イライラ系女子
ここみさん
イラッとする
私は、自分でもよくわからないタイミングやしょうもない物事でイラッとする
「…あ、おい片倉。昨日出された課題のことなんだが」
会ってすぐに挨拶がないことにイラッとする。すぐに本題に入るなんてどれだけい生き急いでいるのよ、この男は。しかも何回も言っても直さないし
「あのねぇ藤木君、何回も言っているけど、いきなり本題に入るのはどうかと思うわよ。せめて挨拶くらいしなさいよ、親しき仲にも礼儀ありって言うでしょ」
「あぁ、すまない、次からは気をつけるよ」
この「次からは気をつける」という考え方もイラッとする。だから今回は許せと言わんばかりの物言いだ
「それで、昨日の課題がどうかしたのよ」
「あぁ、昨日お前とやった課題だがあの後見直してみたら、お前の問3と問8が間違っていたと思うんだ」
正直お前って呼ばれるのもイラッとする。ちゃんと名前で呼びなさいよ
そして気がついた段階で連絡をしてくれなかったことにもイラッとする。お互い連絡先を交換し合っているんだし、今話した内容をそのまま文章にして送信すればいいだけじゃない。そもそも、メール無精なところにもイラッとする
「…はぁ」
「どうかしたのか、体調でも悪いのか」
「いえ、学校についたら直さないといけないことを思うと、少し頭痛が痛くて」
「頭痛が痛い、というのは日本語として間違っているぞ」
こういう指摘にもイラッとする。誤用したのは私だからイラッとするのは筋違いなのだろうけど、どうして一言「大丈夫か?」と心配してくれないのだろうか
「飲みかけだが、水でも飲むか?」
「…今更あなたの飲みかけなんて気にしませんよ。何年の付き合いだと思っているんですか」
「それもそうだな。俺もお前が口をつけたものとか気にしたことないな」
意識されたことがないことにもイラッとするし、言わなくてもいい情報を言ってくるのにイラッとする。間接とはいえキスという行為をしているのに、この男は無表情で声の抑揚一つ変えずに淡々と飲みかけのペットボトルを私に差し出してきた。そもそも、なんで朝一で会ったはずなのに水が既に飲みかけなのよ
私は藤木君から手渡された水を二口ほど飲んだ
そして自然な流れで、濡れた唇を制服の袖で拭おうとしたところをスッと止められた
「女の子があまりはしたないことをするもんじゃない」
こういう紳士ぶっているのか保護者ぶっているのかわからない、妙なムーブにイラッとする。さっきまで私のことを女として意識したことはない、みたいなことを言っておきながら、はしたないからわざわざ口元をハンカチで拭けと言ってくる。どの口が言う、口元の話なだけに
とまぁ朝の僅かな会話だけでもここまで私はイラついてしまう
そして学校についてからも、休日一緒に過ごしていても私のイラつきは止まらない
いつも眠そうな目にイラッとする。机の上に座るのにイラッとする。ノートが綺麗なのに書いてあることがメモ書き程度なのがイラッとする。
人の顔と名前を覚えないのにイラッとする、ついでにそれが周りから許容されているのにもイラッとする。読んでいる本が小難しいことにイラッとする。話しかけても反応が薄いことにイラッとする。授業中寝ていることが多いのに成績が良いのがイラッとする。席が後ろなのに用事がないと話しかけてこないことにイラッとする。逆に用事があると私の事情お構いなしに用件を話してくるのにイラッとする。碌にコミュニケーションをとっていないのにクラスメイトから頼られているのにイラッとする。
ジャージ姿が妙に似合うのにイラッとする。常にコーヒーの缶が机に置かれていることにイラッとする、そして常にコーヒー臭いのにもイラッとする。昼食が毎日購買のパンであることにイラッとする。試しにお弁当を作ってあげたら食費が浮いたという隠さない感想にイラッとする。味のレビューが妙に的確なことにイラッとする。好きな食べ物も嫌いな食べ物も眉一つ動かさずに食べるロボットじみたところにイラッとする。食べるのが早いのにイラッとする。食べ終わった後に寝るわけでもなく無言で私の食べるところを眺めるのにイラッとする。食後の眠気とも戦おうとしないところにイラッとするし、それを若干教師が諦めているのにイラッとする。
必要以上にお金を持ち歩かないところにイラッとする、そして予想外の出費があった場合私に借りに来るのにイラッとする、その上返すときにはちゃんと利子をつけて返すのにイラッとする。部活動に所属しない理由を教えてくれないことにイラッとする。
一緒に出掛けるとき私よりも前に待ち合わせ場所にいるのにイラッとする。用事が済んだら即解散しようとするところにイラッとする。どんな映画を見ても終始真顔でいるのにイラッとする、そしてその割にはかなり多面的に見ているところにイラッとする。買い物の効率的なルートを計算しだすのにイラッとする。服や鞄のどの部位がいくらするのか考察しだすのにイラッとする。お世辞を言わないところにイラッとする。時間とお金の管理がシビアなのにイラッとする。大抵のゲームが上手いことにイラッとする、というよりマウントを取れるようなジャンルがないことにイラッとする。
部屋に遊びに来るとき手土産を毎回持ってくるのにイラッとする。私が困っていると何も言わずに手伝ってくれるのにイラッとする。落ち込んでいる時に隣に座って私の言葉を待ってくれるのにイラッとする。私の誕生日にわざわざプレゼントを用意してくれたのに恩を着せようとしないところにイラッとする。自分の誕生日に私としか予定を入れないのにイラッとする。未だにクリスマスプレゼントをサンタのふりして私の枕元に置こうとするところにイラッとする。バレンタインのチョコを私から貰う前提で貰えるまで甘いものを控える行動するのがイラッとする。ホワイトデーのお返しがきっちり三倍なのにイラッとする。
恋人に間違われることにイラッとする
「いやあんたら恋人じゃん、何を今さら」
「今の話聞いてて何でそうなるのよ。そりゃ藤木君とは付き合いは長いけど、それはあくまで幼馴染とかそういう感じよ」
友達のよっちゃんに自分の怒りっぽいところを相談したら、頓珍漢な言葉を返された
「まぁなんでもいいんだけどさ、惚気話を聞かされてイラッとした私はどうすればいいかな」
そう言ってそのまま教室を出て行き、入れ替わるように藤木君が入ってきた
「まだ帰ってなかったのか……どうかしたのか、俺の顔を見て」
藤木君との話をすると聞いてた人がイラッとするのに、イラッとする
イライラ系女子 ここみさん @kokomi3
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