てんかい!6
しばらくすると女神さまはどこからともなく再び現れた。
両手にまるで呪われたアイテムのように不吉な色を発するカゴを持って。
(あの、それは?)
「ふふ、すぐにわかりますよ。
では、一番から順に試していく、と言うことでよろしいですか?」
そう言って女神様は相変わらず目が笑っていない例の笑みを浮かべたまま俺に選択を迫ってくる。
「ねえ、さっきからなんの話をしてるの?」
「お前はとりあえず黙ってろ。使えねえ」
「なにそれ!!ひどくない!?」
無視だ無視。どうせこいつに考えるなんて高度なことはできないだろう。
っていうかなんでこいつはこの女神様と会話できないんだよ。普通ならこの天使 (笑)が知ってて教えてくれるもんじゃないの!?もし俺が気づかなかったらここで詰みだったぞ……。
女神様は返事はまだか、とばかりに鏡とともに俺らのほうに少しずつ近づいてくる。
そうだった、この使えない天使のことは無視しなければ。
(まあ一番から全部試せるのならそれがいいよな。そういうのを全部チェックしてしまうのがやりこみ派の宿命……お願いします!)
「はい。では」
女神様はそういうと自身の目の前で手を一振りした。
すると頭の上に何か乗ったような、若干の重さを感じる。
鏡を見てみると……。
「「ネコ耳!?」」
なんでだよ!これがオプション!?
「ええ、そうですよ。お二方ともお似合いです」
んなあほな!?いや、さすがに何か能力はついていますよね!?これがあればすべての魔物が弱くなるとか!?
「いえ、以前パーティーグッズを売っている地上のお店で購入したものです」
「いるか!!!」
「え?」
「聞こえないように声に出してるんだよ!いるかこんな安物!!何がオプションだ!ただのおまけじゃねえか!!!チートグッズよこせ!!!」
「ちょとあんた、仮にも女神様に失礼じゃない」
仮にもとか言うお前に言われたかねえよ。
「あんたこれ持っていくの?私の趣味じゃないわね」
そう言ってエーフィは頭についたネコ耳を外そうとする。が
「ちょっと!取れないんだけど!?」
ネコ耳は頭にくっついて外れそうにない。
女神様!外してください!
「え?お二人ともお似合いですのに」
「いらね!!!ゴミ!!お前のこと女神様なんて敬ってた俺がバカみたい!」
「え?」
うるせー!!黙れ!
「は?」
しまった!心の声は聞こえるんだった!
「ねえあんたのせいで外れなくなったんだけど!どうしてくれるのよ!!!」
そういうとエーフィは地面に置いてあった何かを俺に向かって蹴ってきた。
バカめ!遅いんだよ!
俺はそれを顔面で受け取り、手に持って投げ返した。
……まあ、よけられたんだけど。
すると、その何かはエーフィの後ろにあった変な空間に入って行ってしまった。
「あまりものを投げないでください。危ないですから」
ごめんなさい。
「別に構いませんよ、ネグボッチさん。相当運の悪くない限りいまのは何も問題はないですから。いま落とされたのは軽い封印の道具ですから」
どの時間軸に落ちていったかはわかりませんが、とうふふとほほ笑む女神。
……なんか、さらっとすごいことを言われたような気がする。
「おい、天使笑、あの女神が止めてくださったから良い物を……次はないと思えよ」
「あんたそれ完全に噛ませ犬の口調なんだけど!?それにあんたは私と一緒に行くのよ!私とは敵じゃないんだからね!次もなにもないんだから!!」
次もなにもないってここでやるという意味にしかとれないのですが。
……女神様、こいつをここに置いて行ってもいいですか?
「あらあら、いけませんよ。あなたたちは二人で登録済みですから」
「……仕方ないか」
登録済みということはもうやっぱ転移やめとは言われないってことか……。
内心でにやりと笑った。これ以降はこの使えない天使に何をしようとお咎めなしってことだ。
女神が腕を振って俺らの頭に着いたネコ耳を消しながら次のオプションをつけようとした。
ちょっと女神様、オプションって全部こんな感じなんですか?
「ええ、そうですよ」
「さて、もう行くぞ!おい天使!!なにぼーっとしてんだよ!」
「あら、もう行ってしまうんですか?オプションは……?」
いりません!!!
こんなところで無駄に時間を過ごしたくない。RTA勢の宿命だな。
「ゲートはあちらですよ」
そう言って女神様が浮かんでいる光、ゲートを指差す。さっきこの場所に来た時に触ったものと同じだ。おそらくあそこをくぐったら別の世界へと飛ぶことになるんだろう。
自称天使の首根っこを捕んで引きずりながらゲートの方へと向かっていく。
なんかこいつら頭おかしいし……できるだけ向こうの世界に行ってまともな奴と仲良くなろう。というかこのアホで役にたたない天使を捨てよう……。
「あらあら、そんなことを考えてはいけませんよ。では、行ってらっしゃい。気をつけてくださいね」
『こいつら』には女神も入っていることは内緒だ。
「それでは、またいつか……チート能力もくれない年増……」
さよなら!若々しい女神様!
「そうそう、私耳はそこまで悪くないんですよね。心の声と会話した方が楽なだけで」
「嘘だろ!?今までの会話、何だったんだ!!」
「いい加減離しなさい!!」
暴れる天使にかみつかれながら、俺は半ば強引に女神にゲートに触れさせられた。
最後に見えたのはまるでゴキブリでも見るかのような目で俺たちのほうを見る女神様の姿だった。
「……許してください!!!女神様!!!!!」
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