3 元聖女の私にできる事
「止まってクロード」
やや周囲の視線が恥ずかしくなりながらもクロードに抱き抱えられてしばらく移動した所でクロードにそう声を掛ける。
「は、はい……で、お嬢。此処に一体何が? 見た所異常は無いようですが……」
辿り着いたの特別変わった様子の無い市街地の一画。
クロードの言う通り、何の異常も視界には入らない。
……視界には、だけど。
「……嫌な感じの正体はこれだ。うん、急いで来て良かった」
クロードに地面に下ろされた私は、空に視線を向けて呟く。
「……この一画だけ、聖結界が壊れかかってる」
「なるほど、一大事じゃないですか……流石お嬢、良く分かりましたね」
クロードが感心するようにそう言ってくれる。
だけどそれに素直に喜んでいる場合じゃない。
「それでお嬢、此処に足を運んでどうするおつもりで?」
「……多分こんな事になってたらこの国の聖女の人も異変に気付くと思う。だから何かしらの手はうちに来る筈だけどまだ来てない。だったら……私が応急処置をする」
「できるんですか? 他人が張った結界ですよ?」
「そんなに難しい話じゃないよ。穴が空いた所に被せるように蓋をするみたいな感じだから」
「なるほど……」
「とにかく急がないと……始めるよ」
そう言って私は空に向かって手を伸ばし、結界を張る為の魔術を構築し始めた。
大丈夫。簡単。
この位なら私でも満足にやれる。
……時間もそれ程掛からない。
そして体感時間にして約一分程。
「よし、できた」
「は、早いですね。一分掛かってないですよ」
「まあ馬車で使ってた結界みたいに特殊なものでもないし、規模も凄く小規模。この位ならすぐにできるし体への負担も殆ど掛からないよ」
「……とりあえず最後の一言を聞けて俺も一安心ですよ」
多分その辺りも心配してくれてそうだったから言って良かった。
……とにかく、これでひと安心だ。
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