第3話 異能
修羅場にはならなかった。
まあオレと菜奈はそんな関係ではない。……藤林もだけど。
藤林に用意した男物の着替えは菜奈的に却下ということで、藤林を菜奈に任せてオレはリビングで待つことにした。
「お待たせ!」
菜奈とつれだってきた藤林の胸が、はち切れんばかりだ。
同じ女子でも菜奈と藤林ではランクが違う……悲しい現実だ。
「おい、今なんでボクを哀れむような目で見た」
「あ……ああ、悪い、つい……」
「ついってなんだよ! ついって!」
「いや……2人が並んでたらさ……言わなくてもわかるだろ?」
「なんだよ! いつもボクのおっぱいは手のひらサイズでちょうどいいとか言いながら、触りまくってるくせに!」
否定はしない。そこに山があれば登りたくなるものだ。だが……より大きな山が目の前にあると、そちらに登りたくなるのが自然な流れなのだ。
「なんだよ、触ってほしいのか?」
「ちげーよ!」
なんて馬鹿な話しをしていると藤林の分かりやすい咳払いが聞こえてきた。
「悪い、藤林」
「ず……随分乱れた生活を送っているようね……」
「冗談だよ冗談、オレはちっぱいには興味ないし」
「ちっぱい言うな! もう触らせないぞ!」
それは困る……後でこの件を菜奈の記憶から『無かったこと』にしておこう。
「それはそれとして浅井くん……なんか色々迷惑をかけちゃってゴメンなさい」
それはそれとしとくんだ。
「いや……こっちこそ、なんかありがとう」
「ありがとうって何よ!」
しまった……つい本音が……でも、やっぱ藤林可愛いな。
「忘れないうちに渡しておくね」
「あ、ああ」
そうだそうだ、藤林はプリントを渡しに来ただけで風呂に入りに来たのでは無かった。
「じゃぁ、私はこれで……」
「送って行こうか?」
「大丈夫、すぐそこだから」
すぐそこなのに、オレん
そしてオレは藤林を見送った後で、思い出した。
飯……買いに行くんだった。
オレがうなだれていると菜奈が……。
「
「ああ」
「あの子……能力者だったよ」
そうか……だから、オレの『無かったことにする』が打ち消されたのか。だが、藤林が異能で『無かったことにする』を打ち消したようなそぶりはなかった……どう言うことだ。
「何よ、黙りこくっちゃって……何か心当たりでもあるの?」
「まあな」
「きゃっ!」
とりあえず、このままだと欲求不満になりそうだから菜奈のおっぱいを触っておいた。
「何すんだよ! いきなり!」
「ちょっと大きくなってたみたいだから、確認しておいた」
「えっ! マジ! マジなの!」
もちろん嘘だ。
——この世には異能が存在する。
なんて馬鹿な話しと思うかもしれないが事実だ。
オレも10年前の襲撃事件まで、異能の存在なんて信じていなかった。
オレは10年前の襲撃事件で全てを失った。
そんなオレに残ったのがこの異能『無かったことにする』だ。
実はオレ、
菜奈は襲撃事件の襲撃者の1人。
異能により洗脳状態であったこと、命乞いをしてきたこと、絶対服従を誓ったことで、オレと同じ十字架を背負わせ、そばに置いている。
ちなみに菜奈の異能は、能力者を見分ける異能。
だから藤林が、能力者と分かったのだ。
オレは異能を与えることができる、能力者を探している。
それが10年前の襲撃事件の首謀者だからだ。
まあ、平たく言えば復讐のためだ。
だが、奴はなかなか表に姿を現さない。
だからオレは若返ってまで、学校に通っているのだ。
オレの通う
教師なのか、俺みたいに異能で学生に紛れ込んでいるのかは分からないが、奴は必ずこの学園にいる。
オレはそう睨んでいる。
オレはオレから全てを奪ったヤツを許さない。
「きゃ————っ!」
菜奈! 浴室からだ。
もしかして藤林の異能絡みか?
オレは急いで浴室に向かった。
そこで見たものは、信じがたい光景だった。
————————
【あとがき】
菜奈に身にいったい何が?!
本作が気になる。応援してやってもいいぞって方は、
★で称えていただけたりフォローや応援コメントを残していただけると非常に嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます