てんかい!5

 とは言うものの、言葉以外でどうやって伝えればいいんだろう。身振り手振りか? 




「思うだけで大丈夫ですよ」




 いくら察しがよくたって思うだけじゃ伝わるものも伝わらないだろ……ん?




「あら、言ってませんでしたっけ?私、心を読むことができまして」




「先に言って!?」




「え?なんですか?」




 耳は遠いのかよ!?もう年なのか!?




「は?」




「な、なんでもないです!!」




「はい?」




「聞こえないのかよ!」




 やっぱり年が……。


 と考えかけたところで女神様の怖い笑顔に思わず思考をそらす。


 リンゴリンゴ……。




「急になんですか?リンゴ?お腹が空いたのですか?」




 違うんだけどね……。




 でもまあ、この人との会話が成立しなかったのってそう言う理由があったからなんだなぁ。そう考えるとこういうなんとも超人的な能力を持っている、こういう人のことを女神って呼ぶだろうな。あんな天使 (笑)とは違って。


 もう雰囲気が女神っぽいもん、この方。声も女神っぽい。あの跳べない自称天使とは違って飛んでるし。




「あらあら、照れてしまいます」




 そう言って女神様は少し頬を赤くしながら微笑んで見せる。おお、色っぽい……。




「いいからさっさと飛ばしなさいよ」




「はい?」




 このアホ、話聞いてなかったな!?なんで口で話してるんだよ!!




「ごめんなさい、今何か言ってました?あなた、口は動いているのはわかるのですが何も聞こえてこなくて」




 こいつ何も考えてないのか。やっぱり頭が空っぽだったか……。


 むっと口をとがらせたエーフィは俺に話をつけるように言った。


 そんなことを言われても何を聞いたらいいのかわからないんだけど……そうだ、オプションって何があるんですか?




「オプションには色々な物がありますよ。全部試してみます?」




 そんなことできるの!?すげぇ!




 女神様が手を振ると、どこからともなく鏡が現れる。


 それを見て目を輝かせながらノータリン天使も声を上げる。




「へぇ、オプション試すの?なら私もやりたい!」




 アホの声だ。やっぱり頭の中が空っぽだからよく響くんだな。




「あらあら、そのようなことを思ってはいけませんよ」




「はい!ごめんなさい!麗しの女神様のお言葉、身にしみます!」




「え?なんですか?」




「ちょっと、ネグボッチ。私は?」




 会話が通じないやつしかいねえ!?




「あら。私もですか?」




 さりげなくこの自称天使は会話が通じないものとしている女神様……。


 そうですね、女神様は違いました、このアホだけでした、と言い直すとなぜか足を踏まれた。アホはすぐ手が出る。出たのは足だったけど。


 俺は事実を言っただけなのに……。




「では、早速試着してみましょうか」




 試着……?そう言えば何で鏡なんて出したんですか?


 俺の心の声を聴いた彼女はにっこりと笑顔を見せる。今までで一番笑顔だが、今までで一番目の奥が笑っていないような……。




「自分の姿を見るため、ですよ。うふふ、すぐわかりますよ」




 女神様はうふふ、という笑い声を響かせながらどこかへ消えていった。


 なんで敵の高笑いみたいな演出を残して消えていくんだよ。


 嫌な予感しかしない……。

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