higiri
脅えているような青年を見てネリネは
「ヒギリ!お客さんにそんなこと言っちゃダメだってお兄ちゃんが言ってたよ!……あれ?お兄ちゃんって誰だっけ」
そう言っていた。様子からするに彼女は霊魂なのだろう。名前を忘れた。ほんの少し。僅かに残った記憶を頼りにしているのだろう。
「あ……嗚呼、ごめんなネリネ。」
ヒギリと呼ばれた青年は素直に少女に謝った。
「あの……」
そう声をかけると、
「お前は、この塔に何か用なのか?俺はヒギリだ。この塔の管理者をやっている。」
この塔の管理者……?
「あの!××××ってやつ知りませんか?」
そう聞くと少し頭を捻り
「……聞いた事ないな。とりあえず上がれ。お前の目的はそれから聞く」
そう言い、僕を塔の中へ入れてくれた。
「………………ということなんです」
応接間に通された僕はヒギリに軽く事情を説明した。
「成程な……確かにこの塔には沢山の霊魂がいる。その××××ってやつも居るかもしれない。見つかって其奴の未練を消すことが出来たら、其奴は輪廻に入れるって訳だ。」
そう言うと彼は
「お前、名前は?」
そう聞いてきた。ただ、僕にはもう名乗る名など無いのだ。本来ならば“僕”という存在は既に死んでいてもおかしくないからだ。人体改造という禁忌を犯し生きながらえている。
「名乗る名は……無い」
そう言うと彼は
「じゃあお前は“アイリス”だ」
そう言った。この時、僕の魂は、僕の名前をアイリスと認識した。
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