第4話
はぁ、変な緊張をしてしまった。ただあの場で告白をされなかったという事はまだどこかに二人は居るはずだ。
だけど、あそこで何も起こらなかったのは一時の救いに過ぎない。私はもう一歩彼の元へ進むと決めたんだ。校内を駆け回る。
「どこにいるんだろう」
二人を探すが見当たらない。私が思いつく限りの場所は探したはずだけど、どこにいるんだろう。もしかして今日は何もなく帰ってしまったのだろうか。それだったら私は少なくとも今日に泣き言を言わずに済むだろう。
それもいいかもしれないと思いつつも虚無感が全身を巡り疲れて階段に座り込む。
私はこんなにも彼のことを考えていることはあっただろうか。無かったかもしれない。
だけど今日、確信したことは彼が心のそこから好きだということ。今日に告白をしようと決心した彼女には申し訳ないと思うけど、彼を取られたくない。彼に私を好きになってほしい。彼との思い出が走馬灯のように思い出される。
視界がぼやけ始めるとコツコツと足音が聞こえきた。先生かもしれない。こんな表情で先生にあったら心配されてしまう。立ち上がりその場を去ろうとすると二人の男女の話し声が耳を過る。
「急に話ってどうしたの? 何か相談事? 力になれるか分からないよ?」
彼の声だ。ひょっとするとこの上のフロアで告白が行われようとしているのかもしれない。
「相談事ってゆうわけじゃないよ。 ただ聞いてほしいことがあるんだ」
声が上擦っている。恐らくとても緊張しているのだろう。それはそのはずだ。私だって同じように声が震え頭も真っ白になると思う。
「ふーん、それで? 何を聞けばいいのかな?」
彼はこれから告白されるとなど頭の片隅にもないのだろう。楽天的というかリラックスした様子だ。
「実は私、ずっと前から貴方のことが好き、だったの。 急にこんな事言われても困ると思うし・・・・・・ そんな風に私を急に見てほしいなんて言わないけどそうゆうこと、だから」
私を脱力感が襲う。彼は何と返事をするのだろう。先を言って欲しい気持ちとそうでない気持ちとが相反しながらも共存する。
「そう、なんだ・・・・・・ 勇気を出して伝えてくれてありがとう。 その気持ちは本当に嬉しいよ。 」
「なら」
「ただごめん。 最近打ち解けたというか仲良くなれたというか、そんな子がいるんだけどさ。その子のこと少し気になってるんだ。 だから君の気持ちには答えられない。 本当にごめん」
「そっか、好きなんだねその子のこと」
「どうかな・・・・・・ まだ自分でもよく分からないや」
「きっと気付いてないだけで、好きなんだよ。 そんなにその子の事を想ってるんだもん。 大切にしてあげなよ。 もし振られたら私のとこに来てもいいよ」
と笑いながら彼女明るく振る舞う。
「時間作ってくれてありがと、また明日ね」
その言葉を最後に彼女の告白はピリオドを打つ。私にあんな強さはあるだろうか。無いと断言できる。彼に振られたりしたら泣いてしまうと思う。それでもこの場では安心してしまった。彼が告白を断ったから。人が振られたのに内心喜んでいるのかも――
声に出せない言葉を思惟していると、その場に残された彼は独り言を懺悔のように零す。
「嫌な奴だな俺って。 勇気を出して告白してくれた子に俺が告白する勇気をもらってふっちゃうし」
――そんなことは無い。私の方が嫌な奴だ。
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