『病魔という悪の物語』を読んで

今村広樹

本文

 昔、ある女性おんなのひとがいました。彼女は料理が好きで、裕福な家庭で料理を作る今でいう派遣のお仕事をしていました。しかし、彼女には彼女も知らないある秘密があったのです……。

 『病魔という悪の物語』は、『腸チフスのメアリー』という女性の伝記です。しかし、彼女はあらすじにも書いた秘密以外は普通の女性でした。なので、この伝記も推測や当時の公衆衛生についての記述についやされています。

 さて、先にあげた名前からもわかる方もいるでしょうが、彼女はいわゆる『保菌者キャリア―』といわれる存在、少なくともそう疑われていたことによって名前を残してしまった人物です。

 しかし、彼女は実際はどのような人物だったのか?

 彼女はなぜこのような境遇におちいってしまったのか?

 そして、彼女を追いつめたものは?

 彼女に、文中に描かれたような仕打ちはなされるべきだったのか?

 本書は、そのような疑問を、彼女への共感をこめて描いていきます。

 これは、いま起こっていると、うり二つです(とくに、彼女が『有名』になっていく過程は、群集心理やマスメディアとの関係性をからめて描かれる)。

 まさしく、今読むべき本ではないでしょうか?

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