とある料理人の旅のお話〜それは無茶振り過ぎます!!!

カグネ

プロローグ

「ちょっと貴女旅に出なさい」

は?

「今以上の料理が作れるようになるまでは帰ってこなくていいわ。」

子供の頃から仕えてきた主に突然そう言われ荷物と共に屋敷の外に放り出された。

え???は??嘘…でしょ??

「それは無茶振りが過ぎますって主様ああああああああぁぁぁ!!」

思わず屋敷に向かって叫んでしまった。

どうしてこうなった???



突然だが私の名前はノア。

七つの大罪の1人である【 暴食】のベア・リリー様に使えているしがない料理人である。

私の家は由緒ある家系らしいが今はそこの所は置いておく。

私の主であるリリー様とは私が幼い頃からの付き合いである。

私は小さい頃から料理を作るのが好きで大人になったら料理人になると親に言い続けてきた。

親は七つの大罪の方々のどなたかに使えて欲しかったみたいだが私が何度も言っているうちに諦めたみたいで何も言われなくなった。

これで安心して料理人になれる!

と喜んで料理の練習をする日々。

他の子共達が外で遊んでいる中私は1人厨房に篭って料理の練習をしてきた。

料理本を読んで自分で作ってみたり料理長に料理を教えて貰ったりと忙しかったがとても充実した日々だった。

だが、練習していくうちに今作っている料理だけじゃなくて様々な国の料理を作ってみたいと思うようになってきた。

私は両親に相談して旅をしたいと言うつもりだったが、丁度日が悪くデビュータントの日と被ってしまい親に話すことが出来なかった。


私達魔界の住人は12歳になったらそれぞれの土地を収めている七つの大罪の方々の屋敷に行って挨拶をしなければならない。

運が良ければそこで七つの大罪の方に引き抜かれて出世をする事もある。

親から選ばれる事は大変名誉なことである、と言われ続けてきた子供たちは自分が選ばれることを夢見て屋敷に向かうのだ。

まぁ、私は全く興味がなかったが。

どうせ私は選ばれないだろうし、旅に出たいからそもそも選ばれたくない、と思っててもそれを口に出すことはしない。

そんな事を言ってみろ。

親は卒倒し周りからは罵倒される。

そもそも七つの大罪とは魔王様の次に強い人を表す称号である。

私達魔人は強さにこだわる。

その為血の気盛んなものも多い。

そして強いひとに従う傾向にある。

なので魔王や七つの大罪になる方法も世襲制ではない。

魔王や七つの大罪の一員になりたければ挑戦状を出して勝たなければならない。

勝てたらなれるし負けたら鍛錬し直してまた挑める。

強いものが生き残るこの魔界ではそれが当たり前のルールだ。

まぁ今の魔王様や七つの大罪の方々はとっても凄い方々なので負けることはほぼ無いと言っていい。

なんせここ500年は誰一人変わっていないらしいからね。

おっと…話が逸れた。

要は私もそこに行ったのだ。

ベア・リリー様の屋敷に。

私の住んでいる場所は【暴食 】のベア・リリー様が収めている土地でベア・リリー様の屋敷まで行かなければならない。

幸い私の家からは近かったので歩いて行くことができたが遠い人は親に頼んでテレポートや馬に乗ってきたり変身したりしてくる。

今まで何回も外から見たりしたが中に入ると威圧感が凄い。

屋敷に入っただけでこれなのだ。

実際にあったらさして強くもない私はベア・リリー様の威圧で失神したりしないかが心配である。

失神して怒ったりしないよな…?

会う前から少し不安になったが気を取り直して集合場所であるホールに向かう。

ホールに着くと10分前なのに結構集まっていて驚いた。

魔人っていうのは結構時間にルーズなものなのだ。

私?私はしっかりしているから10分前行動なのだよ!!

…調子に乗った。すまん。

でもこうでもしないと1人では耐えられないのだ。

知らない人がいっぱいいる中で1人はきつい。

別に友達が居ないわけではない。

コミュ障という訳でもない。

自他ともに認める料理馬鹿であり休日の殆どを料理の練習につぎ込んでいる私でも友達はいるのである。

ただ残念なことに1歳上か1歳下の子しかいないのだ。

早生まれなので仕方ないだろうとそこら辺は諦めている。

まぁ…もうすぐ始まるし大丈夫だろう。

そんな事を考えていると

バンッ!!

と大きな音を立ててホールの扉が開いた。

「ベア・リリー様のお通りです。」

ベア・リリー様の斜め後ろにいた執事のその言葉でザワついていたホール全体が静かになった。

初めて見るベア・リリー様はとても綺麗だった。

天使の輪っかが出るほどツヤツヤな茶色い髪に白い陶器のような肌。

ぱっちりで二重のつり目にプルプルしてる唇につけられている赤い口紅は彼女によく似合っている。

スタイルも良くて今着ている派手で露出の多いドレスを着ていても違和感を感じない。

違和感よ。仕事しろ。

正直女でもクラりときそうなその美貌に私が男だったら惚れていたかもしれないと客観的に見る。

現に周りを見回すと男女関係なくベア・リリー様に見惚れている奴らがそこかしこにいる。

ベア・リリー様は慣れているのかそんな周りの様子を気にしないで話を始める。

「まずは12歳おめでとう。」

彼女が話し始めると今まで感じなかった威圧感が出てきて私達を押し潰そうとしてくる。

が 、倒れないように必死に足に力を入れて踏ん張る。

「君達は一応今日で成人を認められた訳だが、まだまだ君たちは幼い。」

「困ったことがあれば周りの大人になりなさい。きっと助けてくれることでしょう。」

「今年も変わらず挑戦状は受け付けています。倒せるものなら倒してみなさい。」

「君達に魔神王様の加護が授かりますように」

そう言ってベア・リリー様は話を終わらせた。

その瞬間重くのしかかってきた威圧感が消えてふっと息を吸う。

ベア・リリー様がホールから出ていく前。

斜め後ろにいた執事に一言言って彼女は出ていった。

はぁーとっても綺麗な方だったなぁ。威圧感やばかったけど。

ベア・リリー様も居なくなったしもう帰っても平気でしょう。

私はそう判断してホールから出ようとした時…

「ノア様お待ちください。」

と先程ベア・リリー様の斜め後ろにいた執事に声をかけられた。

何故だろうすっごく嫌な予感がするのだが???








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とある料理人の旅のお話〜それは無茶振り過ぎます!!! カグネ @tukuyomikagune

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