しょくぎょう!2

「くっくっく、ぷぷぷ、あーっはっは!!いひひひひ、笑えるわね!」




「黙れこの野郎!」




「私は野郎じゃありませーーーん!!」




 エーフィは目にうっすらと涙を浮かべながら俺の肩をバシバシとたたく。


 よくそこまで笑えるな、というくらいに声を上げて笑い続ける。




「……このアホ。飛べない天使はただの人だろ」




「はぁ!?なんですって!この天使様を今なんていったの!?」




「エセ天使っていったんだよ、光を出せるだけの役立たずが!」




「な、なによ!天使の職はね、スキルをたくさん手に入れられるのよ!」




「スキルってなんだよ!!」




「スキルはスキルよ!!」




 説明しろよ!わかんねえよ!!


 俺の想像通りでいいのか!?この世界はそんなに甘くないぞ!?




「スキルって言うのは簡単に言えば特殊技のことだね。僕の剣を出すのもスキルの一つだよ」




 甘かったわ!




「私の素晴らしいスキル習得に比べて暗殺者?盗賊?はん、暗殺者なんて射撃の命中率がちょっとあがって、暗いときに能力がちょーっとあがるとか盗賊は気配を消すスキルだとか相手の気配を感知するスキルだとかそういうのしかないただのクズ!ゴミじゃないの!」




「は?」




 なんだって?暗いときに能力があがる?射撃の命中率があがる?気配を消すスキル?相手の気配を感知するスキル?


 …………勇者らしとは口が裂けても言えないが、普通に戦うことを考えるなら悪くないかも?




「凄いじゃないですか!私ちゃん驚きですよ!」




 今まで固まっていた私ちゃんが声を上げた。それで意識を取り戻したかのように仮面とサタンもしゃべり始めた。




「本当ですよ、暗殺者と盗賊って!最高じゃないですか!」




「そうよ!前に読んだわ。その職をとれる人は滅多にいないけど凄く強いって!」




「そうでしたね。そもそも暗殺者の職に就ける人もすくないんですよ!」




 その言葉には嘘はないようで、目を爛々と輝かせた二人と仮面が俺に近づいてくる。




「さすが勇者様です!」




 ……せっかく転生して、勇者になるとか言われたのに結局職業が暗殺者であり盗賊であるっていうのは嫌だけど、ほめられるのは悪い気はしない。




「な、なによ。あんたたち。そいつの何がいいのよ……。どうせそいつなんて盗賊のスキル使って物を盗みまくるに決まってるわ。あんたたちも私物を盗られるわよ」




「盗らねえよ!?」




 若干三人が遠くに言った気がするんだけど……。泣いてもいいかな?




 受付のお姉さんは俺に冒険者カードを渡すと、俺の職業についていろいろ説明をしてくれた。


 暗殺者である限り、暗い場所での能力がかなり上がること。それが例え剣の能力だろうと、弓の能力であろうと。暗殺者の利点だとか。ただし、本職にはさすがにかなわない。


 さらに気配も思うままに消すことができるらしい。まあ見つかる奴には見つかるが。これは明るい場所でも使えるそうだ。


 暗殺者は多くのスキルを得られる。剣、魔法、暗殺術など。ただし、使用は暗い場所に限るとか。


 そして盗賊。盗賊は気配が消せる。そして、盗賊専用のスキル、物を盗むスキル、鍵を開けるスキル、索敵スキルなどが得られるらしい。


 なるほど、確かにこう見てみると暗殺者と盗賊っていうのは強いな。若干かぶってるけど。


 ……奇襲に限るけど。




「正々堂々と戦える剣士が良かった」




「ぷぷぷ、残念でした~。……でも大丈夫よ、ネグボッチの名に恥じない職じゃないの。……ぐふ」




 慰めるなら笑いは最後までこらえてくれよ。慰めにもなってないけどな。そもそも慰めるつもりもないだろうけどな!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る