第2話
「ア。」
膣内に再度男のそれが入って来たとき、私は甘い声を上げる。気持ち良さとわずかに感じる痛みとで生理的な涙がでる。猿みたいにせっせと喰らいつく男に笑いが込み上げて来る。
(私もこんな風に見えんのかな。)
声を多少わざとらしくあげる。すると腰を振る動作がわずかに早くなる。あ。こいつイくな。そう思った瞬間ゴム越しに液体が飛び出て来るのを感じた。早すぎるだろ。一回目も二回目もサッサとイキやがって早漏野郎。心で悪態をつく。
私はまだまだ物足りないけど、なんだか一気につまらなくなる。なんでこんなことやってんだろ。ヤってる時の興奮が冷めて冷静になる。
「え。もう帰んの?」
「うん、この後用事あるから。」
興味をなくすともうどうでもよくなる。帰りたい。
麻薬と一緒でこういう興奮はあっという間に覚めてしまう。覚めた後は地獄だ。後悔、絶望感、気分が暗くなって、未来はない気がしてくる。
胸も下半身も隠さずベッドから降りて、ペタペタとお風呂場へ向かう。
アタシなんで生きてんの?楽しいことより嫌なことの方が多いし。理解できない人間、気の合わない人間の方が多い。
キュとピンクのスイッチを捻ると、シャワーは止めどなく暖かい水を送り出し、私の頭皮から足元までを満遍なく濡らしてゆく。
人は見た目で判断するし、こっちの話なんて聞きやしない。
私は颯爽とシャワーを浴びると適当に服を着て男の家を出た。
彼に会いたくなる。私の初めての彼氏。助けて。そう言いたくなる。でも私が23年間で学んだ事は、助けてと叫んだ所で誰も助けには来ないし、結局は自分でなんとかする他はないという事だった。
16階建てのマンションの10階に彼の部屋はあって、でも目の前にはなんかの壁があった、そのせいで窓から見る景色はいつだって最悪だ。
なのに彼の部屋を訪れる時、気分はいつだって晴れやかだった。きっと彼の部屋には魔法がかかっていたのだと思う。
社会人になって、生活を自分1人で切り盛りするようになって、孤独により慣れ親しんでいく。
私はいつか、全く本当の意味で孤独になってしまうのではないだろうか。
ポケットに入れていたカカオ70%(カロリーを気にしていつもこういうチョコレートを私は選んだ。)のチョコレートを一度に2個口内へ放り込む。
とたん甘味が広がり。大丈夫だ。という根拠のない自信に満ちていく。
チョコレートとsexは似ている、と思う。2つは麻薬だ。足りないとまるで砂漠の真ん中にいるみたいに枯渇してくる。
私は目を閉じて、口内に広がり、そして消えていく甘みを惜しみながら味わった。
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