おうきゅう!2

「で、王様。冒険者にはどうやってなればいいんですか?」


「あ、ああ。それなら勇者様のために古文書に従ったパーティーを編成しておきました。彼らは十分に理解しているでしょう。私が話すより、彼らとともに行動した方がよいでしょう」


 あちらへ、と言って王様は俺たちを別室に案内するよう従者に指示をだす。

 返事をして従者が俺たちのほうに来る。

 金髪を頭の高いところで一つに結んでおり、きりっとした吊り目で色は青だ。金髪碧眼というのだろう。はじめて見たが……ここまでファンタジーを感じられる見た目だとは思わなかった。

 かなり整った顔で、それも俺に異世界に来たんだという興奮を与えた。……くっ、殺せとかいう女騎士が頭の中に浮かんだのは内緒だ。

 鎧に身を包んだ彼女は、「こちらへ」と、俺らについてくるように言った。

 俺は快く、鼻の下を伸ばしながら彼女についていこうとするも、つながった手錠の先のエーフィがピクリとも動かない。


「なあ、いい加減威厳直せよ、天使 (笑)のエーフィ」


「………………」


 返事がない。ただの屍のようだ。


「おいおい、機嫌直せよ。お前が立たないと移動できないんだよ」


「いや」


 はあ、と頭を抱える。

 何がそんなに気に障ったのか。天使 (笑)なんて今まで何回も呼ばれてただろうに。


「あんたみたいな根暗ボッチにいわれたってなにも思わないけどね、こんなたくさんの人に天使 (笑)って言われるのは……堪えるわ。本来この人たちは私を神のごとくたたえるはずなのに。なんでバカにされてるような気持にならなきゃいけないの……。冒険についていく天使の唯一といってもいい楽しみなのに……」


 人々に敬われたいがためについてきてるってことなのか……。

 心配そうにエーフィを覗き込む従者に軽く誤って、エーフィの隣にしゃがみ込む。


「あのさ、それはもうしょうがないものだと思えよ。お前がちゃんとしてればみんなきちんと敬ってくれるから」


「ほんとに?」


「ほんとほんと。俺だってお前がちゃんとした行動してればきちんと敬うって」


「……今は敬ってないのね」


 当たり前だろ。

 なんでこんな面倒でバカで勝手に人の名前を決めるような奴を敬わなくちゃいけないんだ。

 ……なんて今言っても逆効果なのは目に見えてる。


「お前は勇者を導く天使なんだろ?ちゃんとしてくれよ」


「……そうね。私がちゃんとしなきゃ根暗でボッチなあんたはそこら辺のスライムに謝りながら殺されて終わりだものね」


 さすがにそれは無いんじゃねえの!?

 ……と、ツッコミを入れたいが我慢だ。


「……そうだ。頼むよ」


「そうね!私がいないとあんただめだものね!!」


 いつの間にお前は俺の世話焼きポジションになったんだ。それはしばらく世話を焼いた人間の言うセリフだぞ。


「ほら、なにボケーっとしゃがんでるのよ!さっさと立ちなさい!行くわよ!」


 急に元気になったアホにせかされ、従者の人にお願いして案内をしてもらい、一つの大きな扉の前に立つ。


「ここに勇者様のパーティーメンバーがおりますので。その方たちと今後の事を話し合ってください」


 そう言うと従者の方は扉に手をかける。

 この先に俺たちの新しい仲間が……!

 仲間との初対面……ん?


「……そういえば、この手錠はずさないか?」


「…………鍵、あるの?」


 初対面が手錠につながれた状態ってやばくない!?

 初めましてで手錠をつけてる人が真人間な確率ってどのくらいだよ!!普通の人間は人前で手錠をかけない!

 てか王様も放置しないで鍵を渡すように言ってくれよ!!

 しかし時すでに遅し。従者は扉に手をかけ、ドアを開ける。

 とにかく気持ちの切り替えだ。

 ここで俺はいわゆる運命の出会いとか言うものをするんだろう、そんな思いを胸にドアの先の光景を見て――。

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