tii Ⅱ
「はぁ?チイの身体を作るだァ?」
「うん。そうしたらチイの目的は叶うんじゃないかなって」
僕は思いついた事をヒギリに話した。
「はぁ……んなので本当にあいつが喜ぶと思うか?本当の自分じゃない自分で弟に会いに行って否定されたら……どうなるか分かってんのか?」
ヒギリは呆れたようにそう言い放った。
僕は何も言えずに無言で立ち尽くしていた。
否定されたら……壊れるだろうな。気丈に振る舞ってはいるが彼は8歳だ。いや、既に何歳なのかは分からないが。
「そうか!」
僕は思いついた。機械で体を作るのが駄目ならば、幻影として投影すればいいのではと。
投影機を使い、彼を彼の弟の前に連れて行くことができたら。そうすれば、彼の目的は果たすことが出来る。
「んで?手紙を偽装しろと?」
「そう。彼が亡くなった年くらいに古くさせることが出来たらな……って」
ヒギリにそう説明する。これはOKを貰えた。
チイの故郷
青い花が咲く丘に少年が立ち尽くしていた。
「兄さんが亡くなってからもう何年も経つのに……まだ約束に囚われるなんてな」
そうぽつりと呟く少年の元にひらりと手紙が落ちてきた。
「兄さんから?……何年も前の紙みたいだな」
ペラリと手紙を開ける。すると
『……』
「兄さん?」
無言で立つ、少年が……彼の兄の姿があった。
『約束、果たせなくてごめんな』
そう一言だけ言うと、消えてしまった。彼が消える瞬間、咲き乱れていた花の花弁が宙を舞っていた。少年は、それを見て、泣き崩れてしまった。
その光景を後ろでヒギリとアイリスは見ていた。チイがきちんと在るべき場所へ戻れたということを確認し、ふと寂しいような嬉しいような表情をしながら。
Flos et turrim 夜霧 @sakaki_shion
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。Flos et turrimの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます