等級概念を破壊せよ 〜ゴミF等級が!と罵られた少年は、実は至高の革命家の血を受け継ぐ【天性者】でした。バカにしたやつをざまぁして、学園最強へと成り上がる〜
Episode32 エキシビションマッチ、開幕 ※3人称
Episode32 エキシビションマッチ、開幕 ※3人称
時は、エキシビションマッチ開幕の数日前にさかのぼる。
この日、F組は歓喜に湧いていた。
「やった、やったよフィオナちゃん、ユリアちゃん! みんなで……S+を取れたんだよ!」
「ええ。こんな日が来るなんて夢のようよ」
「うん……。わたしも、みんなで最高の成績がとれて……嬉しい」
「うぅ、嬉しすぎて泣いちゃいそう……」
感極まって、メルは涙を浮かべている。
F組でS+をとった者はいない。やる気のない教官陣、周りからの理不尽な差別に、いつも悩まされてきた。それが今はどうだ。F組の9人全員がS+を取ることが出来た。
君たちならできる。自信をもっていこうと。
それが今回の結果だ。
「なぁなぁ、掲示板見たかいな!?」
「掲示板ならとっくの昔に見たわよ。F組全員がS+取って、学園中が大騒ぎしてるわね。ふふっ、ざまあみなさいって感じよ」
「ホンマにそれ。A組やS組の奴らが、俺たちの成績を顎外れるくらい驚いとったんやで!? 写真に撮って額縁に飾りたいくらいやったわ〜!!」
興奮するリヒト。
フィオナも嬉しくて微笑みをを返す。
今日は最高の日だ。
「でも
「なんたってエキシビションマッチが控えているもんなぁ」
フィオナとリヒトの視線の先にいる人物。
「まずは全員、おめでとう。そしてありがとうと言わせてくれないか。僕がゲラマニ理事長にF組の解体について提案できたのは、このバカバカしい話を真面目に聞いてくれて、信じてついてきてくれたみんなのおかげだ」
「みんな……バカバカしいなんて思ってない……よ?」
「ユリアの言う通り。みんなも心のどこかでは、F組の学習環境に疑問を抱いていた。でも誰も言い出せなかった。みんなの気持ちを代弁してくれて、こちらこそありがとう。感謝しているわ、アスベル」
「そのお礼はF組の解体が成功した時でいいよ」
「うん」
ゲラマニ理事長がF組の解体にこぎつけた条件は、二つ。
長期休み明けの定期試験でF組全員がS+を取ること。
エキシビションマッチでアスベルが優勝すること。
一つ目はなんとか達成した。
「頑張りぃやアスベル。おまはんなら出来るで」
「……頑張って、アスベルくん……」
「頑張ってください、アスベル君。私、応援しています」
「頑張りなさいよ、リーダー」
リヒト、ユリア、メル、フィオナ。F組の他のみんな。
みんながアスベルを応援している。
A組やB組にもアスベルを応援する人たちがいるだろう。
「ありがとう。必ず勝ってくる。そして、F組の解体と学年の再編を実現させてみせるよ」
◇
エキシビションマッチ。
参加は生徒の自由だが、ベスト16まで進んだ者には実技の成績として加点される。
学年ごとに分けられているわけではないため、毎年3年生の優勝が多い。
でも今年は違う。
小等部時代から異例の強さを誇るヨハネ皇子が優勝するのではないか、そんな話が濃厚だ。
「3年生ですらヨハネ皇子が勝つだろうと予想してるんだね。俺としては、もうちょっと彼に期待をかける人が現れてもいいんじゃないかって思ってるんだけど」
「アスベルは5の月の後半で編入してきた。特別授業で彼を知っている1年生ならともかく、2年と3年はアスベルのことを知らない。その点、ヨハネ皇子は凄まじい知名度だからな」
「ほぅ」
赤髪の青年。
学園の卒業生でもある
「そこかしこにヨハネ皇子ファンと思われる弾幕が張ってある。1年だけでなく、2年や3年にもファンがいるんだな」
「皇子のステータスだが、いま現在で彼を上回る魔導士は学園にいないらしい。実質の学園最強だと教官の間では囁かれている」
「なるほどね。そういえば
「そうだな。まぁ、どちらにせよ私も負けるつもりはないがな」
「さすが」
静かに返事をするのは黒髪の美少女・マクロネア。
彼女の属するラクバレル財団は、ケルト商会に見切りをつけた
マクロネアとヴェルディの関係は雇い主と従業員。
いや、姫君と騎士といったところか──
「では私は控室に戻るぞ」
「ああ。頑張ってこいよ」
去っていくマクロネアの背中を見送るヴェルディ。
と──
「──おやおやおやおやぁ、めっずらしい顔があると思ってこちらに出向いてみれば、ヴェルディ・ルチア・ベルベット君じゃあアリマセンか」
「いきなり登場して人を驚かせるクセ、お変わりないですね。ゲラマニ理事長」
「ニンゲンの表情は観察してこそ面白い。ワタシのような長生きした者には、これくらいしか生きがいがないのデスよ。──っとそれより、ヴェルディ君。自分が剣術を教えた人間がどんな活躍をするのか、見に来たのデスか?」
「そうですよ」
教え子の言葉に、ますます笑みを深めるゲラマニ理事長。
「では共に見届けるとしまショウか。学園に変革がもたらされるその瞬間を──」
超満員の屋内競技場。
進行係の女子生徒が、展望テラスから快活な声を挙げる。
『おまたせいたしました!! エキシビションマッチの司会進行を進めさせていただきます、3年B組第3Grのミリアです!! どうですかみなさん、盛り上がってますかっ!!?』
雄叫びに似た生徒たちの声が会場を包み込む。
エキシビションマッチは生徒の娯楽の一つ。9割が貴族という面々ゆえに、見に来る観客もそうそうたるメンバーだ。参加する生徒の親はもちろんのこと、各界の著名人、皇都を護る《
学園内外を問わず注目されている。
『エキシビションマッチ第一回戦、一人目の選手の入場です。どこまでいくのかこの男! わが聖ハンスロズエリア学園に編入して早々、あの
1年生と2,3年生で反応が違う。
アスベルを知らない2,3年生は、いきなり出てきたF組の少年に戸惑いの表情を見せている。中にはF等級だからとブーイングをする生徒もいた。
『続きましてその相手は、3年生イチの重戦士と呼ばれるこの男!! ロイード・サル・エリオント選手です!!』
どすん……っ。
重量感のある足音を響かせて、二メートルを超える大男が登場する。
筋骨隆々とはまさにこのこと。
丸太のような太い腕をアスベルに見せつけたのはロイードという生徒。
勝った。
こんなチビ1年生相手にこの俺が負けるはずがない。
そんなことを考えながら、ロイードは大声を張り上げてアスベルを挑発した。
「今からでも遅くはねェぞおチビちゃん。怪我する前にさっさと帰りな」
「怪我が怖くて試合なんて出ないさ。あと、優勝しなくちゃいけないから勝たせてもらうよ」
「優勝だとぉ? 1年生のくせによくそんなことが言えるな。よし、俺がおまえに現実ってやつを教えてやるよ」
準々決勝まではダメージカウント型。体につけた宝石が赤く光るまでダメージを与えたら試合終了だ。
ブザーが鳴り響いて試合が開始される。
真っ先に踏み込もうとするロイードの真横を、恐ろしく速い
「お────ッ!?」
「────悪いね」
うめき声をあげてロイードが倒れる。
観客のほとんどは何が起きたのか理解できなかった。
無理もない。
それほどまでにアスベルの動きは速すぎた。ただ走って、すれ違いざまにアスベルの剣がロイードの腹を叩き上げた。人が習得できるスピードを簡単に凌駕した一太刀は、いとも簡単にロイードの意識を奪い去った。
『一瞬っ!! 瞬殺とはまさにこのこと!! F等級のアスベル・F・シュトライム選手、開始わずか数秒でロイード選手を倒しましたッ!!』
その瞬間、会場は大いに沸いた。
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