第3話 いろんな意味で普通はやりません
当然そんな状態で挑んでも魔王は封印できません。
普通はそこで引き返すべきなのでしょうが、律儀な父は魔王に挑みました。
そしてその結果お察しの通り、魔王に攻撃は入らず、封印は出来ない。
一方で魔王の攻撃は基礎防御と防御魔法でほぼ無力化できるため自分も倒れない。
父の持っていた聖剣は周囲の魔力を吸収変換して父の魔法値を回復させる機能があったので魔力の充満している魔王城内で魔法値不足も起きず、防御魔法が使えなくなることもないという両者千日手に陥ったのです。
もちろん魔力を司る魔王が魔力切れになるという事はありません。
あくまでも恣意的に火山噴火とかの大規模災害レベルの事が困難なだけで、単独での魔法攻撃であれば普通の人では及ばないレベルの魔法は普通に使えますし、魔力吸収なども普通にできます。
こちらも魔力不足はあり得ず、ただこちらの攻撃はすべて防がれる状態なので、打つ手なしとなってしまいました。
ここで、魔王は休戦を申し入れます。どっちも打つ手がないうえに、戦いは午前中から始まって現在すでに日は暮れています。その間お互いどっちも通らない攻撃をしていたわけで、肉体的にはともかくメンタル的には両者ともにげっそりという状態です。
で、魔王は部屋を用意するからしばらく逗留してもらって仕切りなおそうと提案します。
普通この誘いに乗る勇者はいません。
休んでいるときに襲われたらさすがにひとたまりもないからです。
というか魔王城でのんびりできるほどの人間普通いません。
が、勇者はそれを快諾します。
このことを初めて聞いた時、私は寝転がっていたベッドから転げ落ちました。
あの時だけは父がただの考えなしだったんじゃないかと本気で思いました。なのでそれを質すべく次に父に会った時に父になんで快諾したんだと聞きました。
そうしたら
「いや、部屋も用意するし、おいしいものも出すし、のんびりしてって言われたから」
という返事が返ってきました。うん。やっぱり考えなしだったんだな、父上。
で、そこからほんとに寛いで逗留を始めた父でしたが、三日目の夜に事件が起きました。
えっと、夜這いをかけたんです。
魔王が勇者に。
何を言っているかはわからないかもしれませんが、現在の魔王、つまり私の母は魔族の女性です。先代魔王からの魔王位の継承が異常に早く、魔王としては最年少である26で魔王位を継ぎ、勇者が来た時には28でした。
当時は魔族基準だとまだ伴侶を急ぐというものではなく、恋人も伴侶もいない状態だったのです。
で母曰く「父に一目ぼれした」と。
まぁ魔族基準で見ても父はよい顔立ちだとは思いますし、人柄もいい人ではありますが、それにしたって勇者相手にそれやるかよと、下手しなくても普通に封印されかねないのに何考えてるんだこの人はと父の時と同様にやっぱり私は頭を抱えました。
で夜這いをかけた魔王は勇者に言います。
「後で封印されても、妾でもいいからそばにおいてくれ」と。
普通勇者は勇者を送り出す国の王女と婚約しており、魔王を討伐して国へ帰れば王女と結ばれるのが一般的でした。
なのでそのことを念頭に置いて妾でもいいといったのですが、律儀な勇者はこう返しました。
「では、私の妻になってください。」
この回答に逆にぽかんとしたのは魔王です。あれ、婚約者の王女はいいのか。逆にそんな簡単に捨てられるのかと。
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