赤黒く変色し、口からは黒い液体が垂れ、目は血走り、体の震えはますます大きくなった。
看守たちも体を震わせ懐中電灯を落とす、今自分たちの目の前にいるのはもう24番でも自分たちと同じ死者でもない・・・・そうあれは、この監獄の、いや、この街の絶対的危険生命体である・・・!
灰髪の男は震える看守を見て嘲笑いながら24番だったものに壁越しに言い放つ。
「さあ、暴れろ!本能のままに!!」
「うああああああああああああ!!!!」
その言葉を合図に怪物は檻と壁を壊し目の前の看守に襲い掛かった。
「ぎゃあああああああ」「ぐわあああああああああ」「助け・・・・・・」
ボガン、ドン、グキッという破裂音や悲鳴が監獄内で響き
灰髪の男はそれを目で閉じながら聞いていた。
怪物は看守達を払い除けるととドスドスドスと大きな足音を立て奥へと行った
灰髪の男は目を開け壊れた壁から先程の怪物がいた牢獄に移る。見て見ると看守たちは廊下の壁に叩きつけられ白い目で口から泡を吹いている。
灰髪の男はその看守達をなるべく踏まないようにして壊れた檻から廊下に出ると怪物と同様に奥へ進んだ
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