第37話 新たなる凶刃

 ソレは静かに立ちあがった。




 シンと静まりかえった夜の森に、銀色の月光がわずかに差し込む。ほのかに照らされたその人型のシルエットは、人と呼ぶには少しばかり巨大であった。




 遠目からでもわかる大きく隆起した筋肉。肉食の獣を思わせる鋭い牙と、額からニュッと飛び出た一本の角。






”鬼”






 血にまみれたその姿は、見るモノを異様な迫力で威圧する。




 しかし何かがおかしい。柔らかな月光に照らされている筈のその顔は、何故か黒いモヤのようなものがかかっていて、その造形がハッキリとは認識できなかった。




 右手に握られていたのは、闇色に染まる一振りの剣・・・・・・。




 奇妙な剣だ。ツバにあたる部分が無く、その持ち手から切っ先までが均一の太さに保たれている。




 吸い込まれるような漆黒の刃が、闇夜に紛れてその存在を朧にしていた。






 夜の闇よりも深く




 漆黒よりもさらに濃い




 見るモノの魂を引きずりこむような真の黒




 ああ、その刃の名は・・・・・・。














”光ヲ喰ラウモノ”












「・・・・・・ああ、今日は月が綺麗だ」




 鬼はその鋭い眼を細め、寂しげに微笑みながら月を見上げる。












 力は






 呪いは












 こうして受け継がれるのだ。



















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