Side Story〈Yuuki〉episodeXX
本話は、本編66,67話の話になります。
―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―
「おいおい、ちけーなあいつら!」
「ね~、ちょっと会話聞いてみたいね~」
「ちょこっとだけドア開けてみるか!」
「あ、でももうすぐ1分ですよ?」
「あ、マジ? しゃーない、じゃあお楽しみタイムもそろそろ止めてくるかー」
ガラス越しにゼロさんとだいさんの様子を伺うぴょんさんとゆめさんは、何だか楽し気。
でも時計を確認すれば、間もなく持ち時間である1分を経過しようとするところ。
なので私がそれを言うと、ぴょんさんは何故か少し残念そうな雰囲気も出しながら、だいさんの持ち時間終了を告げるべく扉をそっと開けました。
すると。
「も、もっかい言って!」
「言わないわよ馬鹿!!」
「お願い! ちょっとだけでいいから!!」
「嫌です!!」
むむ、何の会話でしょうか?
感情を露わにしながら、ゼロさんの懇願を否定するようなだいさんの声が聞こえます。
でも、ゼロさんも何だかテンションが高いような……?
「おいおい先っちょだけとか卑猥なやりとりしてイチャイチャしてんじゃねーぞー。逮捕すんぞ」
「言ってねえよ!?」「してないわよ!!」
そんなお二方の会話に割り込むぴょんさんですけど、むむ?
卑猥? イチャイチャ? どこがでしょうか……。
でも少なくとも、ぴょんさんやゆめさんから聞いたゼロさんの反応と、私を褒めてくれた時の反応とも、ゼロさん違いますよね。
……つまりこれは、だいさんの選んだ衣装が、一番当たり、ということ、なのかな?
「本命は強し、だね~」
「巨乳美人のチャイナは、強いですね……」
そして私とゆめさんも再びお部屋の中へ戻り、最初に入った時のように席につきます。
颯爽とゆめさんがゼロさんを引っ張って奥の方に座りに行ったので、私もその反対側の、ゼロさんの隣に。
続けてゆめさんの隣にぴょんさんが、私の隣にだいさんが座る形になりました。
「ゼロさんの好みの衣装は、チャイナだったんですか?」
とりあえずこれでコスプレ合戦はひと段落。
ということで私は先ほどのゼロさんの様子の真実を聞くため、正解がだいさんの選んだチャイナだったかを確認することに。
「え? あ、まぁ、うん」
「なんだなんだー? これが愛の力かー?」
「はぁ!? そんなものあるわけないでしょ!!」
「うん」と答えてくれたということで、正解のコスプレがチャイナだったということが判明しましたが、その言葉を聞いてぴょんさんがよく分からない「愛の力」という言葉を発すると、だいさんが顔を赤くしてそれを否定。
でも、愛の力って、うーん……そもそも愛とは、よく分かりませんね。
家族のことは好きですから、家族愛というのは理解できますが……。
「わ、私はただ……昔ゼロやんと実装してほしいイベント装備の話をしたことがあったから……お、覚えてただけよ!」
ほほう。
そんな過去が……。
「イベント装備って、最近あんまし出てないけど、それいつの話~?」
「え、えーと……3年前くらいかしら」
「いや、そんな前の話覚えてるとか、もう愛だろおい」
「ち、違うから!」
ふむ。3年前、となると、私はまだLAを始めたかどうか頃、ですか。
でもゼロさんとだいさんは、その頃にはもうフレンドだったんですよね。
……なるほど、積み重ねた期間は、イコールで愛になるのですかね。
「猫耳もそのときの情報なんですか?」
「おいおいゆっきー、決まってんだろ?」
「そうそう、ゆっきーはまだ甘いな~」
「どういうことですか?」
むむ?
「どういうもこういうも」
「本命から
「はぁ!? ……そ、そんなわけないじゃない……」
あ、なるほど。
元カノであるセシルさんが猫耳獣人だからですか。
いや、でも、さすがに『月間MMO』の写真でつけてる耳は、偽物では?
そんなぴょんさんとゆめさんの言葉に、だいさんは何やらまたまた顔を赤くして伏せてしまいましたけど、何だかあれですね、だいさんも怒ったり恥ずかしがったり、情緒不安定ですね。
「セシルさんは元カノでも、争奪戦参加者なんですか」
「あー、参加者なのか? ゼロやん」
「知るか! 俺に聞くな!」
ふむ……。
私たちだけでなく、セシルさんも、ですか。
「ゼロさんはモテモテですね」
「ノーコメントで……」
「じゃあ審査員長。優勝者発表を」
たくさんの女性に好かれるって、どういう気持ちなのでしょうか?
そしてその中から一人を選ぶとしたら。
また、選ばれないとしたら。
そんなことを私が考えている間に、ぴょんさんが今回のコスプレ合戦の結末を求めます。
きっとこれは、だいさんなんでしょうけど。
ゼロさんの反応からしても、それは私でも分かりますし。
「ダダダダダダダダダダダッ!」
あ、ドラムロールですか?
けっこう似てますね、ぴょんさん器用だなぁ。
「ででんっ!」
「だ――」
「――って言いたいところですが!」
「へ?」
むむ?
明らかにゼロさんがだいさんのお名前を言おうとした瞬間、なぜかぴょんさんがそれを制止。
どうしたんでしょうか?
私たちが一様にぴょんさんへ視線を向けると。
「本命候補だっただい選手は、
「お~、名判断!」
あ、なるほど。
たしかにだいさんは考えて選んだ、のではなく、知ってて選んだんですもんね。
問題の答えを事前に知っている人がいては、勝負にはなっていなかった、ということですか。
「カンニングはダメですもんね」
「え? べ、別に失格でもいいけど……」
ぴょんさんの提案にゆめさんがちょっとだけ嬉しそうにした反面、だいさんは、少し残念そう、かな?
なんだかんだ、やはり勝負にはこだわっていたのでしょうか?
たしかにだいさん、ギルドの活動でも負けず嫌いなところ、ありますもんね。
失敗した次は、すごい精度の高いプレイをされてますし。
「では気を取り直して! まず、好きな衣装部門!
そしてそんなだいさんを置き去りに、ぴょんさんが結果発表を進行。
でもまずは、ということは、何部門かあるのでしょうか?
「え、まさかの細分化!? 何部門あるんだよ!?」
「え、そりゃ、好きな衣装部門、可愛かった部門、似合ってた部門だろ」
あ、あるみたいですね。
それを言われてゼロさんが少し慌てた様子を見せますが、ぴょんさんはふんぞり返ったようになぜか胸を張ってます。
「3人で3部門!?」
「ほら、早く言えよ」
「ぴょんは強引だな~」
「これで呼ばれなかったらちょっとショックですね」
でも3部門あるなら、私も選ばれる可能性ありますよね。
全部言ってもらえたら、嬉しいけど、さすがにそれは欲張りですか。
「えーと、好きな衣装部門は……」
ドキドキ。
「ゆきむら」
あ。
「え? あ、ありがとうございます」
私の選んだ衣装、お好きでしたか。
うん、選ばれたのは、嬉しいですね。
選んでいただいたお礼に、私は深々とゼロさんにお礼をし、喜びを伝えます。
「なるほど、巫女好きか。覚えとこ」
「デートで神社はダメだね~、目移りされちゃう」
「何の話だ!?」
「続きましてー、可愛かった部門」
私が喜びの余韻にある中、ぴょんさんがすぐに次の部門の発表へ移ると。
「ゆめ」
「即答ね……」
「えへへ~、知ってた~」
ドキドキする間もなく、これは即答。
たしかにゆめさんは可愛いです。私より年上ですけど、セーラー服、似合ってますもんね。
まだ女子高生でも、通用するのではないでしょうか?
「お、おい!?」
そして選ばれたゆめさんは嬉しそうにゼロさんの腕を取り抱き着きました。
そうか、喜びとともにそういう振る舞いをするのも手だったのですね……。
勉強になります。
「あざといなー」
「甘え上手って言ってほしいな~」
「そうすればいいんですか?」
「えっ!?」
ということで、私もゆめさんに続いてゼロさんの腕を取り抱き着いてみました。
……ちょっと恥ずかしいですけど、何だろう、不思議な感じです。
しばらくこうしていたいような、そんな気持ち。
あ、でもだいさん、ちょっとお顔が怖いです。
「おお、ゆっきーも大胆だね~」
「争奪戦、ですもんね」
「ゆっきーにあまり変なこと教えないのっ」
そしてゆめさんを真似た私共々、だいさんが引っ張って私たちはゼロさんから離されます。
むぅ……。
あれ、なんだろう、この感覚……?
「それでは、一番似合ってた部門! なおこの部門は27歳以上の方しか受賞できませんので、あしからず」
ちょっとよく分からない感覚を覚えている間に、ここまで呼ばれていないぴょんさんがさらに発表を進行。
でも、その条件って。
「せこ~」
「それって、ぴょんさんしか――」
「ゆっきーそれを言っちゃダメ!」
むむ?
ぴょんさんしかダメじゃないですか、と言おうとした私の口をだいさんが塞いできたので、私は言葉を止められます。
なんででしょうか?
「年齢制限なくてもぴょんだよ。交番とかにほんとにいそうだし」
「これあれだな、あんまし嬉しくないな!」
「お前から言ったくせに!?」
「うるせえ!」
「ぴょん照れてる~」
「照れてねぇし!」
そして選択肢が1つになった答えを選んだゼロさんにぴょんさんが少しだけ顔を赤くして睨みつけますが、そうか、これは照れてるんですね。
嬉しいのであれば、喜べばいいと思うんですけど。
「ごほん! では、最優秀賞はー!?」
そんな照れを払うように、まだまだぴょんさんは発表を続けます。
「え、まだあったの!?」
その言葉にゼロさんが慌てますが、たしかにこのままだと、失格のだいさん以外同票ですし、決着はついてないですもんね。
「だいはダメだよ~」
そんな焦って悩むゼロさんに、ゆめさんも答えを急かしますけど、だいさんがダメだとなると、優勝はだいさん以外の私たち。
うん、またドキドキしてきました。
選ばれたら、嬉しいな。
「優勝者のカラオケ代を、ゼロやん持ちにするのよね?」
「おう、そうだぞー」
そうしてドキドキする間に、だいさんが優勝者の特権をぴょんさんに再確認し、ちらっとゼロさんと視線を交わしたように見えました。
むむ、なんでしょうか? アイコンタクト?
「優勝は……ゆきむらで!」
そのだいさんの振る舞いが気になっている間に告げられた、ゼロさんの答え。
その答えに、私は一瞬きょとんとしてすぐに反応できませんでした。
「あ、私ですか?」
「なんだー。若さの勝利かー」
「むぅ、イケてたと思うんだけどな~」
でも、改めて選ばれた嬉しさがこみ上げ、何でしょうか、心がポカポカしてきます。
そうか、私が一番よかったんだ。
そっか……。
「嬉しいです」
「あ」
ゼロさんの目を見て私が喜びを伝えると、ゼロさんは少し驚いたような顔をされましたけど、なんで驚くのでしょうか?
さっきみたいにまたゼロさんに抱き着くことはできませんでしたけど、込み上げた嬉しさが、自然と笑顔にさせてくれたような、そんな気はしました。
選ばれるっていうのは、嬉しいですね。
もし、争奪戦の勝者としても選ばれたのなら、どんな気持ちになるのでしょうか?
今よりもっと、嬉しいのかな?
今よりも嬉しいのだとしたら、どうなってしまうのだろう?
そんな想いが、私の脳裏に浮かびます。
……もしかして、これが?
何かを理解できそうな気がしたまま、私はしばしゼロさんと見つめ合ったまま、この胸の内の喜びと温かさを、感じ続けるのでした。
―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―
以下
―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―
長らくお待たせいたしました。
本編のひと段落があったので、こちらを再開。
この頃はまだまだ恋愛レベルの幼いゆきむらです。
エヴァの映画公開延期……はぁ、と思った影響もあるとか、そんなことはありませんよ!(投稿2021/1/15)
いや、公開延期は悲しいんですけど……やむを得ないですもんね。
Sideもまた進めていこうと思います。
頑張ります。
オフ会から始まるワンダフルデイズ~Side Stories~ 佐藤哲太 @noraneko0919
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。オフ会から始まるワンダフルデイズ~Side Stories~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます