しょくぎょう!
さて、王様に軽い挨拶をして、手錠を外してもらった俺らはさっそく冒険者として登録すべく、冒険者ギルドに向かっていた。
この冒険者ギルドというのは酒場を兼ねていることが多いらしい。
王様は俺たちに多少の資金はくれたものの、豪遊できるような額ではなかった。
財政難なのか、それとも持ち運びに困るからなのか、全員が少しずつ持ち運べる量であった。もう少しくれたっていいのに。
酒場につくと、さっそく冒険者として簡単なプロフィール的な物を書いて提出した。
プロフィールの記入の際に、ここの文字は読めるようにはなっていたものの書くことはできなかったため、エーフィに書いてくれるよう頼んだところ、
「あんた、文字書けないものね。学がないものね」
と、思いっきり笑われた。
「仕方ないですよ、勇者なら」
「だな。勇者ならそんな暇はないだろう」
「僕もそう思うよ」
……フォローが余計に胸を打つ。
違うんだ、俺だって本当は……。
そんな弁解もむなしく、記入を終えた俺たちは能力測定へと移っていった。
気持ちを切り替えよう。ここまで不幸続きの異世界生活だったが、こういう場面では俺の能力はチートだってテンプレで決まってるんだ。
なんてったって、俺は勇者。
能力を測定したら、自身の職もわかるそうだ。つまり、俺がここで能力を測れば勇者の文字が浮かんで、周りがみんなざわつくんだ。
けど、甘かった。俺は何もわかっちゃいなかった。
死んでふわふわと漂っていた時にエセ天使に運を良くしてあげるよ的な事をいわれたせいで安心しきっていたのかもしれない。
いや、転移したから、この異世界は理想の世界だなんていう幻想にいまだにとらわれていたのかもしれない。ここまでの、バカみたいな仲間のことも忘れて。
エーフィは先に測定をし、その職は『天使』だった。なんだそれ。とも思ったが、確かにあいつは(笑)がついたり明かりをともす魔法しか使えなかったりするが、一応は本物の天使だったんだ。あいつの職が天使でもなんら不思議はない。納得はできないけど。
「では、測定を開始しますね」
受付のお姉さんの言葉に少し遅れて水晶がうっすらと光り始める。後ろには仮面、私ちゃん、サタンが。そして横には天使 (笑)が。
……改めて確認すると変なメンバーだ。いや、変ってレベルじゃないぞ、こいつら。あまりにもおかしすぎる。
「はい、出ました。では、職業を記入した冒険者カードを作製しますので少々お待ちください」
わくわくと胸を躍らせながら先の言葉を待つ。緊張する。
隣でにやにやと笑っているエーフィが今はそこまでムカつかない。それより緊張が大きい。
「あんたのことだから、きっと能力全部低いわよ」
前言撤回。ムカつくわこいつ。
「お前の能力見せてみろよ。どうせ知能とか空気を読む力とかそこらへんが全部ゼロになってるんだろ!?」
「はあ!?んなわけないでしょ!あんたこそ明るさゼロとか人柄最悪とか出てくるわよ!今に見てなさい!」
「なんだと!?」
「なによ!」
そんなことを言い合っていたら受付にいたお姉さんが来て、俺に冒険者カードを渡してくれた。
「えっと、どうぞ……」
なんだか凄い気まずそうだ。顔を読み取りにくい、不思議な顔をしている。
素直に喜べばいいのか、それとも喜ぶべきでないのか、迷っているような不思議な顔。なにかあったのだろうか。
そう思いながらも冒険者カードを受け取り職を確認する。
するとそこには……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます