前兆
季節は進み、3月となった。授業も大概終わり、期末試験が待つのみだった。
「えーん、まゆちゃ~ん、数学わかんないよ~」
「どれ、どこがわからないの、見せてごらん」
どの教科も万遍無く力のあったまゆは最近放課後毎日翔子の家庭教師をやっていた。
「この問題はさ、二次関数のグラフと一次関数のグラフの接点を見つける訳でしょ?つまり二つの式の共通解を見つけるんだよ。だからこの2式を=で結んで解けばいいの」
「あー、なるほどね~。さっすがまゆちゃんだ!」
「あとは自分で出来る?」
「うん、やってみる!ありがとう!」
前の学校では恒例の光景だったのだがこの町に来てからは初めての勉強会だった。翔子も一人でいるのが好きという理由で勉強会などやったことがないという。翔子は数学が大の苦手で進級が危ういなど大袈裟に落ち込むのでまゆが誘ってみたところ、OKが貰えたのだ。まゆがいながらも基本一人が好きな翔子から許可が下りるとは思わなかったのでまゆは喜んだ。翔子がいなかったら今頃一人寂しく勉強してたんだろうな、と思うと自然に笑みがこぼれていた。
「ん、まゆちゃん、どうしたの?」
「んーん、翔子ちゃんが友達でいてくれて嬉しいなーって思ってただけー」
「急にどうしたの、恥ずかしくて集中出来ないよ!」
そんな感じで楽しく勉強会をしたお陰で期末試験の結果はまゆはもちろん、翔子も自己最高得点だったらしい。
「やったよ、まゆちゃん!まゆちゃんのお陰!」
「そんなことないよ、翔子ちゃんが頑張ったからだよ」
期末試験が終わるとすぐに春休み、そしてクラス替えだ。
「ねえ翔子ちゃん、来年も同じクラスがいいね?」
「そうだね、でも離れても遊びに行くからね!」
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