人慣れ
似たような授業が毎日続き休日になった。
この前はアミリアさんとの予定があったけど、今日は特に何もない。
そして、自覚した。
……休みの日にやることがない。
そもそも、無理やり女にされて半ば強引に入れられて生活そのものが変わったのだから、暇を持て余した時に何をすればいいかもわからなくて当然だ。前にも考えたような気がする。
入学する前はそれこそ勉強を詰め込まれていたけど、今は勉強で一日を潰してしまうのもどうだろうと思ってしまう。
「うーん……」
そう思いながらとりあえず食堂へ向かう。
休日は食事の時間以外も談話室的な形で人が多い。
誰かいないかと思ったけど、よく考えたらそこまでまだ友人関係もできてなかった。
「ノア」
「ひゃいっ!?」
なんとなくぼやっとしていると後ろから声をかけられて思わず変な声をだして振り向く。
そこにはイオさんがたっていた。
そして失礼ながら、服をちゃんと着ているイオさんをまともに見たのは初めてな気がした。
「どうしたの?」
「え、えっと、なにが?」
「ぼーっとしてたから」
「あぁ……やることがなくて」
「それなら、でかけるけど一緒にどう……?」
「ほえっ?」
なんか変な声が出るのが癖になってきている気がする、なおさないと。
ただ、イオさんは相変わらず表情からは意図が読めない。
「嫌なら大丈夫」
「い、嫌じゃないけど。えっと、ボクと一緒でいいの? なにか用があるとかじゃ」
「特に無い。散歩と寮の周りの地形を覚えたい」
「そ、そっか。なら……一緒に行こうかな」
一応、外にもでれる服は着ている。
この前のアミリアさんと選んだものは届いてないからまだだけど……あれはアミリアさんと出かける時にしか着れそうにないしね。
* * *
少し緊張はしたけど、本当に領の周辺やこの街を歩いてまわる感じの時間を過ごすことになった。
今までは余裕がなくて知らなかったお店の配置とかも知ることができて良かったんだけど。
……なんで誘ったんだろう?
たしかにお風呂であんな風に話はするけど……。
「どうしたの?」
「え、あ、いや、その……イオさんにとってボクってなんなのかな~……なんて」
考えてたら、バレたのか聞かれてしまい咄嗟にそう答えたけど、この質問はひどい。
ボクは何を聞いているんだ。
「…………」
「ご、ごめん。変なこときいたね! いや、そこまで深いこと考えてたわけじゃないんだけどね! ちょっと気になって。なんで誘ってくれたのかなとか」
「綺麗で好意をもっていて仲良くなりたかったから……ではだめ?」
「へ?」
「前から言っているけどあなたに私は興味を持っている」
「う、うん」
「だから誘った」
「そ、そっか」
なんか今ものすごいことを言われような。
いや、でも好意っていい方は友人にも言えるしおかしいことじゃないはず。
「でも、今日一緒に過ごしてわかった」
「えっと、何がかな?」
普通に世間話とかしかしてなかった気がするんだけど。
「あなたは女子だけど、女子慣れしてない。というより人慣れしていない」
「…………」
やばい。否定できない。
女になる前から人と絡んではきたけど、それは普通のものじゃなくて。真正面からぶつかることに対してはたしかに慣れてるとはいい難い。
そして、女子に関しては慣れてないことはなくても、将来を考えてのストッパーをかけてる。
つまり、慣れてないようにみられてもおかしくない。
「だから、ゆっくり距離をつめることにする」
「ボクがいうのもなんだけど本人に聞こえるところで言っていいの?」
「覚悟して」
「……よ、よくわからないけど、うん」
ボクはこの日何かを覚悟しなければいけなくなってしまった。
でも、それが何かは正直ピンとこなかった。
ガールズ・アビリティ〜複雑だけど女のボクはすごいらしい〜 Yuyu*/柚ゆっき @yowabi_iroha
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