Side Story〈Airi〉episode XIX

本話は、本編23話前後の話になります。

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 帰宅して、ぱぱっとご飯作って、食って、風呂に入る。

 この間約45分。

 そして今は20時20分くらい。


山村愛理>独身女子会『今帰ったぜー』20:21

平沢夢華>独身女子会『おっかえりー』20:21

山村愛理>独身女子会『もう入ってログインしてんの?』20:22

里見菜月>独身女子会『いるわよ』20:23

平沢夢華>独身女子会『わたしはまだー』20:25

山村愛理>独身女子会『みんないるー?』20:28

里見菜月>独身女子会『リダ、ジャック、ゆっきーがいるわね』20:29

里見菜月>独身女子会『あ、ゼロやんきた』20:29

平沢夢華>独身女子会『タイムリーゼロやんw』20:30

山村愛理>独身女子会『活動日じゃねえのにw』20:30

平沢夢華>独身女子会『みんなオフ会の話聞きたいのかなー?』20:31

山村愛理>独身女子会『あと5分したら入る!』20:31

平沢夢華>独身女子会『おっけー』20:31


 意外とみんなきてんだなー。

 とりあえずパソコンを起動っと。

 

 あたし以外誰もいないこの家に響く、パソコンの起動音。

 昨日はみんなといて楽しかったから、なんかちょっと寂しい。

 早くインして、みんなに会いたいとか、柄にもなく思ってしまったよ。


 慣れた操作でLAへログイン完了っと。


〈Yume〉『やっほーーーーーーーーー!』

〈Pyonkichi〉『いぇーーーーーい』


 聞き慣れたBGMの中、みんなのいる世界にあたしの相棒〈Pyonkichi〉が現れる。

 あたしの登場とほぼ同じタイミングでゆめもログインしたから、あたしたちは揃ってギルドメンバーに挨拶した。


〈Yume〉『ゆめちゃん復活!!』

〈Gen〉『お、きたなw』

〈Yukimura〉『復活したんだ、よかったね』

〈Jack〉『よかったねーーーーwww』

〈Gen〉『昨日楽しかったのかw』

〈Yume〉『もち!!みんないいやつだった!!』


 あ、そうか。昨日はゆめの失恋慰める会だったんだ。忘れてたわ。

 

 みんなの温かい声の中、あたしはふと悪戯を思いつく。


山村愛理>平沢夢華『ぶっこむぞ!合わせろ!』20:42

平沢夢華>山村愛理『何事?w』20:43

山村愛理>平沢夢華『必殺カミングアウト!』20:44

平沢夢華>山村愛理『なるほど!了解であります!』20:44


〈Pyonkichi〉『ゼロやんイケメンwww』

〈Yume〉『ぴょんもだいも、美人だった!!』


 おい! 何あたしも巻き添えにしてんだ! 

 美人扱いは嬉しいけど!


〈Zero〉『やめろ!』

〈Daikon〉『ちょ!』


 予想通りの反応にあたしは満面の笑みなのは、言うまでもない。

 正直モニターの前で笑った。


〈Pyonkichi〉『いやー、マジでだいは美人。びびった』

〈Daikon〉『やめて!』


里見菜月>独身女子会『ちょっと!』20:45

山村愛理>独身女子会『どーせバレるんだからw』20:45

山村愛理>独身女子会『だいから言いづらそうだしー?』20:46

里見菜月>独身女子会『ああもう・・・』20:46


 いや、ほら、ね?

 嘘はよくないし。というかあたしだって女バレされたし?

 攻めるべきはゆめだからな?


〈Gen〉『なんだ、二人ともネナベだったのかw』

〈Gen〉『あ、嫁が「だと思った」と言っております』

〈Yukimura〉『美人さん・・・見てみたいな』

〈Yume〉『そしてお知らせがあります!』

〈Jack〉『おおーーーー?』

〈Pyonkichi〉『次回開催は7月3日!仕事終わりに新宿集合!』

〈Yukimura〉『行く』

〈Jack〉『ほんとに新宿でやってくれんだーーーーwじゃあ、行っちゃおうかなーーーーw』

〈Gen〉『よし俺も・・・っていけるかーいw次回の感想も楽しみにしてるぞw』

〈Yume〉『リダごめんね><夏休みにみんなで栃木いこ!』

〈Pyonkichi〉『栃木オフじゃー!』

〈Daikon〉『餃子・・・』

〈Zero〉『だいは餃子好きかw』

〈Daikon〉『う、うるさいわよ!』

〈Jack〉『あ、だいが女の子なったーーーーwww』

〈Daikon〉『ああもう!』

〈Yukimura〉『ツンデレ?』

〈Daikon〉『ちがうわよ!』

〈Pyonkichi〉『いや、まじ絵に描いたようなツンデレ』

〈Yume〉『しかも巨乳美人』

〈Gen〉『ほほう』

〈Daikon〉『ギルド抜けるわよ?』

〈Yume〉『ごめんなさい』

〈Pyonkichi〉『すんませんでした』


 一度火が付いた会話はけっこう盛り上がった。

 しれっとだいも素を出したし、ちゃっかり次回予告したゆめナイス。


〈Yume〉『ちなみにイケメンゼロやんは彼女なしらしいでーす』

〈Zero〉『おい!』

〈Pyonkichi〉『始まる争奪戦』

〈Zero〉『なんだそれ・・・』

〈Jack〉『うちのギルドのヒロインはゼロやんだったのかーーーーw』

〈Yukimura〉『ゆめ、切り替えはやい・・・』

〈Yume〉『人生は有限だからね!』

〈Daikon〉『そのポジティブは尊敬するわ・・・』

〈Pyonkichi〉『ちなみに争奪戦エントリーは現在3名』

〈Daikon〉『待って、それ私もはいってるの?』

〈Jack〉『ギャルゲーじゃーーーーんwww』

〈Yukimura〉『イケメンは罪?』

〈Zero〉『・・・俺はじめてギルド抜けたくなったわ』

〈Yume〉『は?』

〈Pyonkichi〉『その選択肢は承認されてませんね』

〈Zero〉『だいのときと反応がちげえ!!』

〈Gen〉『結婚はいいぞー。子どもは可愛いぞー』


 そこからしばらくリダと嫁キングの出会いの話が続いて、けっこういい話を聞いて、みんなでわいわいする時間が終わる。

 一人でいるのに、一人じゃないみたいで、こうやってみんなで話すのは、ほんと楽しい。


 いい気分で寝れそうだけど、まだ寝ない。

 さて、じゃああたしたちの本題といきますか。


山村愛理>独身女子会『さて』22:31

山村愛理>独身女子会『素直じゃないねぇ、菜月ちゃん』22:31

平沢夢華>独身女子会『エントリーしてるくせにーw』22:32

里見菜月>独身女子会『う、うるさいわね!』22:33

平沢夢華>独身女子会『ゼロやんのこと好きなんだねーw』22:33

山村愛理>独身女子会『そこの言質は取得済みなり』22:33

平沢夢華>独身女子会『おお、さすがであります!』22:34

里見菜月>独身女子会『冷やかさないでよ・・・』22:34

山村愛理>独身女子会『おいおい、あたしは応援するって言ったじゃーん?』22:35

平沢夢華>独身女子会『わたしも応援するよー?』22:35


 うむ。ゆめならそう言ってくれると思ってたぞ。


平沢夢華>独身女子会『あ、でも1つだけ気になることはあるけど』22:36


 って、なんだ?


山村愛理>独身女子会『なんだね?』22:36

平沢夢華>独身女子会『ゼロやんの気持ちは、優先するべきだと思う』22:37


 おおう。まぁ、そりゃそうか。正論だな。

 ゼロやんもだいのこと気になってはいるんだろうけど、たしかにそれが確実かどうかは分からない。

 話聞いてる感じ、セシルへの未練も、まだありそうだったしなぁ。


里見菜月>独身女子会『するべきじゃなく、それが一番大事でしょ』22:40


 だいの返信は、ちょっと間があった。

 それを言うのは、やっぱ覚悟いることだったんだろうな。


山村愛理>独身女子会『いいんだな?』22:41


 覚悟を確認するために、あたしはあえてそう聞いた。

 返事は分かってるけどね。


里見菜月>独身女子会『ゼロやんの気持ちは、ゼロやんのものだから』22:45


 誰かを好きになるのは、その人の自由。

 それを奪う権利は誰にもない。


 でも、だいからのメッセージを待った数分に、だいの想いが込められてたような気がして、あたしは改めてだいを応援したい気持ちが募った。


平沢夢華>独身女子会『ないとは思うけど、わたしかぴょんが好きになられても、いいんだね?』22:46


 おっと、たしかにその可能性もなくはない……って、何考えてんだあたし。


里見菜月>独身女子会『争奪戦、なんでしょ?』22:47

里見菜月>独身女子会『私はみんなも好きだから、そうなっても何も言わないわ』22:47


 だいは強いなぁ……。

 でも、そんなこと言われたら余計応援したくなるだろ。

 

 これがあたしなんだから。

 あたしの決定に文句が言えるのは、あたしだけなのだ。


山村愛理>独身女子会『決まりだな!』22:48

平沢夢華>独身女子会『だねー』22:48

山村愛理>独身女子会『あたしらはだいを応援する。ふざけるときはあるかもしんないけど、そこは決まりだ』22:49

平沢夢華>独身女子会『だいが気楽に動けるような空気作れるようにするよー』22:50

平沢夢華>独身女子会『正直、ゼロやんイケメンだし好物件だけど、そこまでタイプってわけでもないんだよねーw』22:51


 マジかこいつ!?

 あんなにべたべたしといて、マジか!?


 ゆめのぶっちゃけたメッセージに、あたしは思わず苦笑い。

 いやー、可愛い顔してゆめは敵にしちゃいけないタイプの女の子だなー。

 仲良くしててよかった。


里見菜月>独身女子会『ありがとう・・・』22:52


 その『ありがとう』が、あたしたちの友情の証。

 直接会ったのは1回だけど、LA内では1年以上一緒にやってきた仲間なんだから、当然だ。


 その言葉は、素直に受け取りたい。


山村愛理>独身女子会『頑張れよ?』22:54

里見菜月>独身女子会『うん。頑張る』22:55

平沢夢華>独身女子会『ゼロやん鈍感そうだし、まずは素直になるとこからだねーw』22:55

山村愛理>独身女子会『そうなぁwゆめを見習うとこからかw』22:56

里見菜月>独身女子会『え、それは無理・・・』22:57

山村愛理>独身女子会『そこは頑張れwww』22:58


 ゼロやんはほんと気を遣わなくていいし、なんというか居心地のいいやつ。

 だから、あたしはゆめとはちょっと違う気持ちなのかもしれないけど、あたしの『頑張れ』に込められてる想いは、誰かに言うことはない。


 あたしなんかよりも、だいの想いは大きく、強いのが分かってるから。


 だからあたしはいつもの軽口で応援していくだけだ。


里見菜月>独身女子会『で、出来る限り頑張ってみる・・・』22:59

平沢夢華>独身女子会『ふぁいと!』22:59

山村愛理>独身女子会『骨は拾うぞ!w』23:00


 こうして、あたしとゆめがだいを応援する、【独身女子会】の方針が決まったのである。



 だいの想いが、どうか届きますように。






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以下作者の声です。

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 Side Story 〈Airi〉は一旦これにて閉幕です。

 ぴょんのギルド加入から、第1回オフ会後、第2回オフ会前に密かに取り決められていた彼女たちの約束までをお送りしました。

 当初は10話くらいで終わるはずでしたが、予想以上に長くなったのは……作者の至らなさであります。

 

 ぴょんこと山村愛理は自分よりも周りを優先してしまう気遣いの人で、いつも周囲の様子を気にしてしまいます。

 誰かを優先するあまり、自分の気持ちにも蓋をすることもしばしば。

 軽いノリだったり、下ネタでボケたりするのも、そう思って見直すと違った面も見えてくるかもしれません。


 

 第2回オフ会でも大活躍のぴょんですから、ここで終わるのが物足りないと思う方もいらっしゃるかもしれません(いてくれたら嬉しいです。笑)。

 そちらも書きたい気持ちは満々なのですが、そちらはもう少し本編が進んでから、改めてSide Story〈Airi〉Season2でお送りしたいと思います。


 Side Storyの第2シリーズでは別な人物に焦点を当てます。

 その人物が【Teachers】に加入するまでの物語にする予定です。

 今度こそ、10話くらいで……。


 公開まで少しお時間をいただく場合がございますが、ご了承ください(2020/6/24現在)。


 今後ともお付き合いいただければ幸いです。

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