nerine

華の塔のある街に着いた時、感じたのは空気の淀みだった。こんなに空気が重いことってあるのか……そう思ってしまうほどにそこの空気は重たかった。

「華の塔って何処にあるのか知っていませんか?」

こう街の人に聞いて回った。しかし、誰一人として答えてくれなかった。そんな中

「あんた……態々あんな所に行くのかい?」

そう聞いてきた老人がいた。

「はい。僕の親友を探す為に」

「そうかい。華の塔はこの街の端にある。覚悟があるならば行けばいい。」

「ありがとうございました。」

場所を教えてくれた老人は少し悲しそうな眼をしていた。

塔に着いて入口をノックしようとした時

「あっお客さんだ!めっずらしー!」

そんな間の抜けたような明るい声が頭上から聞こえた。

「よっと!ねぇねぇ!なんでこんなとこに来たの?街の人達は此処を禁忌だーなんだーって言って近づかないのに」

目の前に降り立った少女は薄桃色の髪に白いヴェールを被り、胸元に姫彼岸花のブローチを刺していた。

「わたしはネリネ!此処に住んでるの!」

そう自己紹介した少女はにぱっと笑った。

「そうなんだね。ネリネは此処の管理者なのかい?」

そう僕が問うとキョトンとした顔で

「お客さん、管理者?に用事?」

そう聞いてきた。

「嗚呼、実は「そこで何をしている」え……」

声が被さり、前を向くと、そこには同年代であろう青年がいた。

「お前……霊魂じゃないよな…なんだ?此処に何の用だ」

そう目の前で威嚇している青年は何かに脅えているように見えた。


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