第2章 【迷い込んだ世界そして・・・】 白命郷
不思議な感覚だった。
ただ見知らぬ場所を歩いているだけなのに、一歩歩みを踏むだけでなんだか自分たちが宙に浮いているような感覚にとらわれていく。前方を見るとその着物の少女は、この街の案内ガイドのように灯達に説明をしながら進んでいる。
「あれはこの街の靴屋です。結構丈夫な靴を提供してくれていて街の人気者なんですよ?」
「は、はあ・・・」灯はとりあえず相槌を打つ
木葉はまるで子供のようにその街をキラキラした目で見渡していた。
「この鳥居はですねこの街にできて100本目の鳥居でくぐると不運が吹き飛ばされるといわれているもので・・・」着物の少女は嫌な顔一つせずに笑顔で街を紹介してくれている。
ありがたくはあったが、今自分たちが知りたいのはこの街が一体どこなのか?という疑問だけであった。どう考えてもこの街は普通じゃない・・・
通るたびに確かに部外者ではあるが、自分たちをものすごく珍しいものを見るように、和服を着ている人間はこちらを凝視してくる。そしてみんな肌が白すぎる。あと謎の浮遊物が自分たちの頭上を通り過ぎたり空に舞い上がって行ったりしていた。
その浮遊物を木葉はより目を輝かせ目で追いかけていた。実際に追いかけそうになったので腕を引っ張り止めたりもした。
「そして!なんといってもあの桜の木は・・・!」着物の少女は300メートルはあろうかという桜の木に指を指そうとした
「あ、あの!!」灯は思い切ってその少女に質問をする。
少女は体ごと振りむき顔を不思議な顔に変え「なんでしょう?」と問いかけてきた。
「あ、そ、その・・・」灯は躊躇していた。今ここでこの場所の詳細なんかを聞いたら自分たちに不吉なことが起こるのではないか?・・・もしかして最悪の場合・・・殺されたり!?
灯の中で最悪の結末が予想されていた。
「どうかなされました?」着物の少女は笑顔で灯にさらに問いかけをする。その笑顔が灯にとっては恐怖でもあった。
「・・・いえ別に何でも・・」灯がやはりやめようと思った瞬間
「ここってどこなんですか?」
灯の心臓が急に締め付けられた
木葉は無邪気な顔で少女にそう質問をした
「私こんな街今まで見たことなくて!ここって日本なんですか?」木葉はさらに質問をする。
灯は焦る。こんな時にまでこの娘の天然パワーが炸裂するなんて・・・!
灯は少女の顔をうかがった。
「・・・・・・・」着物の少女は無表情で沈黙をしているだけだった。
あ・・・終わった・・・灯がそう悟ったとき
「これは大変失礼いたしました」と着物の少女が笑顔で口を開いてくれた。
灯は一瞬驚いたがすぐにほっとした
良かったどうやらこの人は本当にいい人みたいだ。
そんな安心感を抱いた灯と木葉に少女は説明を始める
「ここは白命郷(ハクメイキョウ)というところです。」
「白命・・・郷?」灯は思わず復唱した
「日本語ってことは、やっぱり日本何ですか?」木葉は再度聞く
「日本というか・・・死後の世界です」少女は笑顔であっさりと回答した。
「・・・・・・・え?」
二人揃って声が出た。
「ここはですね一度死んだ者、つまり死者が集う街なんです」
死後の世界?・・・死者?いや意味が分からない、冗談にしてもつまらなさすぎるし、というかこの女性は一体何を言っているんだ?
灯は自分を落ち着かせ笑顔を引きつりながら少女に言った。
「・・・あはははは冗談がお好きなんですねー」
「いいえ冗談ではありませんよ」少女は真顔でそういうと自分の腕を差し出してきた
「脈確かめてみてください」この少女の発言に灯は心臓が先ほどよりも締め付けられた
灯は恐る恐る震える手でそのお言葉に甘えるように着物の少女の脈に指をあてる。
・・・・・・・・・・・・脈がしない・・・そして冷たい・・・
灯はがたがたとさらに震えながら指を離し後ずさりをする。
木葉はただ確かめるように何のためらいもなく、脈に指をあてる。
「・・・あ、本当ですね脈がありません!」「でしょ?私もとっくの昔に死んでいるものなんです」
「じゃあここはやっぱり死後の世界ですか?」「はい、そうです」「へー死後の世界がこんなにきれいだなんて驚いたなー」「まあ、今はそうですけど・・・」
なんて二人はたわいのない世間話のようにトークを繰り返していたが
灯はすぐさま木葉の腕を掴み元来た場所を全力疾走で走った。
「ちょっと、灯ちゃん急に何!?」
「逃げんのよ!!」灯は木葉の天然さに呆れさを実感しながらも人込みを走りぬけていった。
人ごみの中では自分たちを驚きの目で見るものが何人もいたが、この人々も先ほどの女と同じ死者だと考えると恐怖でどうにかなりそうだった。
「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏・・・」灯はそう口と心で唱えながら一目散で先ほどの御屋敷の場所を目指した。
「待って・・・!!」そう後ろから先ほどの少女の声が聞こえた。
その時灯の体は膠着(こうちょく)しその場に倒れこんでしまう。
木葉は膠着して倒れこんだ灯に引きずられるように両ひざをつく。
う・・・動けない・・・まさか、これが金縛り・・・!!
灯は横で木葉が自分のことを大丈夫かと聞いていたがこの時の彼女は恐怖で頭がいっぱいだった。
後ろでは自分たちに道を案内してくれていた着物少女の足音が聞こえてくる。
もうだめだ・・・そう思った灯は木葉の方に目をやり大声を出す
「木葉!あんただけでも逃・・・!!」
「大変申し訳ございません。」後ろからそう謝罪の声が聞こえてきた。
その声が聞こえた瞬間、灯は自分の体の自由が利くことに気づいた。
振り返ると着物少女は申し訳ない表情で頭を下げた。
「手荒な真似はしたくなかったのですが・・・急に離れて行ってしまうもので」少女は灯に手を差し伸べる。
灯はその少女の手を振り払い、座ったまま後ずさりをする。
「わ、わかっているわよ・・・私たちを地獄に連れて行こうとするんでしょ!?・・・」
灯は震える声で少女に言った。
その言葉を聞いた少女は少し止まりクスッっと笑みを浮かべやわらかい口調で話し始めた
「ご心配なくあなた方は死んではおりませんよ?」
灯は自分の脈を確認する。
脈はものすごく早くはなっていたが、確かに正常に動いてあり灯に安心感を与えてくれた。
「じゃあ私たちは生きている状態で死者の世界に来たってことですか?」木葉は少女に問う。
「はいそうです、まれではありますが、ご存命の方がこの街に来ることは少なからずございます。」
と少女は笑顔で返した。
灯は立ち上がる。
「じゃ、じゃあ・・・あんたたちもあの男の仲間ってこと?・・・」そして少女に問いただす。
「男?」少女は首をかしげる
灯は声を荒げる「とぼけんじゃないのよ!私たちは洞窟の中でコートを着た変な男にこの町へ落されたのよ!!」灯は少女に向かってそう言うと
女性は木葉に顔を向ける
「それは真ですか?」木葉は頷く。
少女は唇に指を当て、しばらく考えると指を離し笑顔で答えた
「・・・まあ、理由はともあれこの街に来たのも何かの縁ですから、楽しんでいってください」と腕を広げた。
「答えになってないわよ!!」
「ところでお名前なんて言うんですか?」木葉は灯の指摘を無視し少女に質問する。
「ちょ、ちょっと!」
「大変申し遅れました。私、明日音(アスネ)と申します。以後お見知りおきを」少女はそう名乗ると再度頭を下げる。
どうやら自分の話は上の空だと灯は悟った。
「明日音さんですか?いいお名前ですね!私、時野 木葉って言います。」木葉も女性と同じく自己紹介をした。
「そしてあの娘が城戸 灯ちゃん。私と灯ちゃんは昔からの幼馴染なんですよ」と木葉は灯の名前と自分との関係性を女性に説明をした。
明日音は木葉と灯に目を向ける
「木葉さんと?灯さんですか?」
「はい!」「どうも・・・」明日音の確認に二人は返事をする。
「お二人の方も良い名前ですね。」女性は笑顔で評価する
木葉は明日音にお願いをする。
「明日音さん。私あそこに行ってみたいです!!」木葉はそういいながら指を指す。
その指を指した方を見てみると先ほど自分たちがいた御屋敷よりも豪華な作りになっているまるでこの街の核のような建物だった。
明日音はその建物を確認すると木葉の方に振り向きなおし手を合わせる
「さすが、木葉さんお目が高い!!」まるで店員のように木葉をほめると説明を始める
「あそこはですねこの街の象徴である幻霊館(ゲンンレイカン)というところなんです。」
明日音はさらに説明を続ける。
「幻霊館はですね私たちの生まれた場所でもあり、この街の原点でもあるんです。」と満面の笑みでそう話した。
「原点?」灯は疑問を持つ
「はい、私たちは死んだあと霊界へ行き、当てもなく彷徨っていたんです。その時主様が私たちにおっしゃってくれたのです。」
「主様?」今度は木葉が疑問を持つ
「私たちの創造主です」明日音はそういいながら自分の体に手を当てる
「こうやって私たちが天国や地獄にもいかずこの街で暮らせているのは全て主様のご加護によるものなのです。主様は霊界をさまよっている私たちに言いました・・・」明日音は目を閉じ少し間を置いた。
「まだ生に未練はないか?・・・」
突如明日音のぎろっとした目線と低い声に二人はドキッとした。
「実はですねこの街にいる人々はまだ現代で生きていたかった人たちの集まりなんです。」明日音は声質と目を元の状態に戻し説明を進める。
「あるものは不運の事故で現世を去り、あるものは失恋のショックなどで自殺をよぎなくされ、あるものは眠りの最中で心臓発作を起こし、またある者は病気で・・・」
「も、もういいから・・・」灯はまだ話そうとする明日音の演説を中止させる。
明日音は笑顔に戻り口を開く
「そこで主様が私たちに提案してくれたのが、この白命郷なんです」そういうと手を大きく広げその場を1周した。
「ここでしばらくの間暮らし生の未練がなくなったものは天国か地獄に行けるのです。」と木葉と灯に説明をした。
灯はおそるおそる明日音に口を開く
「じゃ、じゃあ・・いま私たちのまわりを通り過ぎているこの浮遊物は?・・・」灯はその浮遊物を指さしながら聞いてみた。
「はい、人魂です」
明日音の即答に灯は青ざめる。
「へーこれが人魂なんだーかわいいー!!」木葉はその人魂掴もうとするも人魂はまるで水蒸気のように木葉の手をすり抜けていく。
「無理ですよ。人魂は何者にも邪魔できない浮遊物ですから」明日音は笑顔でそう説明した。
灯は青ざめた顔を横に振り、明日音に再度尋ねる
「天国や地獄ってそれ誰が決めるの?」
灯の質問に明日音は真剣な顔になる
「現世での行いをちゃんと反省したものは天国へ。反省しなかったものは地獄へ落ちます・・・」
明日音がそう言うと彼女の足元で人魂が地面に潜っていくのが見えた。
灯はまたも顔が青ざめる。
「じゃあ主様ってそんなに偉い人なんですか?」木葉はワクワクしながら明日音に聞く。
「はい私たちにとっては神そのものです」明日音は笑顔で返答する。
「じゃあ会ってみたいなその主様に~」木葉がそう言うと
「でもそんな神に等しい存在の人に私達、命ある人間が会いに行っていいの?」灯は真剣な目で明日音を見つめる。
明日音は灯を落ち着かせるように笑顔を見せる
「大丈夫ですよ、主様はとても寛大な方なので快(こころよ)く招き入れてくれます」
明日音がそういうも灯は疑いを取り払えなかった。
「じゃあ安心だね!!そうと決まれば早く行こ?その、えーと・・・」木葉はそう口走るも頭を掻きながら口を閉じた。
「幻霊館ですか?」「そうですそうです!!」木葉は先ほどと同じ表情になり明日音に指を指した
「ではご案内いたします」明日音はそういい手のひらを幻霊館の方に向け木葉達に背を向ける形で誘導を始めた。
木葉は何の躊躇もなくその後をついていく。
灯は躊躇をしたが、あのコートの男の正体を探るためにも意を決して明日音の誘導に従った。
「いったいどんな人なんだろうね?主様って」「あんた失礼な態度とりなさんなよ?」
そう二人が会話をしているのを背後で聞き、明日音はフフッと謎の笑みを浮かべた。
「みんなーどこにいるのー?」
優は夜道で声を出して友人達を探していた。
手には懐中電灯、左手にはスマートフォンを持ち自分しかいない道をてくてくと歩いていく。
「木葉ちゃーん、灯ちゃーん、風哉くーん、浜田くーん、木谷さーん、安藤さーん」一人ずつ名前を呼んでは見たが返事は返ってこなかった。
「みんなどこ行っちゃったんだろう?・・・」優は独り言をつぶやく
その時、振り返った景色に人影が見えた
よく見てみるとその人影はこちらに背を向けて姿を現していた。
「浜田君と木谷さん?」優はそれが雄二と夢菜だと認識し駆け寄る、近くまで来るとそれは間違えなく雄二と夢菜だった、二人が自分に背を向けて立っていた。
優は喜んだやっと自分の友人に会うことができた。
「浜田君、木谷さん!どこに行ってたの?」優は二人に問う
しかし返事は返ってはこない
「他のみんなは?」
優は質問を変えてさらに問う
「・・・・・・・」
二人は沈黙をしていた。
「浜田・・君? 木谷・・・さん?」優は恐る恐る二人に問いかける。
その時
「優・・・」雄二が無表情のまま口を開いた
「・・・何?」優は耳を傾ける
「・・・・・・・・さよなら」
「え?」雄二がそう言うと雄二と木谷の体は砂のように崩れ落ちその場には大量の砂しか残っていなかった。
優は震えた。心の底から
「ど、ど、ど、どうして・・・二人が砂に・・・!?」
そう頭が混乱していた時後ろに誰かから肩を叩かれた
驚いて振り返ると灯と木葉が立っていた。
優は嬉しくもあったが今自分の目の前で起きた怪奇現象を二人に説明しようとした。
「た、たたた大変なんだ!!、い、今浜田君と木谷さんが!・・・・」
優が二人にそう言ったとき
「優・・・」「優君・・・」二人が無表情のまま口を開く
優はとてつもなく嫌な予感がした
「・・・・・ごめんね」そう二人が言うと先ほどの雄二たちと同様砂と化し、優の前から去っていった
「うわああああああああ」優は発狂しながらその場を去り、スマホで警察を呼ぼうと走りながら番号を打とうとした
「プルルルルプルルルル」画面に携帯番号が表示される。
「こ、この番号は安藤さん?・・・」優は通話ボタンを押す
「も・・・もしもし」「もしもし・・・」
真紀の声だった。
「あ、安藤さん!?今どこに・・・」そう優が尋ねると真紀はボソッと呟いた
「・・・・下」優は下に目線をやる
そこには胸から上だけで手にスマホを持ちそれを耳に当て砂に変わっていく真紀の姿があった。
優が唖然としている間にもその真紀と思われるものは砂化していき最後には砂とヒビの入ったスマホだけが残っていた。
優は懐中電灯とスマホを落としその場で腰を抜かす、後ずさりをすると何かが自分の背中に当たった
脚だ・・・
優は上を見上げる
そこには風哉が自分を見下ろしていた。
優は確信した風哉もきっと他のみんなと一緒に・・・
優は泣いた。
「・・・風哉君・・・みんな消えちゃった・・・・砂になって・・・」
自分の泣き顔に砂が落ちてくる
目を開けると風哉が砂になりさらさらさらと崩れていく。
「風哉君・・・・」
優は泣いたまま風哉の名前を呼ぶ
その時風哉は口を開き優に言った。
「・・・・お前もこっちにこい・・・」
そう言い残し風哉は砂になった。
「お前・・・も?」
その時先ほど風哉が砂になった時のさらさらさらという音が聞こえた
優は自分の手を見る
そこには砂と化していった友人たちと同様に自分の手も砂のように崩れ去っていく光景だった。
「い、いやだいやだいやだいやだいやだ・・・・」優は焦りながらそう繰り返した
「助けて・・・誰か・・助けて・・・!!」
誰かに助けを求めようと前にさし伸ばした手はもう砂になり残っているのは腕だけだった。
「なんで・・・こうなるんだ・・・・僕が弱いから?・・・弱虫だから?・・」優は自分の体が砂になっていくわずかな時間の中でそう考えた。
「みんなが砂になったのも、僕の・・・せい?・・・」
優はどうしようもない罪悪感に包まれていった。
「ごめんなさい・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・・」優は何度もそう繰り返しながら砂に変わっていった・・・
ガバッ!!
優は布団から飛び起きた、寝汗をびっしょりかき、はあはあという息遣いを繰り返し周りを見渡す。
そして自分の手を確認する。当たり前だが砂には変わってなかった
「ゆ・・・め・・か」優は安心し眼鏡をかける
「・・・あ、み、みんなは?」優は立ち上がり部屋の外へ出る
その時優は思い出す、(そういえばおばさん明日だよね?鷁霊祭)そう木葉が食事の席で言っていたことを。
「そうか、みんな祭りに・・・」そう優が思った刹那
隣から会話が聞こえてきた
「?あの声は・・・・すずちゃん?」
優は声のした方へ足を運ぶ、そこにはすずとおばさんが言い合いをしていた
「だから、危ないって言っているでしょあなたはここでお留守番してなさい!」「いやだ、私も木葉お姉ちゃんと灯お姉ちゃんを探しに行く!!」「わがまま言わないの!」
「木葉ちゃんと灯ちゃんを探す?・・・」優は考え理解した。
「まさか・・・二人が?・・・」優は先ほどの夢の中で灯と木葉が砂に変わっていくのを思い出した
そして優はおばさんとすずに気づかれないようにふすまを閉め昭を起こさないように窓から外へ出ると玄関に回り込み戸を開け靴を履き祭りへと向かった。
「ん?今誰かが戸を開けたような?」おばさんはそう思い玄関に行ったがそこには誰もいなかった。
優は祭りに向かう途中の道を走りながら自分の幼少期の出来事を思い出していた。
木葉が祭りで迷子になり自分や灯や木葉のお母さんとおばさん、そして木葉のお兄さんの戒さんが必死で木葉を探していたのを。その時自分は何度も同じ場所をぐるぐる回っていただけで戦力にはならなかった。
「木葉ちゃん・・・今度はきっと見つけるから・・!灯ちゃんも無事でいてくれ!・・・」優は祭りに向かって駆けていった
祭りの入り口が見えたとき人影が見えた。
「木葉----灯ーーー! どこにいるのーーー?」
夢菜がそう叫び
「お願いだから出てよ・・・」
真紀がスマホを片手にそうつぶやき
「青神!もうよせ、お前ボロボロじゃねえか・・・!少し休め!」
「うるさい、離せ!!俺があいつを守るんだ!!」
と雄二と風哉が取っ組み合っていた。
優は夢とは違いいつもの4人だと安心し4人に声をかけ手を振る
「おーーーーーいみんなーーーーー」
優の声に4人も気づき手を振る
「優君、あなたも来ていたの?」
「いや、さっき起きて今来たんだ。木葉ちゃんと灯ちゃんは?」
「見りゃわかんだろまだ見つかんねえよ・・・」
「やっぱ出ないわ2人とも・・・」
4人がそう会話をしている間にも祭りの太鼓はまだ響いていた。
普段なら心躍るその音色が今の5人には圧迫感のようなものを感じさせていた。
「なあ、優。お前木葉達の行きそうな場所知らねえか?木葉達の幼馴染のお前なら知ってるんじゃねえの?」雄二が優に問いかける
優は考える
「木々の中は?」「俺が行った、でもいなかった・・・」風哉が残念そうに口を開く
「じゃあ川とか裏にある神社は?」「そこも行った、でも見当たらなかった・・・」風哉がそうつぶやく
「じゃあトイレ・・・なわけないよね・・・」優は声を小さくしながらそう言った
夢菜が怒りを見せる
「ちょっとあんたまともに考察しなさいよ!まだ寝ぼけてんじゃないの!」夢菜の突如の指摘に優は動揺する
「ご、ごめん・・・今起きたからちゃんと考えるよ・・・」優はそう言い目をつぶる
とは言ったものの今の優には木葉達が行きそうな場所など他に検討がなかった。
(木葉ちゃん、灯ちゃん。どこにいったんだ・・・)
そう考えていた時先ほどの言葉を優は思い出した
(ちょっとあんたまともに考察しなさいよ!まだ寝ぼけてんじゃないの!)
寝ぼける?・・・寝る・・・・!あそこだ!・・
優は目を見開き祭りの入り口へ入っていった
「お、おい!」雄二たちも優の後を追っていく。
「すいません、ちょっと通ります!・・・」優はそういいながら人ごみを通り抜けていく
きっと、あそこだ・・・あそこに木葉ちゃんたちは・・・
そう心の中で考えながら優は目的地に着いた。
優はその場所を確認すると幼少期のころの鷁霊祭を思い出す
「間違えない、ここだ!・・・今回もきっとここに・・・」
優は布をめくりあげる
「木葉ちゃん!?灯ちゃん!?」
「なあ、もう帰ろうぜ。なんか気分が悪くなってきたよ・・・」
「うるせえな、ちょっと黙ってろ。これも再生数を増やすためなんだからよ」
リーダーはスマホの録画機能を使い自動り棒で自分の前にスマホを持ってくる。
「えーみなさん俺たちはですね今、地下に続く階段を下りただいま地下道らしき場所を進んでおります。」そういうとリーダーはスマホを外側に向け道を照らす
「見てください、不気味ですね~これお化けが出ても文句言えない雰囲気ですね~」
と怖さを引き立てるしゃべり方をしながら実況を始めていく
金髪もマニキュアもそのリーダーのMy tuber魂にはお手上げだった。
その時自分たちの前に扉らしきものが見えた、いやそれは間違えなく扉であった。
上の札にはさびれた文字で【研究室】と書いてあるのが何とか見えた。
「ご覧ください!見えますでしょうか?研究室と書かれています。ここは昔何かの研究がされていた場所なんでしょうか?」リーダーの男は笑みを浮かべながらスマホにそう言葉を発していた。
「おい、いい加減にやめとこうぜ俺たちガチで呪われるかもしれないぞ?・・・」金髪の男はリーダーにそう言った
「何言ってんだよ、ここで引いたら男が廃るぜ」と笑顔を見せその扉を足で思いっきり蹴り破った。
バーーーン!!と静寂の地下から金属音が鳴り響いた。
「馬鹿!!おまえ・・・!」金髪がそう言ったのもつかの間リーダーはその中をづかづかと入っていく。
「もう・・・」金髪とマニキュアも観念したのかリーダーと同じくその研究室に足を運んだ。
中を確認すると先ほどの休憩所よりも老朽化が進んでいるようだった。
錆びた研究机、割れたフラスコガラス、地面に散らばっている無数の書類やデータ用紙。そのどれもが今の彼らには不気味そのものだった。
その時リーダーが奥の方を指さしマニキュアに言った。
「おい、お前あそこに行ってみろ」マニキュアはリーダーの指さす方を確認する。
そこにはこことは別にもう一つ部屋がありその部屋に続く道の様だった。
「え、何?やっぱやらせすんの?」マニキュアはそういったがリーダーはすぐに否定をした。
「ちげーよ、あそこの部屋なんかありそうだからお前が先に確認してこい」
マニキュアは嫌がったがリーダーは無理やりマニキュアをその部屋へと行かせる。
リーダーはその部屋へと行かせると研究室の中を探索した。
「金とか落ちてねえかな・・・」リーダーの下心には金髪もひくほどだった。
金髪は地面に落ちてある書類に目を向ける。それはもうほとんどボロボロでところどころ字がくすんであり見えづらかったが金髪は目視で確認をする。
「・・・エ・・・・ウ・・・ル・・・方・・・月・・・なんだこれ?」
金髪は書類をもとにあった地面に放り捨てる。
その時
「おーーーーいちょっと来てくれーーー!」
先ほどリーダーが探索に向かわせたマニキュアがもう一つの部屋に続く道から聞こえてきた。
リーダーと金髪はその道の方へ進んでいく。
しばらく進んでいくと開けられた部屋のドアの前にマニキュアが必死に手招きをしている光景があった。
「どうした?」リーダーがそう言いながら開けられた部屋の中を確認すると二人は言葉を失った。
そこにあるのは先ほどと同じ研究室なのだが、全く別のものだった。
床にはほこりや書類など一つもなく、ビーカーやフラスコグラスもきれいに並ばれており、先ほどまで誰かが使用した形跡があるほど真新しかった。
「なんだこれ?・・・どうなってんだ・・・」
リーダーがそう言いながら室内を懐中電灯で照らしていく
照らされている室内も自分たちが先ほどいた場所とはまるで別空間のような風景だった。
マニキュアはとあるものに懐中電灯を向け独り言をつぶやく
「何の装置だ・・・」マニキュアがそう口にしたものは今まで自分が見たこともない物体だった。
指紋認証のようなパネルが設備されており小さい扉の中には丸いくぼみが彫られている。それが5つも、そしてその装置の上にはまるで綿菓子を作るときに砂糖を入れるために作られたような穴が付属している形でマニキュアや金髪をより謎に導いていった。
「おい、あれ!!」と突然リーダーが二人に語りかけた
二人は驚きつつもリーダーのあれというのを確認する。
・・・・ドア・・・この部屋の奥に大きなドアがあった。
「あれ絶対になんかあるぞ・・・おい、お前!」リーダーがマニキュアに目線を向ける
「いや無理無理無理無理」マニキュアは必死に拒否をする。
リーダーは今度は金髪に目を向ける。金髪もマニキュアと同様に首を横に振る。
「ちぇっなんだよ、ビビりが!もういい俺が行ってくる!!」リーダーはそういうとそのドアの方へ足を運んだ
「おい、やめろって絶対になんかあるぞそれ!・・・」金髪はそういったがリーダーはスマホで撮影する気満々だった。
「では今からこの謎のドアを開けてみたいと思います・・・」リーダーがドアノブに手を掛ける。
「3・・・・・2・・・・・・・1」3人の鼓動が早くなる・・・
「0!・・・・」リーダーがドアノブを回す
ガチャ、ギーーーーーーー・・・・・・
鈍い音を立てながらそのドアは開かれていく・・・
・・・・・・・壁だ
そのドアの先にあったのは土の壁だけでほかに何の道もなかった。
リーダーはがっかりした様子でスマホの録画機能を停止しドアを閉める。
「なんだ壁かよ、期待して損した、帰るか」二人に振り向きながらそう言った
二人は安心のため息をつきリーダーの後をついていく。
・・・・・・・・・え?
二人は足を止めた
「ん?どうした?」リーダーは急に足を止めた二人に質問をする
マニキュアが口を開く
「なんで・・・土の壁にドアが作られてあるんだ?・・・・」
「・・・・・あ」リーダーが不意にそう口にした
その時
ガチャ、ギーーーーーーー・・・・・・・
先ほどリーダーが開けた時と同じくドアが開く鈍い音が後ろから聞こえた
3人はゆっくりと振り返る。
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