第11話 父の実家のお話2
父の実家は代々続く神官の家系で、それなりの由緒と家柄がある一族です。
過去には一人勇者も輩出しています。
とはいえ別に神官の名を借りて悪どいことをやっているという事はありませんし、至って実直な家系です。
蓄財に励んでいるわけではありませんが、浪費しているわけではないこと、代々の受け継いできた領地も僅かながらあるため、一般的な階級区分ではローテンブルクの中級貴族になります。
これは普通に暮らしていく分には特に問題ないというレベルですね。
領地内で運営している教会や、孤児院の運営費を差し引いても領地で生産された各種商品の販売益や王国から支払われる俸給などでそれなりに生活していけます。
とはいえ一族の全員が何らかの仕事には着いており、財産を浪費するような者も居ないため健全に繁栄していると言っていいかなと思います。
加えてローテンブルク王国から父に下賜された莫大な褒賞もあります。
そりゃあローテンブルク王家にとっては想定外でしょうけど、父はローテンブルク王家と交わした魔王討伐の契約について一切反故にしていないのですから当然ですよね。
父がローテンブルクと結んだ契約は
「魔王城へ行き、魔王を封印し、この戦争をローテンブルグ優位に終わらせる。
手段に関しては父に一任する。成功の暁にはローテンブルク王家として地位の保障と領地、報奨金を下賜する」
となっていたのですから。
別に父がこっそり魔王城に忍び込もうが、堂々と正面から乗り込もうが手段はご自由に。
魔王の封印に成功さえすればそれでよしという契約なので。
魔王を妻にするなとは書かれていませんし、交渉の結果の封印でも、封印に成功している以上文句は言えません。
封印期間に関しては術者の能力と魔王の力に左右されるのは過去の事例からも明らかなので、期間に関しては制限はありませんし、文句を言われる筋合いは無いというところです。
でもって父は契約を果たし、予定通りローテンブルク優位で戦争が終結し国民にも勇者の活躍と勝利を喧伝した以上褒賞を支払わないという選択肢はありませんでした。
まぁこの時点ではローテンブルク側は魔王との間にどんなやり取りがあったのかを把握していなかったので、当然といえば当然ではあるのですが。
ちなみにこの契約、所謂契約魔法によって行われています。
それでローテンブルクは父の動向を監視することもできていた訳なんですが、一旦結ばれた契約は双方同意の元でしか破棄できませんし、一方が契約条項を満たした後に他方が一方的に破棄するようなことを行なった場合、非常に強力な罰則と対外的な信用失墜を招くことになります。
まぁ教会やギルド、各商会が取引を削減、一時停止するくらいのダメージは王室と言えど受けることになります。
加えて、他国からも非常に厳しい視線を向けられることになります。
そりゃそうですよね。国同士で条約を結んでも一方的に裏切られる可能性が高いと思われれば外交的な不利は否めないのですから。
なんにせよ父の一族はそれなりに安定して繁栄している一族でした。
そこにいきなり妻が魔王で娘がいるという爆弾を落としたのですからそりゃあ一族は大騒ぎになりました。
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