第4話 この坂を毎日登るのか

周りに流された結果、僕の足は交差点の先にある坂に踏み入れていた。

勾配に対しての知識はないが、おそらくママチャリ程度ではブレーキの限界を感じることになるだろう。

この坂をこれから毎日登るかと思うと、気が滅入る。

足を前というより上に出すようにスライドさせ、跳ね上がるように登っていく。

そんな入試倍率を減らす原因かのような坂でも、人は住んでいる。

坂は斜めなものなのに、家は坂とは関係なしに建っていた。

坂から見れば家が斜めだが、家から見れば坂の方が斜めだ。

そんな相対化の例題のような事実は、僕の足を止めるほどの興味を生まなかった。

と、いうよりも僕にとってそんなことよりも目下の坂の方が数倍問題なのである。

高校受験の時とはリアリティが違う。

前回のものは一度上るだけ、さらには受験への緊張感で坂だなんだとは言ってられなかったのだ。

文句を言っても、坂は低くならなないし、重力値が変化することはない。

そんな自分が選んだ高校であるにも関わらず、大きな歩幅を無意識にするほど心が乱れていた。

そんな僕の横をスーッと通りけるものがあった。

なんてことはない自転車だった。

なんてことはないがなんてことはないのが問題である。

後ろを二度見しても坂に変化はない。

そんな坂をスポーツバイクでも電動自転車でもなくただのママチャリが登り切ったのである。

乗っていた少女ははつらつとした顔で僕と同じ服だった。正確には制服は男女で異なるものであったため、色使いが違う程度ではあった。

そこで僕はもう一度驚嘆した。

この少女はいわゆる地元民ではなく、ここに通う生徒なのだ。

推察するに駅近くの駐輪場に自転車を止めていたのではないか。

僕と同じように、この坂を生まれながらにしてみていたわけではないだろう。

僕はとんでもない高校に来てしまったのか。

文武両道が学校の特徴とはいえ、学校側のテンプレとして一蹴していた。

それがまさか誇張なしだったとは。


後から考えれば、この特徴的な被害妄想は入学式特有の不安によるものであった。


そんな未来のことはつゆ知らず、僕はかぶりを振って今見た光景を忘れようとした。

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