脳内麻薬
鮭B
第1話
sexとチョコレートって似てる。高揚感とか罪悪感、あとすぐまた食べたくなる所とか。
チョコレートを舌にのせ、溶け出す。甘味がじわじわと広がっていく。するとアタシは幸せな気持ちがぶわーってなって、セロトニンとドーパミンが溢れ出す。
あ、逆か。セロトニンとドーパミンが分泌されて、幸せな気持ちになるのか。…まあどっちでもいいや。
つまりハッピーな人生に乾杯!そういう気分になる。
sexも一緒。快感。もう大抵のことは許せるちゃう。ヘタな奴だと最悪、そういう時はさっさと帰って寝るのがいい。
脳みそが勝手に判断して、幸せホルモンを分泌して、アタシ脳みそに振り回されてんのよ。
でもそれってもう脳みそで考えて動いてんのか、脳みそに考えさせられて動いてんのか。わかんないよね。
なんていうんだろ、そう、麻薬。麻薬みたいだよね。脳内麻薬。
一息でそこまで言って、初めて相手を見ると明らかに戸惑っていた。
(まあそりゃそうか。)
別に今日はヤる気分じゃなかったし、喋りたかっただけだからいいけど。そんな戸惑われると萎える。私は度々出会い系を使ってヤったり喋ったりした。別に意味なんてない。食事するように私はそうした。
「あたし、用事思い出したから帰るね。」
薄ピンクのショルダーバックを手にとって、ジンジャーエールの代金を置いてカフェを出る。チリンとドアの鈴が鳴る。
昔から脳内麻薬についてよく考えた。それは中毒性がある。あのチョコレートをもう一つ食べたくなる感じ。一度分泌されたドーパミンを脳みそはすぐ欲しがる。それって幸せになりたいから?でも多く分泌される状況に慣れるとそれが感じられなくなる。厄介だ。もっと、もっと、もっと、と脳みそは欲しがる。
コツコツとなるヒールが好きだ。さらさらとなびく髪も好きで、ロングにしている。でももっと好きなのはチョコレートとsex。セロトニンとドーパミン。
欲しい。快楽が欲しい。幸せが欲しい。高揚感。楽しい気分。
中学の時、腕を切ったことがある。リストカット。でも思いの外溢れ出て来た真っ赤な血に驚いて私は一生懸命止血した。しばらく痛かったし。周りにバレると面倒だし。それに変わって、私はsexをして、チョコレートを食べることをした。
外から来る感覚で生きてる。私はショーウィンドウのワンピースを見て。その薄い水色に心を写した。初めてできた彼氏は23歳で、私は当時18だった。彼は私にほとんど手を出さず、sexもしなかった。電話もデートも私から連絡するばかりだった。それでも好きで、3年付き合った。別れた理由はまるで壁を叩いているような気持ちになる恋愛に私が疲れたことで、彼は少し悲しい目をしただけで別れを受け入れた。
(このワンピースは似合わないだろうな。)
スカイブルーのワンピースは私が着るには幼すぎる。人々はショーウィンドウに目を向けることもなく道を急ぎ、道は足音、話し声で満ちている。私は閉塞感をわずかに感じた。
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