第2話
私は不幸と幸福の釣り合いが取れていないと不合理だと思ってしまう。
だってそうでしょ、裸足で針を歩けるほど人は強いわけがない。そんなの痛みに鈍感なだけ。
感情が感情を殺すなんて残酷すぎるもの。
新たな日常、彼との出会いからここまでの日々は果てしなく長くも同時に一瞬だった。
初めは私の一方通行の恋路だと思っていた。
小さな蕾を私は日々育てる。段々と大きくなり花が咲き誇る頃には、彼は花の芽を芽吹かせようとしていた。
それだけで麗しく感じた。こんな幸せがあるのかと堪えられなくなるほどだった。
出会いは廊下ですれ違っただけ。大それた
出来事があったわけではない。それでも私の視界はその人に奪われた。
それからはその人が私の世界の中心になり、色彩を塗り替える。
移動教室の時に廊下で横目に気付かれないように見たり、教科書を借りる時にその人が在籍する離れたクラスの友人を頼ってみたり、些事ながらその人を見るだけで鼓動がバクバクと高鳴る。顔の綻びは収まりそうにない。
だけどそんな日々が続くだけで満たされる私ではなかった。
友人を頼り話す機会を作ってもらった。雑談をしてる友人に話しかける体で会話に混ざり彼と初めて御喋りしてみる。
遠目で見てたよりも愉快というかよく笑う人だと知った。友人達と冗談も言い合いながら馬鹿話をする一面も初めて知ることができた。
そんな彼のいるクラスに通いながら少しずつ私とも話をしてくれるようになった。
昨日は何のバラエティを見ただとか、最近の流行りの曲を教えあったり、距離は縮まっていたはず。
そこからもう一歩踏み出すまでは時間がかかった。
友人が教えてくれた話が引き金になり私は焦りを覚える。それは彼に告白をした女の子がいるという話だった。私と彼と同い年の3年生。
このままで良いとか浮かれてた訳じゃない。ただ他の子が彼に告白をするはずがないという無意識が私の心にブレーキをしていたのかもしれない。
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