笑う君へ

エアコン eakon

第1話

 人生はハッピーエンドであるべきだ。苦労は人それぞれ、千差万別。だが、その数だけ幸せがあっても罰は当たらないはずだ。僕はそう思い続けたい。


 今日はいい天気だね、僕は話しかける。

 彼女は笑う。

 4月2日、もすうぐ正午に秒針を揃える頃。桜舞う病院の花木道を二人で進み歩く。

 今日は陽射しも強く、病室にこもりきりの彼女にはいささか厳しい猛暑になりそうだ。

 春風は彼女の髪をなびかせる。花弁が舞踊り桜のカーテンが僕らの行く先を先導する。


 彼女は笑う。

 僕は笑うのは苦手だ。笑うことだけじゃなくて、表情を表現することが苦手だ。

 そんな僕と相反する彼女は笑い続けている。君には何が見えているのかな。何を見て笑っているのかな。

「教えてくれよ」

 僕の声は行き場を失い霧散する。

 彼女は笑い続ける。

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