2 異変

 それから主にクロードが近くのお店の店員さんなどから情報を集めて、予約無しでも止まれそうな宿をいくつかピックアップした。


「とりあえず一つ一つ当たってみましょう。しばらく歩く事になりますが大丈夫ですか?」


「うん、私は大丈夫」


 もうあんまり体力は残っていないけど、必要最低限の移動をする位の体力は残ってるし、最悪無くても気力で頑張れると思う。

 というか頑張る。

 あんまりクロードに迷惑は掛けられないし。


 ……そんな訳で今日泊まる宿の確保の為に私達は歩き出した。

 そして見慣れない景色を眺めながら、時折クロードと雑談を交わしつつしばらく歩いた頃。


「……ッ」


 感じ取った異変に思わず足を止めた。


「どうしましたお嬢」


「分からない……分からないけど……ッ」


 そう口にして……気が付けば体が動いていた。

 もう疲れ切ってしまっている体から力を振り絞って真っすぐに。

 ……具体的に何が起きているのかは分からないけど、それでも。


 それでも今動かないと取り返しの付かない事になるような気がする。


「あ、お、お嬢!」


「ごめんクロード! 着いてきて!」


「言われなくても!」


 そう言ってクロードは速攻で私に追いついて来る。


「一体急にどうしたんですか!?」


「凄く嫌な感じがするの」


「嫌な感じ?」


「とにかく、さっきまでは何も感じなかったのに……なんて言ったら良いのかな……とにかく嫌な感じ! 今行かないと取り返しが付かない事になるかもしれない」


「取り返しの付かない……わ、分かりました」


 クロードは納得するようにそう言って……。


「うわ! く、クロード!?」


 私を抱き上げてきた!?


「お嬢が一体何を感じ取ったのかは、俺にはちっとも分かりませんが、お嬢はこういう時に下らない嘘はつかないでしょう。それはいつも真面目に聖女の仕事をしていた時の顔です。実際本当に何か起きているんでしょう。この方が早いしお嬢体力限界でしょう。俺が走りますよ」


「く、クロード……ありがと」


「いえ」


 そしてクロードは一拍空けてから言う。


「……正直あまり良い事は待っていなさそうなんで、そんな所にお嬢を連れて行きたくは無いんですけど……お嬢が取り返しがつかなくなるなんて言い出したら、それこそ行かないと自分達にも後々良くない事が起きるんじゃないかって思います。だから連れていきますけど……あまり無茶はしないでくださいよ」


「うん……分かってる」


「ヤバそうな事で俺に出来る事は俺がやるんで」


「……クロードも無茶しないでね」


「……分かってますよ」


 本当に分かっているのだろうか?


 ……と、とにかく。


 私達はクロウフィール王国に辿り着いて早々、何かに巻き込まれる事となった。

 いや……違う。

 巻き込まれに行く事になった。

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