Side Story 〈Shizuru〉 episodeⅡ
ルチアーノとの出会いから一か月。
あたしは大学が終わると毎日夜遅くまでログインする日々を送っていた。
亡くなった両親に入学させてもらった手前、大学だけはしっかり卒業するつもりだけど、大学生活なんかよりも、LAでの日々が楽しかった。
一か月もあれば、かなりゲームの仕様も分かるし、顔を知らないからこそみんなと話せるようにもなった。
プレイヤーの種族毎にスタートする街が違ったため最初はエルフばっかりだった仲間たちも、今では全種族に増えた。
小人族の〈
リアルの名前も顔も知らない仲間たちだけど、そこはあたしの居場所になった。
当時はまだギルド制度がなかったんだけど、この時すでにルチアーノは言っていた。
〈Luciano〉『β版が終了したら、このメンバーで攻略サイトを運営しよう』
攻略サイトなんて、あたしにとっては見るだけのものだったから、正直その言葉には驚いた。
でも、それと同時にわくわくもした。
攻略サイトを運営するってことは、あたしたちは最前線でこの世界を駆け巡る必要があるってこと。
誰よりも早く、誰よりも強く、そうあるべき存在なのだ。
だから、あたしは強くなることを決めた。
この仲間たちともっと遊びたいから。
ここが居場所だって、胸を張りたかったから。
そして5000人くらいがプレイしたβ版が4月に終了し、6月からの本サービス開始が決定した。
β版で過ごしたみんなと会えなかった2か月は寂しかったけど、最後には総勢50人ほどになっていたメンバーとルチアーノが教えてくれたSNSを通じて連絡を取り合い、あたしたちは彼が運営するHP上で交流を続けた。
本サービスではサーバーが16に増えるとのことだったけど、β版プレイヤーにはサーバー選択権がもらえるという特典がもらえたので、誰がどの種族でスタートして、どの武器を使っていくか等、事細かにスタートダッシュの計画を練っていった。
ありがたいことにあたしは01サーバーで、種族も武器も変えずにジャックを続けられそうで一安心。
でも古参だとリチャードはエルフからヒュームにチェンジすることが決まった。
一緒にはプレイしなかったけど、β版の中でも上手かったりログイン率が高かったメンバーの洗い出しも行われた。
それと同時に、ルチアーノの作るギルドに入らないことを明言するプレイヤーも出た。
あれこれ指示されるの嫌いな人もいるから、しょうがないよね。
古参メンバーだとまずはけんろうが離脱を表明。
3月までは学生だったからなんとかなったけど、4月からは新社会人だからという理由。自分のペースでやりたいんだって。
大学3年に上がっていたあたしにとって、それは少し思うところがある話だった。
あたしは、卒業したらどうするんだろ?
このままLA、続けてていいのかな?
ありがたいことに両親が残してくれたお金で、生活はできている。
趣味もゲームしかないから、正直ほとんど減っていない。
ずっとゲームしてたいな。
ずっとゲームできたらいいな。
ずっとみんなで、遊べたらいいのに。
サービスは、いつか終わっちゃうんだろうけど。
LAの中だと饒舌なあたしも、リアルだと地味で暗くて友達がいないのは変わってない。
ニートになることに抵抗がないわけじゃないけど、働くことというより、現実の人間と関わるが、いつの間にか怖くなってた。
舐め腐った考えしてたなって、今は思うけどね。
そしてもう一人、意外な人物が離脱を表明した。
メンバーの中で一番ルチアーノにフランクに意見を言っていたもこが自分でギルドを立ち上げると表明。
意外だったけど、もこももこでやりたいことがあるんだろうし、誰も止めなかった。
ちなみにルチアーノが運営するギルドの名前は【Vinchitore】に決まった。
イタリア語で勝者とか、始まる前から尊大な名前。
でも、ルチアーノらしいったらルチアーノらしい。
実際β版の頃からルチアーノはもう有名だったし、名実ともにトッププレイヤーなのは明白だったから。
ああ、早く6月にならないかな。
本サービスが始まるまでの2か月のHP上での交流を、あたしは遠足前の子どものようにワクワクしながら過ごしたのを覚えてる。
遠足前が楽しみだったのとか、小学生までだった気がするけど。
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以下
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前からスタートしましたが、二人目はジャック。
この小説がオンラインゲームを題材とする小説であることを確認する物語です。
【Teachers】のメンバーはほとんど出てきません。
代わりに【Vinchitore】のメンバーがメインとなります。
第2回オフ会で話題になった話までを描くストーリーの予定です。
きっとその頃には本編がある程度進んでると思うので……。
ちなみにジャックの次に始める人物はもう決まっています。
そこに至るまでは、本編ともどもお楽しみいただければ幸いです!
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