太陽

「いきますわよー!!」

「いや、最初から飛ばしす――あっぶない!?」


 壁を蹴って空中に跳んだアミリアさんの手から振り下ろされる木剣を躱す。


「さすがですわね」

「いや、流石でもないと思うけど……」


 始まってから今までずっと調子でボクが回避し続けてる状態だ。

 というのも条件付きの模擬戦授業が始まってからずっとこの調子といったほうが正しい。

 条件は至って簡単で『魔力や魔法』の使用を禁止して、身体能力や立ち回りで模擬戦をすること。

 そして支給された木製武器で体の各所に取り付けた魔石をすべて壊した方の勝利。今回の敵はチームメイト。

 そうなってくると魔法特化とはいわなくとも、身体能力ではボクやアミリアさんに劣っているオリエさんは早い段階で脱落して見学に回ってる。

 正直、戦った時は早めに出たいという感じで力が抜けていた気もするけど、それは今は置いておこう。

 そして現在この状況に至るのには理由がある。

 それは経験の差だ。

 入学当初の時点までに何をしてきたかということを考えていくと、アミリアさんは教育としての剣の扱いや立ち回りを覚えている。

 一方でボクは偶発的にも起きうる身長差や性別を無視して本気で殺しに来る場合もある環境で育ってきた対応力を持っていた。

 結果的に攻撃の鋭さや立ち回りなどはアミリアさんが上で、回避や距離感の掴み方などの防御が強いのはボクという状態だ。

 ボク自身も木製の槍剣を持ってるけど、アミリアさんの立ち回りが上手くて、どうしても剣の距離感に入られてしまう。


「なにか考え事ですの?」

「うわっ!?」


 現状を改めて分析して対策を練りたいところだけど、これなんだよな。


「くぅ! その目の良さは認めざるを得ませんわ!!」

「それはえっと、どうもありがとう?」

「ですが、先程の反応からしてこれはどうかしら!!」


 アミリアさんは再び空高く跳んだ。

 さすがに、これだけ短時間にと思ったけど、その狙いに気づいて思考が一瞬ゆらいだ。

 アミリアさんの剣筋を追うためにそちらを見た瞬間に、太陽のせいで視界がかなり悪くなったのだ。

 影でなんとなくみえても強い光が集中力を乱してくる。


「ぐぬっ!」


 距離を離したいけどアミリアさんがどう動くかも正直まだ全部は知らない。結果的に咄嗟に槍剣を横に持って剣をたてふりしてくることにかけた。

 結果的には予想を外して着地後の横薙ぎに対応できずに、急所の魔石を砕かれて授業は終了となった。


「入学試験とあわせてイーブン。ここからが勝負ですわね!」

「入学試験もボクが負けたんだけど」

「わたくしの考えですから」

「……そっか」


 このテンションになったらもう受け入れるようになってきてる自分がいる。

 ちなみにオリエさんからは『二人共身体能力高すぎ』と言われてしまった。

 そんなに高いのかな。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る